第65話 共同
フクオカたちが作戦室に缶詰になって4時間程が経過する。
その間に、輸送艦隊にいる陸軍歩兵部隊の作戦課との会議を挟みつつ、作戦の形が出来つつあった。
「……こんなもんでいいだろう。後はこれを艦隊指揮官に渡すだけだ」
「はぁ……。ようやく終わった……」
「陸軍の作戦も盛り込んで考えるのは骨が折れるぜ……」
「なんかいつもより疲れちゃった……」
そういってフクオカたちはダランとする。
それもそうだ。
宇宙軍の事を考えるのは簡単だが、陸軍もそこに混ざってくると調整が途端に難しくなる。そもそも考えていることがまったく異なっているのだ。
その上で、両者のすり合わせをするというのは、神経を使うというものである。
しかしその甲斐あってか、作戦を立案することが出来た。
「早速これを上にあげて、承認を貰うことにしよう」
そういってフクオカたちの上官が、タブレットで最新版の作戦書を上層部に投げる。
それからしばらくして、艦隊指揮官を含めた承認許可が下りた通知が戻ってきた。
「よし、作戦案は承認された。後は見守るだけだな」
これでフクオカたちの仕事は終わりである。
ここからは、作戦を遂行する現場の人間の出番だ。
「諸君。これより向かうのは、同胞の共和国陸軍ではない。一つの派閥となった敵である。愚かにも、我らの共和国に反旗を翻し独立を望む者どもが、オリシャスの行政区画を占拠した。これは共和国の安全を脅かすガンであり、安全保障上でも不安定とならざるを得ない状況だ。しかし、敵はごく少数である。我々が束になってかかれば、こんなもの簡単に蹴散らすことが出来るだろう。何より我々は共和国の旗の元に集う戦士だ。自由を勝ち取るために戦う兵士だ。共和国を裏切った敵を蹴散らせ。奴らに鉄槌というものを味わさせてやれ」
そう歩兵部隊の指揮官は、兵士を鼓舞する。
こうして、宇宙軍と陸軍による、惑星降下作戦が始まった。
最初の段階として、まず第219巡航艦隊が行政区画の上空に突入する。
「指揮官、オリシャス行政区画上空に到着しました」
「後続の第498輸送艦隊も配置に着きました」
「よろしい。では降下作戦を開始する。全艦舵そのまま。減速行動開始」
「減速開始」
そのまま第219巡航艦隊は、前部スラスターによって、対地速度を落とす。
これにより、現在の惑星周回軌道から外れ、降下することが出来るのだ。
旗艦に続くように、艦隊が続々と高度を下げる。
さらに、機関による重力制御によって、大気圏突入とは思えない程ゆっくりと大気圏に突入していく。
「高度、50000」
「成層圏突入します」
船体が振動を始める。
わずかな大気が空気抵抗を生み始めたからだ。
振動は、ゆっくり、ゆっくりと次第に大きくなっていく。
「高度、24000」
「大気圏航法に切り替え。重力制御解除」
「大気圏航法に切り替え、よし。重力制御解除します」
艦内では一瞬体が浮くような感覚がする。
しかしすぐに通常の重力が体にかかるだろう。
機関の出力を調整しながら、第219巡航艦隊はオリシャスの行政区画へと向かっていく。
「高度、10000」
「全艦、戦闘準備。第一種戦闘配置」
艦隊指揮官が次のように号令をかける。
それにより、第219巡航艦隊は戦闘配置につく。
主砲は地上に向けられ、稼働出来るミサイルサイロは準備を済ませる。
「高度、6000」
「光学観測装置にて行政区画を捉えました」
「すぐに解析に回せ」
「了解」
艦艇に標準搭載されている超万能量子コンピュータによって、地上の様子を解析される。
ものの十数秒で結果が表示された。
「解析結果出ました。行政区画を占拠していると思われる陸軍部隊は、予想通り自動化歩兵部隊です。規模は2個大隊。中央庁舎を取り囲むようにいます」
「対空レーザーは存在しているか?」
「確認出来るだけで、4基存在しています」
その時だった。
警報音が鳴り響く。
「っ!火器レーダーの照射を確認!」
「逆探知開始!おそらく目標のレーダーだ」
すぐさま逆探知が行われ、その大本を発見する。
「出ました!」
「ビーム砲、超精密射撃用意!」
「超精密射撃準備!」
ビーム砲射撃盤は、艦の速度、大気の状態、気温、重力などを観測し、超万能量子コンピュータで射撃角を弾き出す。
逆探知からここまで、10秒足らずである。
「射撃準備よし!」
「射撃開始!」
旗艦からビームが射撃される。
その瞬間、ほぼ同時に対空レーザーからも射撃される。
互いのビームが交差する。
互いのビームは衝突するように見えるが、ビーム砲は光の一種であるから衝突しても何も影響はない。
互いに着弾するだけである。
それにより、陸軍の対空レーザーと第219巡航艦隊の旗艦双方に攻撃が命中した。
「被弾しました!」
「被害は!?」
「艦下部の装甲板に歪みが発生した模様!航行に支障なし」
「対空レーザーの方はどうなった?」
「……4基とも破壊した模様です!」
その報告されると、艦橋では安堵の空気が流れる。
「一番の懸念要素は消えたか……」
しかし、安心するのもまだ早い。
「問題はここからだな。目標には我々が来ていることを察知された。ここからは時間との勝負だ」
そういって、艦隊指揮官は襟元を正した。
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