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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第54話 提案

 第219巡航艦隊と第323駆逐艦隊が合流し、次の作戦が計画される。


『クーデターの主犯格たる駐留陸軍に対して、威嚇射撃を行うべきと考える』


 そう表明したのは、第323駆逐艦隊の指揮官である。

 こうなったのには、少し経緯を説明しなければならない。

 まず、第219巡航艦隊と第323駆逐艦隊双方の指揮官は、総司令部が命令を下した陸軍部隊の到着を待っている間に、クーデターの主犯格である駐留陸軍をどうにかしないと行けないという、共通の認識がある。

 その上で、今後の対応としていくつかの選択肢を用意することにした。

 それが、監視、干渉、攻撃の三つである。

 その中から、第323駆逐艦隊の指揮官は攻撃を選択した、ということだ。


「しかし、その考えは早計であるのでは?」

『いや、ちゃんと考えての提案だ。まず最初に、駐留陸軍はディディラの行政区画を制圧されているのが問題なのだ。いくら警察が対処しようとしても、相手が軍ならば不利になることは必須。ならばその前に、宇宙軍が攻撃を行って、混乱している所に、地元警察と派遣陸軍を突入させればいいのだ』


 考え方は間違ってはいないだろうが、それでは懸念要素が増えるだけである。

 第219巡航艦隊の指揮官は、どうにか考えを改めてもらうように説得を始めた。


「仮に我々宇宙軍が攻撃をするとして、具体的な案はあるんです?」

『簡単だ。我々が地上に降りればいい。実弾を用いれば、確実に駐留陸軍を葬り去ることが出来るだろう』

「それでは、建物内に囚われていると考えられる行政職員の命が危ういのでは。そのあたりは、どのように考えていますか?」

『それは仕方ないだろう。いわゆるコラテラルダメージだ』


 その瞬間、第219巡航艦隊の指揮官は、堪忍袋の緒が切れた。


「何を言う!軍人が市民を襲うなど言語道断!貴様がやろうとしているのは、クーデターを起こしている駐留陸軍と同様のことだぞ!」

『私の事を、あんな者どもと一緒にするのか?』

「そこに何の違いがあるというのだ!?」

『明確に違う。駐留陸軍は全ての人間に対して憎悪を振りまいて危険を脅かしているのに対し、我々がやろうとしていることは大多数の人間を救うため少数の人間を犠牲にしているだけだ。犠牲を最小限にするための工夫とも言える』

「工夫だと?それが工夫と言えるのか!?軍人ならば、市民を一人でも多く救う方法を考えるものだろう!?」


 そういって第219巡航艦隊の指揮官は、手元にあったマグカップを第323駆逐艦隊の指揮官に向けてぶん投げる。

 しかし、この会議は通信によって行われているため、マグカップはモニターに当たるだけだった。


『……言いたいことは言い終わったか?』


 第323駆逐艦隊の指揮官は、諭すように言う。


「あぁ。そして良く分かったぞ。貴様が最低最悪の人間であるということがな」

『それは心外だな。現実主義者と呼んでもらいたいものだ』


 そういって通信が切れようとする。

 その時、第219巡航艦隊指揮官室の扉が開いた。


「誰だ!?会議中だぞ」

「その事については謝罪します。しかし聞いてほしいことがあるんです」


 そういって、部屋の中にある人物が入る。

 その人物こそ、ドレイクであった。


「君は……?」

「申し遅れました。先日付けで第219巡航艦隊に配属したコーウェン・ドレイクです」

『コーウェン・ドレイク……?まさか、あの伝説のパイロットなのか?』

「一応そのような肩書になっているようですが。指揮官殿、聞いてもらいたい事があるのです」

『私にか?』

「はい。話は概要だけですが聞いています。そこで一つ提案があるんですが」

『……伝説のパイロットの話であるなら聞こう』

「ありがとうございます。話によると、指揮官殿は駐留陸軍をまとめて吹っ飛ばす事を考えているようですね」

『それしか方法がないからな』

「それがもし、他に方法があるとしたら、どうお考えですか?」

『……そんな方法があるとでも?』

「えぇ、あります。その方法が」


 そうドレイクは言い切る。


『それだけ言い切るということは、相当自信がある、ということだな?』

「勿論ですとも」

『それで、その方法というのは?』


 ドレイクは一呼吸置いて、その案を話す。


「その方法は、私が行政区画の建物に潜入して、囚われている人々を救うことです」


 その言葉に、その発言を聞いたものは全員驚いたようだ。


「そんなことが可能なのか?」

『いくら何でも、伝説のパイロットがそんなことが出来るわけない』

「たった一人で潜入するのか?」

『無茶だ。不可能に近いぞ』


 そんな声が聞こえてくる。

 しかし、ドレイクはそんな声をものともせず、続きを話す。


「私には、本職時代に身に着けたスニーキング技術があります。それを使えば、敵の制圧もたやすいことでしょう」


 しかし、会議はざわめきで埋め尽くされる。

 そこを第323駆逐艦隊の指揮官が止めに入った。


『静粛に、静粛に!……もしそれが本当だとして、生きて帰れるのか?』

「勿論です。プロですから」

『……よろしい。では実際にやってもらおうではないか』


 こうして、ドレイクによる潜入作戦が開始される事になった。

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