第62話 拡散
ディディラでのクーデターが発生して早1ヶ月が経過した。
ディディラでは、政治的空白が発生し、混乱が生じる事となる。
平穏を取り繕うとする者や、この混乱に乗じて犯罪を犯す者、行政長たる大統領がいない事をいいことに事実上の行政執行者になろうとする政治家など、枚挙にいとまがない。
ディディラの行政とすれば、一刻も早く大統領に戻ってきてほしい所であるが、現地の治安が悪くなる一方であるため、現在のところ帰還は先送り状態になっている。
「私はこれからどうなるんだ……?」
行政長たる大統領は、今後の自身の進退を気にしていた。
政治家の考えることはそういう事ばかりであるが、それが性というものだろう。
しかし宇宙軍としても、いつまでも政治家を預かっているわけにも行かない。
そのため、早期にディディラへと帰すように艦隊指揮部隊で決定された。
「とにかく、大統領一行には一刻も早く議会へと帰せるように、ディディラに対して働きかけをしていこう」
「しかし、具体的にどうするんです?現在、警察当局が治安の回復に全力を挙げているそうですが、回復にはまだしばらく時間がかかりそうです」
「そりゃもう、あれだ。無理やり議会に降ろせばいいだろ」
「指揮官、それは愚策です」
そんな事を言っていると、総司令部から電報が入る。
「指揮官、緊急の電報です!」
「なんだね?」
「ディディラのクーデターを聞いた、共和国各地に駐屯している陸軍が一斉にクーデターを起こしているとの事です!」
「……なんてこった」
既にSNSでは、各地で発生しているクーデターの様子が実況のように多数投稿されている。
それによれば、各地に駐屯している陸軍がそれぞれの装備を引っ張り出してきて、各々のやり方で行政区を攻撃しているようである。
ある惑星では、弾頭を抜いたミサイルを行政区画に発射させて壊滅状態にさせていたり、また別の惑星ではネットワークをハックして通信を遮断するような事を行っていたりしていた。
この情報は、マスメディアによってすぐに拡散され、共和国中に広まった。
そのニュース記事を見たドレイクは、ただ一言呟く。
「これはもはや、独立戦争だ」
そう、ここに来て反共和国感情が各所から噴出し、陸軍が堂々と行動に出ているのだ。
共和国に存在する居住中の惑星に比べれば、その数は圧倒的に少ないものの、それでも複数の惑星でクーデターが同時多発的に発生するのはそれなりのインパクトがある。
それこそ、一つの意思によって統率されているような感じだ。
その時、ドレイクは何かを感じ取る。
しかし、その考えは違うと感じ、振り払う。
「アレはありえない。そうだ、あの時確実に消したはずだ……」
そういってニュースサイトを消した。
一方共和国政府は、突然のクーデター拡大にてんてこ舞いである。各方面と連絡が取れなくなったことにより、情報が入ってこないのだ。
こうして、混乱はさらに広がっていく。
すぐさま対処しようとするものの、即応部隊が展開出来るような仕組み作りがされていない。部隊を動員するなら宇宙軍の手を借りるほかなく、さらに対人戦に特化した兵士は相対的に少なくなり、対処のしようが無くなる。
結局の所、部隊を動かすには陸軍と宇宙軍が手を組まないといけないのだ。
「それで、どうするんです?」
総司令部の幹部の一人が、会議室に集まった他の幹部らに話をする。
「事態は一刻を争う状況だ。すぐさま宇宙軍と協力して、この事態をすぐにでも止めねばならん」
「すると、宇宙軍の輸送艦を手配するということですか?」
「そうなる。しかし、事は慎重にな。あまり堂々とした恰好では、民間人も懐疑的な行動を取るだろう」
当然、市民の安全を確保しながら、と言う条件付きである。
そうなると、犠牲の上で成り立っている事も理解しないといけないだろう。
「しかし、市民の間でクーデターが発生していることは確実に広がっていることでしょう。今更隠すことに、何の意味があるでしょうか?」
実際その通りである。
SNSを始め、各種マスメディアが堂々と報道しているように、一般市民には情報が流れてしまっている。
その状態で、軍が隠密行動をする必要はない。
「それもそうかもしれないな。全部隊に、隠密行動は不要である事を通達してくれ」
これを周知した上で、総司令部は次のように各部隊に命令を下す。
「次に命令を下した部隊は、直接近くの宇宙軍に通信を取れ。宇宙軍は連絡を取った陸軍部隊をクーデターの起きた惑星に輸送する事。これは共和国の威信をかけた戦いである」
これにより、総司令部はそれぞれの陸軍部隊に連絡を取る事にした。
こうして翌日までには、各部隊がクーデターに対処出来る体制が整う。
一方で、陸軍の要請を受けて、輸送能力を持つ宇宙軍が続々と陸軍の事を輸送していく。
共和国の国体を左右する一大軍行動が行われようとしていた。
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