第60話 制圧
それから数日が経過した。
ディディラにいるクーデター軍は、行政長たる大統領を逃したことで、怒りが頂点に達していた。
そして遂に、こんな声明を発表してしまう。
『我々は大統領を拘束していたわけではない。我々と協力し、共和国と対等な関係を築くために必要なことであったため、大統領に話をしようとしただけである。その結果が、大統領を救出するという名目の元に宇宙軍が来るという始末になってしまった。この宇宙軍の軍事的行動により、我々駐留陸軍の同胞が死に、そして被害を被った。我々は、ただ要求を通したかっただけである。それが何故、クーデターと言われなければならないのか。諸兄らの浅い考えに心底絶望した。諸兄らが武力で我々を抑え込もうと考えているならば、我々もそれに対抗しよう。今この瞬間、我々ディディラの領域に侵入するいかなる存在も、攻撃対象にすると警告する。我々は正しい事をしている。我々を止めるというのならば、相応の覚悟を持って、この地へ来るが良い。我々は祝砲をもって歓迎しよう』
完全に喧嘩を売りに来ている。
しかし、そんな声明を発表されても、総司令部は冷静だった。
「惑星ディディラの駐留陸軍は完全に暴走した。我々の配下から離れた部隊には、相応の罰を与えなければならない」
そういって、共和国陸軍親衛隊1個大隊を仕向けるのだった。
当然それだけでは親衛隊に勝ち目なんてない。
そこで、宇宙軍の出番である。
現在ディディラ上空に待機している第219巡航艦隊と第323駆逐艦隊の他に、第25親衛艦隊が派遣される事になった。
宇宙軍において二桁数字の艦隊は、親衛艦隊と称され、宇宙軍の中でも最新鋭の装備が施されており、錬度も相当高い。花形職業とも言えるが、訓練は熾烈を極める程厳しいとも噂され、その実態は、実際に二桁艦隊に乗り込んだ士官のインタビューでしか明かされないのだ。
そんな親衛艦隊がやってくることは、フクオカたちにとって朗報である。
「本当に親衛艦隊が来るんですか!?」
「あぁ。正式に命令が下った。あと数時間程で到着するらしい」
「あの親衛艦隊が来るなら、百人力ですね!」
「そうだな。俺も親衛艦隊を直接見るのは初めてなんだ。正直ワクワクしているよ」
上官は、伝える事を伝え終えたため、部屋を出て行った。
「後は陸軍親衛隊が降下作戦を実施するだけだね」
「あぁ。親衛艦隊の活躍を間近で見られるなんて、貴重な体験になりそうだぜ」
「ホント、生きててよかった」
そんな事をフクオカたちは話す。
そして、数時間後。予定通り陸軍親衛隊と、第25親衛艦隊がやってきた。
『こちらディディラ駐留陸軍特別制圧隊、予定通りに参上した。これより作戦行動に移る』
そういって、陸軍親衛隊を乗せた輸送艦がディディラの大気圏へと降りていく。
「あんな堂々と降りて行って大丈夫なんですか?」
フクオカの男性同僚が、上官に尋ねる。
「これは風の噂で聞いたんだが、親衛艦隊には、最新鋭の防御システムが搭載されているらしい。それを動作させている所をSNSで見たな」
「そこでSNS頼りですか……」
「まぁ、情報収集するなら、本職よりマニアの方が性に合っていることもあるからな。俺も信用するアカウントを何個かフォローしている」
「それ自慢するように言うことですか?」
そんな話をしている内に、親衛艦隊も作戦行動に移る。
輸送艦隊は、行政区間の上空へと直接移動していた。
それに合わせるように、親衛艦隊も降下していく。
一方、駐留陸軍はそれを察知したのか、攻撃を開始してくる。
大型の地対空ミサイルを使って、宇宙軍を攻撃した。
「ちょっとマズくないですか?」
フクオカたちは、宇宙空間からレーダーを使ってその様子を見ていた。
「確かにキツイ状況に変わりはないが、彼らには防御システムがある」
上官がそう言い切る。
そしてその通りになった。
第25親衛艦隊と輸送艦は、半透明の謎のフィールドを展開する。
そしてミサイルが謎のフィールドに命中する。
しかしミサイルは、その手前にある半透明のフィールドによって防がれる。
「なんじゃありゃ……」
男性同僚は、唖然とした表情で映像を眺める。
「なんでも、機関に使われている理論を利用しているそうだ。あの半透明のフィールドは、圧縮された空間で、実際の空間の数千倍もの大きさを圧縮しているらしい」
「圧縮した空間……?」
「まぁ、細かい理論はいいんだ。ただ、あの空間にとらわれると、二度と戻ってこれないらしいぞ」
「またまたぁ。そんな脅しは効きませんよ」
「それはどうかな」
そんなことを言っている間に、駐留陸軍のミサイル攻撃を退けた第25親衛艦隊と輸送艦は、どんどん大気圏を降下していく。
そして、第25親衛艦隊は、砲を地上に向ける。
「何やってるんだろう?」
「さぁ?」
フクオカたちがそんな疑問を持っている間に、地上の様子はみるみる内に変わっていった。
それは地上にあるビル群が、まるで融解するように、ドロドロに溶けて行っているのだ。
「なんだあれ!?」
「まさか……超高熱放射砲?」
「上官、何か知っているんですか?」
「工廠にいる知り合いから聞いたことがある。超大型化したマグネトロンに匹敵する不可視レーザーを使って、離れた場所で高熱を発生させる技術だ。どちらかと言えば、恒星の熱放射に近い。実際、知り合いは人工太陽を作っているようだと言っていたな」
「そんな物が……」
その熱放射砲を行政区画全体に放射した後、陸軍親衛隊が地上へ降下を始めた。
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