第56話 潜入
疑似的な無重力感が、ドレイクの事を襲う。
ドレイクの装備しているヘルメットには、現在の高度が表示されている。それを見て、適切な場所で容器から脱出するのだ。
「高度25000m……。まだ早い……」
ヘルメットによって酸素は供給されているものの、急激な気圧変化によってドレイクの体に負荷が生じる。
ジャンプスーツは、そういった気圧の変化にも対応出来るように設計されているものの、それでも並の人間の体では限界があった。
では、ドレイクの場合はどうか?
正直、並の人間ではないため、このスーツを着れば耐えられる。しかし、流石に宇宙空間からのダイブは堪えたようだ。
「ぐっ……。頭が……!」
そんな事をしている内に、高度は20kmを切る。
高度計の数値はどんどん低くなり、地上に近づいている事を示していた。
そして高度が10kmを過ぎる。
「今だ!」
容器内にある、開放レバーを引く。
すると、レバーに作用する力によって、容器が無理やりこじ開けられる。
最終的には、外側から留めていた金具が破損し、ドレイクは容器の外へと飛び出していく。
上空を落下しながら、ドレイクは目的地である行政区画の中央庁舎へと向かう。
ヘルメットには、中央庁舎がある方角を示している。
それに従い、ドレイクは体を上手く使いながら、中央庁舎へと落下していく。
残り高度は5000mを切る。
そろそろ減速を開始する頃合いだ。
減速を開始するには、まず落下速度をある程度押さえないといけない。そのため、予備減速として、ドローグシュートを使った減速が行われる。
減速による負荷はかかるものの、宙域緊急離脱ブースターに比べれば軽いものだ。
ドローグシュートによって十分減速したら、それを切り離し、地面に足を向ける。
十分減速したと言っても、いまだ時速200km近い速度が出ている。
ドローグシュートを切り離して数秒しないうちに、肩に装着されている超小型ブースターが火を噴く。
その瞬間、ドレイクの体全体に強い衝撃が加わる。
当然だろう。超小型ブースターが生み出す推力は最大10Gにもなる。人間の体にとってみれば、骨が折れる可能性のあるほどの負荷だ。
それを全身で受け止めているのだから、かなり無茶をしているだろう。
しかし、それに負けじと、ドレイクは耐える。
目下には中央庁舎の屋上が見えた。
そしてそこそこの速度で、屋上に突っ込んでいく。
ドレイクは着地の瞬間、ブースターを切り離し、単身になる。
そしてそのまま五点着地をして、安全に屋上に降り立った。
「ぐっ……!」
若干体に痛みが残っているが、ドレイクは痛みを抑えて、そのまま屋内に通ずる扉の前まで移動する。
その場所で邪魔になるジャンプスーツを脱ぎ、身軽になった。
そこでナイフを装備し、庁舎内へと侵入を試みる。
最近では電子ロックによる鍵が用いられている場合が多いが、この扉は原始的なシリンダーによるロックのようだ。
つまり、拳銃があれば簡単に開けられる。
幸い、小型の自動拳銃を持参してきていた。
拳銃の銃口をドアロック付近に当てると、そのまま引き金を引いた。
パンッと軽快な音がある。
開錠に成功したようだ。
ドレイクは急いで中央庁舎内に入っていく。先ほどの発砲音を聞かれた可能性が否定できないからだ。
そのまま階段を降りていくと、哨戒中の駐留陸軍兵士がいた。
ドレイクはナイフに持ち直すと、物陰から兵士の様子をうかがう。
周辺の様子を確認した陸軍兵士は、踵を返していく。その瞬間をドレイクは逃さなかった。
素早く兵士の後ろに回ったドレイクは、そのまま左手で口を塞ぎ、右手のナイフで首を搔っ切る。
陸軍兵士は、叫び声を上げる間もなく絶命した。
ドレイクは、陸軍兵士の体をゆっくりと床に置くと、そのまま兵士の持ち物を物色する。
持っていた小銃、替えの弾薬、もしものための手榴弾1個。
それを持って、ドレイクはさらに中央庁舎の奥の方へと走っていく。
道中は、角にあたる度に、クリアリングを行っていった。
慎重しすぎな程、庁舎の中を移動していくドレイク。
そして、ようやく人質がいる部屋へと到着する。
どうやら行政長である大統領と、司法長、その他数名の職員が拘束されているようだ。
「さて、どうやって救出したもんか……」
少し考えたドレイクは、一つの行動に出る。
「少々手荒い方法だが、やらないよりはマシだ」
そういって、拾った手榴弾の安全ピンを抜いた。
そのまま安全レバーを外し、数秒置く。
そしてそれを投擲する。
すると手榴弾は、床に落ちる前に空中で炸裂した。
それに驚いた陸軍兵士は、何が起きたのか分からない様子である。
その瞬間をドレイクは見逃さなかった。
ナイフを持って、素早く接近すると、そのまま一人目の首を掻っ切る。
「なんだ!?」
まだ混乱している陸軍兵士に対しても、容赦なくナイフを振るう。
「貴様は!?」
ドレイクの強襲に対応しようとする陸軍兵士であったが、兵士が銃を構えるよりも前に、ナイフが兵士の心臓を貫く。
こうして、ドレイク単体で人質を監視していた陸軍兵士を葬り去ったのだ。
本日も読んで頂きありがとうございます。
もしよろしければ下の評価ボタンを押していってください。
また感想やブックマークもしていただけると幸いです。
次回もよろしくお願いします。




