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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第53話 魚雷

 第219巡航艦隊は、全てのICBMを撃破した、と考えた。

 しかし、それは真実ではない。

 突如として、レーダーの端から超高速の物体が接近してくるのを、レーダー観測員が発見した。


「大変です!全周囲約3000km先から宙間魚雷と思われる物体が接近しています!」

「何だと!?」


 その速度はマッハ3に近く――もっとも、宇宙では音が出ないため、速度の意味で使われる――そして第219巡航艦隊を取り囲むようにして接近していたのだ。


「どういうことだ!?」

「おそらく、惑星の裏側から宙間魚雷を搭載したICBMを発射したものと思われます!でなければ、こん場所に魚雷が来るわけがない……!」

「クソ!迎撃!迎撃だ!」


 グングニルシステムは、すぐさま目標である宙間魚雷をロックオンする。

 迎撃に最適なミサイルを選択し、それを砲雷撃長に提示した。


「目標、ロック確認!」

「撃て!」


 その合図と共に、砲雷撃長はミサイル発射を容認する。

 VLAから数百にも上る宙対宙ミサイルが発射され、各々指定された宙間魚雷へと向かっていく。

 グングニルシステムでは、一度に千近くの目標をロックする事が出来ると言われている。ここで断言していないのは、実際にそんな場面に遭遇しないからだ。これまでの実戦経験から、少なくとも千程度の目標を捉えることが出来るとされている。

 今回のような場面では、グングニルシステムは最大限の効果を発揮することだろう。

 宙対宙ミサイルはぐんぐん加速して、宙間魚雷へと接近していく。

 ほんの数分程度で、お互いが交差する。

 レーダー上で、宙間魚雷が破壊されるアイコンが次々と表示されていく。


「いいぞ……!1発たりとも撃ち漏らすなよ」


 艦隊指揮官は、念押しにそう言う。

 それから数分。レーダー上には撃墜マークで埋め尽くされていた。


「生き残っている宙間魚雷は?」

「現在の所、確認出来ません」

「確認出来ないとはどういうことだ?」

「宙間魚雷、宙対宙ミサイルの残骸によって、レーダーが乱反射しているとおぼしき現象が発生中。そのためレーダーで確認しても、ノイズがひどい状態で、まともに観測することは出来ません」

「何とかならないのか?」

「掃除でもしない限り、現状はどうにもなりません」

「こういう時に重力が働かないとは、不便なものだ」


 そう艦隊指揮官は言う。

 第219巡航艦隊の周辺には、宙間魚雷と宙対宙ミサイルが衝突した事によるデブリが散乱していた。それによって、第219巡航艦隊から発せられるレーダーは、そのデブリによって反射、拡散する。

 当然、乱反射したレーダー波はまっすぐ戻ってくるわけではなく、様々な方向から様々なタイミングで戻ってきたり、戻ってこなかったりするのだ。

 そうすると、それがノイズとなって表示されるので、まともに周辺を確認することは出来なくなる。


「ダメです!レーダー反応無し!」

「こうなったら目視で確認だ!手の空いている乗組員は全員外の監視を行え!」


 そう艦隊指揮官が指示を出す。

 第219巡航艦隊にいる観測員を始め、艦隊から発艦していく艦載機、宇宙服を着こんで艦艇周辺を浮遊する補給課や作戦課、とにかく砲雷撃課以外の兵士が動員された。

 そして周辺をつぶさに観察しなければならない。


「クソ、こんなことやってられるかよ」


 フクオカの男性同僚は、外部ユニットである、望遠スコープを覗きながら愚痴を言う。


「最近はこんなことばっかりだ。あっちに駆り出されれば、こっちに駆り出される。作戦課を一体何だと思っているんだ」

「怒る理由は分からなくないけどさ。今は命令に従うほかないよ」

「そうそう。命がかかってるんだから」


 そういってフクオカと女性同僚は、くまなく周囲を見渡す。

 その時だった。


『艦隊左後方より高速物体接近中!』


 このような無線が入る。

 思わず、フクオカたちも、そちらの方向を見た。


「宙間魚雷どこ?」

「見えない」

「あれ……は違うか」


 そんな事を言っているうちに、艦隊左翼後方にいる数隻の艦艇から、ミサイルが発射される。

 しかし、それは迷走を始め、結局あらぬ方向に進んでしまった。

 その間に、宙間魚雷はマッハ3を超える速度で、艦隊左翼に突っ込む。

 そのうちの1隻に、宙間魚雷が命中する。

 命中した瞬間、宙間魚雷は艦を貫いた。左舷側に命中した宙間魚雷は、反対側の右舷側をぶち抜く。

 その攻撃によって命中した艦は、船体を真っ二つに折りながら爆発四散した。


「アブねぇ!」

「こんな懐まで入り込まれているの!?」

「次の攻撃が来たら、確実に219艦隊は壊滅よ!」


 作戦課の面々が艦内に戻ろうとした時、とある通信が入ってくる。


『こちら、第13艦隊第323駆逐艦隊である』

「323艦隊?確か偵察任務で先に来ていたような……」

『我々は第219巡航艦隊から見て、惑星の反対側にいた。先刻、地上からICBMが発射されたため、危険物であるとして迎撃を行った。しかし撃ち漏らしがあったようだ。その様子を見る限り、被害は多少なりとも出ているようだな。我々の援護が間に合わなかったせいだ。ここに謝罪する』


 こう通信が入ってきた。


「なんか律儀な人だね」


 そして第323駆逐艦隊は第219巡航艦隊と合流した。


『惑星の反対側にあるミサイルサイロは破壊した。これでしばらくは問題ないはずだ』


 なんとも有能な指揮官である。

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