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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第61話 鎮圧

 超高熱放射砲によって、地上の様子はすさまじい状態に陥っていた。

 熱波が地上を襲い、焼けた台地へと変貌させる。

 ガラスは溶け、建物は焼け焦げ、陸軍兵士は体内から発生する熱によって死に絶えていた。

 そうして、駐留陸軍の無力化に成功する。

 そんな中、行政区画の中央庁舎前の広場に、輸送艦が降下してきた。

 そしてそこに、陸軍親衛隊が降り立つ。


「これより作戦行動に移る。各員、散開」


 大隊長が号令をかけ、親衛隊は散開する。

 四方に分かれた親衛隊は、早速駐留陸軍の掃討に入った。

 既に放射砲によって戦力の大半を失った駐留陸軍なぞ、親衛隊の敵ではなかった。

 すでに肉体の半分以上が硬化した状態では、まともに戦う事もできない。

 親衛隊は、そんな体の自由が効かない相手を、無表情で処理していく。


「この辺りの掃討は終わったな。次だ」


 そういって親衛隊は、周辺の安全を確保するために次々と駐留陸軍兵士を殺していく。

 それと同時に、駐留陸軍が持ってきたであろう兵器は、かたっぱしから破壊されていった。

 クーデターを起こした駐留陸軍は、この後解体される予定である。よって、ここに置いてある兵器は使わないことになるのだ。

 兵器は回収して再利用すればいいのでは?と思うだろうが、駐留陸軍が違法な改造を施している可能性や、ブービートラップが仕掛けられている可能性が否定出来ない。

 うかつに触ろうとすれば、それらが動作し、一瞬で辺りを悲惨な状態にするだろう。

 そういった被害を未然に防ぐために、兵器は一律破壊されるのだ。

 今は榴弾砲の爆破破壊のために、爆薬を設置しているところである。


「爆薬設置完了」

「発破用コードを十分に伸ばしているか?」

「問題なし。周囲に人影なし。総員、影に隠れています」

「ならば良し。爆破カウント開始。爆破10秒前」

「10秒……。5秒、4、3、2、1、発破!」


 その瞬間、榴弾砲の各所に設置された爆薬が爆発する。

 それによって、鉄の塊である砲が真っ二つに割られた。

 また、中に装填されていたと思われる装薬が暴発し、派手に砲が割れる。


「破壊確認、よし」

「では次に移ろう」


 もはや、単調な作業である。

 そうして、物理的に武装解除を行っていく。

 様々な装備品が転がっている上、駐留陸軍兵士の対処も行っていかなければならないため、行政区画の完全制圧まで丸々一週間かかった。

 ディディラ上空で待機している宇宙軍に、地上降下許可が下る。

 早速第219巡航艦隊と第323駆逐艦隊が地上に降り、それぞれの代表団が行政区画に足を踏み入れた。

 そこには、フクオカたちの姿もある。


「これが親衛艦隊の攻撃……」


 そこには、焦げた草木や溶けたガラス、高熱に曝されたコンクリート、そして丸焦げになったヒト型の何かがあった。

 超高熱放射砲は、直撃しなくとも周辺にいるだけでも高熱に曝される。

 直撃した時の熱量は、製鉄所の高炉の中にも匹敵するほどだ。

 そんなものを食らってしまえば、炭にされるのは目に見えているだろう。

 そして、放射砲の周辺にいるだけでも、身体的損傷を受けることも火を見るより明らかだ。

 まさに、とある領域を制圧するために用意された兵器と言えるだろう。


「けど、ここまでひどいとは思わなかった……」

「これを考えた人間は、一体人権のことをどれだけ理解してたんだろうな」

「それを織り込み済みで考えているのかもね」


 フクオカは冷静に分析する。

 戦争に人権はない。そう考える人間も少なくはないだろう。現在では国際法により、人権は確保されている。しかし、それも平時において、という条件付きだ。

 いざ戦争が始まってしまえば、混乱がついてくる。それに乗じて、法を無視した行為が平然と行われるのだ。これは、戦争をした国家全てが当てはまることだろう。

 そして戦争に勝利した側が、戦時中に行った敵国の人道に反する行為を追及するのだ。当然、自国の事は棚に上げて、だ。

 おそらく、共和国は戦争に負けない兵器を造るために、このような兵器を製造したのだろう。


「自国第一主義による兵器設計思想が、こういう結果を招くんだね」


 まだかすかに、肉の焼けるような臭いが残っている中で、フクオカはそんな事を言った。

 その後、宇宙軍のみならず、ディディラのの住人によるボランティアが行われ、行政区画の後片付けが行われていく。

 もともと兵器だった残骸は、金属部等が回収されて、再利用される。

 人の姿をした炭は、陸軍親衛隊や宇宙軍兵士によって片づけられた。


「なんでっ、アタシたちがっ、こういう作業をっ、やらなくちゃならないのよっ!」

「しょうがないだろ。民間人に対して、死体が見られないようにする措置だからな」

「でも、たった3人でどうやってこれを片づけるって言うの?」

「大丈夫だ。そのための信頼があるんだ」


 そう言ってフクオカは、数十kgもある肉の塊を、リアカーに積めるだけ積んでいく。

 中には四肢のもげたものもあったが、いちいちそんなのとを気にしていたらキリがない。フクオカたちは、ただ心を無にして作業を進める。

 こうして、兵士による救援が終了し、市民は静かに自分の家へ帰っていくのであった。

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