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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第63話 別件

 さらに1週間ほど経過して、ディディラの治安が改善の兆しを見せてきた。

 それをもって、行政長たる大統領をディディラの行政区画へと帰還させることが決定する。


「ようやく戻ることが出来るのか」

「今や行政区画の主導権は警察当局が把握しているも同然です。安全の確保されたことは保障しましょう」

「ありがたい限りだ。我々が正しい事もじきに証明されることだろう」


 そういって行政長たる大統領は、ディディラへと戻っていくのであった。


「さて、我々がディディラでやるべきことは終わった。しかし、共和国各地でクーデターが発生している。我々はこれから、そんなクーデターの発生している惑星へと向かい、クーデター軍と対峙する」


 そういって、第219巡航艦隊は命令の下った惑星へと向かう。


「全艦、ワープ準備出来ました」

「よろしい。ワープ開始!」


 第219巡航艦隊は次の惑星に向かってワープを開始した。

 今度の目的地は、第13艦隊の管轄から少し離れた場所に位置する、惑星オリシャスへと向かう。

 惑星オリシャスは海洋惑星で、陸地という陸地がほとんど存在しない。そのため、海上都市を建造し、それによって発達してきた惑星なのだ。

 この惑星にも当然行政区画は存在し、とある巨大海上フロートに集約している。

 そのフロートに、陸軍がやってきたのだ。

 当然、警察の手には負えない連中がやってくるものだから、警察は簡単に敗北してしまうだろう。

 こうして、今まで以上に面倒な状態になっているのだ。


「さて、どうしたものか……」


 艦隊指揮官は頭を悩ませる。

 陸軍親衛隊と第25親衛艦隊はディディラでの任務を終えると、そのまま帰ってしまった。

 そのため今ここにいるのは、第219巡航艦隊のみである。

 第323駆逐艦隊は別の任務のために、第219巡航艦隊とは別行動だ。


「相手は巨大海上フロートです。うかつに手を出せば、フロートそのものを沈めかねません」

「言われなくても分かっている。しかし、これ以上どうやって被害を出さずにクーデター軍を鎮圧するのか、皆目検討もつかん」


 艦隊指揮官はうろたえる。

 確かに、ただクーデター軍を葬り去るだけなら巨大海上フロートを破壊すればいいだろう。しかし、そこには数万もの民間人がいることも分かっている。

 数万の民間人の命を無碍にすることは出来ない。軍人ならば、誰でも分かることだろう。


「こうなってしまえば、もはや数万の民間人を人質に取られているのと同等だな……」


 指揮官は、苦笑気味に言う。

 しかしそれも事実である。

 となれば、取れる手段は一つしかない。


「地道にクーデター軍を倒していくしかない」


 それに幸いなことに、第219巡航艦隊には伝説のパイロット、ドレイクがいる。


「これなら問題はないな。早速彼に出撃命令を下してくれ」


 そういって、ドレイクの元に命令が行く。


「それで、自分を出撃させるということは、何か秘策でも考えているですか?」

「まぁ、秘策というか、これは大尉の技量に任せるというものなんだがな……」

「と、言いますと?」

「クーデター軍の兵士を、攻撃機を使って一人残らず殲滅してほしい」


 その言葉に、ドレイクは理解することをやめた。


「……つまり、どういうことですか?」

「そのままの意味だ。大尉には、自身の攻撃機を使って、クーデター軍を殲滅してほしいのだ」

「……それは一般的に、不可能というものでは?」

「かもしれないな。しかし、大尉は不可能を可能にする男だろう?そこを何とか出来ないかね?」

「そんなこと言われたの初めてですが……。まぁ、善処はします」


 そういって、ドレイクは格納庫へと向かった。

 自分の相棒である、CO-707型機。そのコックピットに乗り込んだ。

 その時である。

 目の前の視界が、急に歪んで見えたのだ。


「な、んだこれ……」


 そしてドレイクは、そのままコックピットの中で気絶してしまったのだ。

 それに気が付いた整備士が、衛生兵を呼ぶ。

 そしてドレイクは、そのまま医務室へと運ばれてしまう。

 その情報は、艦隊指揮官の耳にも届く。


「ドレイク大尉が倒れただと!?」

「はい。原因は不明。医師によると、高い血圧に心拍数の上昇が見られることから、極度の緊張状態、あるいはそれに類する状態であることは間違いないでしょう」

「こんな時に……!」


 艦隊指揮官は、興奮のあまり机を叩く。

 大事な時に限って、最大の戦力が失われた。

 それは、艦隊指揮官を絶望させるには十分すぎる要因だ。


「指揮官、いかがしましょう?」

「大尉が使えなくなることは想定外だ。何か他の案を探さねばならないだろう」


 しかしどう考えても、ドレイクに肩代わりが出来るような存在はない。

 ならば、再び陸軍親衛隊に来てもらうか。

 だが、陸軍親衛隊もそんなに暇ではない。今は別の惑星でクーデターの対処をしていることだろう。

 そうなると、第219巡航艦隊で何とかする他ない。


「手詰まり、か……」


 指揮官が白旗を上げようとしていた。

 その時である。

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