第57話 救出
ドレイクは、そのまま人質の元に向かう。
「大丈夫ですか?」
人質の拘束を解きながら、ドレイクは質問をする。
「あ、あぁ。大丈夫だ」
「怪我などをしている人は?」
「いや、いない」
「他に人質はいますか?」
「いや、我々だけだ。私を人質にする代わりに、他の人質を解放するように要求したからな」
そう、行政長たる大統領が答える。
しかしよく見ると、その場にいる全員が狼狽えていたり、震えていたりしていた。
当然だろう。いつもの日常が、非日常へと変貌してしまったのだから。
ドレイクは、なるべく落ち着くように指示を出す。
「私が来たからには、もう大丈夫です。皆さんを安全な場所まで引率します」
そういうと、人質だった彼らは安堵の表情をする。
しかし、ドレイクはいまだ考えあぐねていた。
それは、救出してくれる部隊がどこにもないからだ。
とにかく、彼らの聞こえない所で要請するほかないだろう。
「これから周辺の安全確保を行ってきます。皆さんはここで静かにしていてください。出なければ命に関わります」
そういって、その場から離れる。
そして、彼らの聞こえない所で、宇宙軍に連絡を取った。
『ドレイク大尉か。どうだ?侵入のほうは』
「現在人質を解放した。10人ほどだ。人員輸送船を手配してほしい」
『ちょっと待ってくれ……。大丈夫だ、問題ない。今すぐ寄越すか?』
「あぁ。1分も待ってられないくらいだ」
『了解した。すぐに向かわせる。最速で飛ばしても大体1時間かかるな』
「パイロットには、なるべく早くするように伝えてくれ」
『了解。それまでに周辺のクーデター軍を片付けておいてくれよな』
「了解した」
そうして通信が切れる。
とにかく、周辺のクーデター軍を掃討しないといけないだろう。
建物内にいる軍は後回しにするとして、対空砲の類いや口径の大きい砲を積んだものを破壊していくことにした。
「皆さん、これから救出に向けた行動を行います。皆さんをこれから屋上に連れていきます。後1時間程で宇宙軍の人員輸送船が到着しますので、皆さんには冷静に行動するようにお願いします」
そういって、彼らを屋上へと誘導していく。
その道中、何度かクーデター軍の兵士に遭遇しそうになったが、どうにか切り抜ける。
そして、全員を屋上まで連れていく。
「では、ここで身を低くして静かに待機してください。その間に私は周辺の安全を確保してきます」
「それは良かった……。ところで、他の仲間はいないのか?」
「いません。私一人だけです」
「……え?」
行政長たる大統領は、唖然とした表情をする。
「君一人なのか!?」
「お静かに。大声を出すと気づかれますよ」
「しかしだな、君。人質がいるのに、助けにきた人間が一人というのは、どう考えてもおかしいじゃないか」
「動ける人間が私しかいなかったんですよ。仕方のないことです」
「もうおしまいだ。ここで大統領生命も終了なんだ」
大統領は嘆きの言葉を吐き出す。
「とにかく、周辺の安全を確保するためにも、皆さんにはここで待機をお願いします」
そういって、ドレイクは中央庁舎を降りる。
中央庁舎は35階建てと、周辺のビルに比べれば低い建物だ。
しかし、その威厳を保つために、広い敷地にポツンとあるような状態である。
そのため、窓から外を覗けば、どこに何があるかくらいは簡単に分かるだろう。
「敷地内には敵の姿なし。これなら輸送船が降りてきても問題なさそうだ」
問題があるとすれば、建物内にいるクーデター軍だろう。
何かあれば、すぐに屋上まで来てしまうことは容易に考えられる。
そこで、ドレイクはエレベーターに細工を施す事にした。
まずは、3本あるエレベーターにそれぞれ乗り込む。
そして、エレベーターを吊っているワイヤーに傷を付ける。これをすることで、ワイヤーが何本か切れ、不安定な状態になる。
この状態で複数人が乗れば、ワイヤーがちぎれ、籠は真っ逆さまに落ちていくことだろう。
これを全てのエレベーターに施していく。
だが、この作業だけで、30分を費やしてしまう。
「次に取り掛からなければ」
そう言って、ドレイクは非常用階段へと向かう。
階段では、たまたま持っていたピアノ線を足首程度の高さに張り、その一端に手榴弾を括りつける。これによって、昇ってきた敵兵が爆発に巻き込まれて、怪我を負ったり階段の通行が困難になることだろう。
ドレイクはこれを数か所ほど作る。
この作業も、おおよそ30分かけた。
そして、約束の1時間が経過した。
ドレイクが屋上に向かうと、遠くのほうから飛行音が聞こえてくる。
「皆さん、救助が来ました。これでここから立ち去ることが出来ますよ」
一般職員は安心しているようだが、行政長たる大統領は少し険しい顔をする。
「どうかしました?」
「いや、行政長である私が逃げ出していいのか、と思ってな」
「……大丈夫ですよ。今はディディラの住民よりも、自分の安全を確保してください。あなたがいれば、ディディラはいつでも復活することでしょう」
そんな事を話していると、遠くの方から発砲音が聞こえてくる。
「敵も我々のことを認識したようですね。早く輸送船に乗ってください」
そう言われた大統領は、何か言いたげな表情をして輸送船に乗り込んだ。
その輸送船にドレイクも乗り込む。
ハッチが閉まり、輸送船は宇宙空間に向けて飛行を始める。
こうして、重要人物を無事に回収することが出来たドレイクであった。
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