第52話 迎撃
艦内に非常警戒アラートが鳴り響く。
赤色の回転灯が艦内を照らし、非常事態である事を知らせる。
「なんだ!?一体何が起きた!?」
今後のための会議を行っていた第219巡航艦隊の上層部は、何が起こったかの把握をする。
「レーダー観測員からの報告によると、駐留陸軍が大陸間弾道ミサイルを使用したとのこと!現在、我が艦隊に向けて飛翔中です!」
「ICBMだと?あんな骨董品でどうしようというのだ!?」
「しかし、最近の研究や軍事マニアの情報では、ICBMの弾頭部分に搭載可能な宙間魚雷が格納されている、という話が上がっているんです」
「グッ……」
宙間魚雷。
文字通り、宇宙艦艇を葬り去るだけに開発された、一撃必殺の兵器だ。
現在の共和国では、兵器開発は共和国軍直轄の工廠でのみ行われる。
しかし、共和国に加盟している惑星の一部では、秘密裏に兵器開発が行われている事もしばしばある。
そのため、兵器密造を行っている企業や個人、はたまた惑星に対して、共和国警察が強制捜査を行う、なんて光景を見られたりするのだ。
そのイタチごっこは日常的に行われていたりする。
そして、各惑星ごとに違法な兵器が出回っているのだ。
惑星ディディラでは、本来ならICBMに搭載する事が不可能な宙間魚雷を、搭載出来るような改造を行ったようである。
「やはり警察なんかに任せておけないな。兵器には兵器だ。宙対宙ミサイル発射準備!」
艦隊指揮官は、すぐに全艦に指示を送る。
艦隊は戦闘隊形に移行を始めた。
しかし、それが終わる前に、ICBMが宇宙空間に到着する。
「ICBMの弾頭から宙間魚雷発射されました!」
「なんてこった……」
そして、ばら撒かれた宙間魚雷は次々と第219巡航艦隊に命中していく。
「艦隊左翼の艦艇に被害が出ています!」
「そんなこと見れば分かる!発射基地の割り出しと、ICBMの迎撃を並行して行え!」
「りょ、了解!」
正直、無茶ぶりではあるものの、これ以上の被害を出す前になんとかして迎撃を行わなければならない。
現代の宇宙艦艇に使われているシステムは、海軍の防空重視の戦闘システムと違って、宙域を積極的に攻撃するための物を使用している。艦隊全体で全力の攻撃をする、このシステムの名前を「グングニルシステム」と呼ぶ。
グングニルシステムは宙域制圧のために、宇宙艦艇に搭載されている火力を全力で投射する事を目的としている。そのため、圧倒的な戦闘力を発揮することが出来るのだ。
そんなグングニルシステムで、現在観測されているICBMを確認する。
どうやら、第219巡航艦隊に飛翔してきているICBMは全部で6つのようだ。
艦隊に所属している艦艇の主砲が、狙えるICBMに照準を定める。
「目標ロック!迎撃可能です!」
「一斉攻撃開始!」
そのまま幾千の主砲から砲撃が行われる。
宇宙空間におけるビーム砲撃は、大気圏内に比べて素直だ。
そのため、ICBMをたやすく迎撃することが可能である。
こうして、見えている範囲のICBMを迎撃する事に成功した。
「良し!流石はグングニルシステムだ。攻撃に関して右に出るシステムはないな」
そう艦隊指揮官が関心する。
実際、グングニルシステムが導入されてからは、模擬戦や実戦において勝率が高いことでも有名だ。何千もの戦闘を経験してもなお、一定の勝率を上げられるこのシステムは、常に洗練され、最も完璧に近づいたシステムとも言えるだろう。
そんなグングニルシステムだが、一つだけ弱点がある。
それは、攻撃力に極振りしているため、防御面において若干弱いということだ。
もちろん、防御の事も考えられて設計されているシステムではあるのだが、何しろ艦艇側、つまりハード面において迎撃するための装備が貧相な事になっているのだ。
例を取ってみると、対空対艇機銃は必要最低限しか装備されていない。艦載機を墜とすのは同じ艦載機の役割であって、図体がデカい艦艇は重武装の艦艇と戦うべし、という思想やドクトリンが完成しているのが原因だったりする。
そのため、対空ミサイルの不足、機銃の不足の2点が主な要因として、グングニルシステムの弱点と称されているのだ。
だが、そんな弱点が霞むほど、グングニルシステムは圧倒的な攻撃力を誇っている。
そのため、宇宙軍内ではグングニルシステムの最強伝説を妄信的に信じている軍人も少なくはない。
「ICBMが発射された基地は探知出来たか?」
「迎撃したICBMの発射場所を検知しました」
「では、そこに向かって実弾を発射せよ!」
主砲に砲弾が装填され、実弾用方位射撃盤を使用して照準が定められる。
そして照準が定まった。
「目標、射程に収めました!」
「射撃開始!」
艦隊指揮官の指示によって、ICBMが発射された場所に向かって、砲弾が発射される。
大気圏に突入し、音速を超える速度で地上へと降り注ぐ。
数百もの砲弾が、一斉にミサイル発射地点に着弾した。
それによって周辺の地面がえぐれ、ICBMを発射したミサイルサイロ群は完全に破壊される。
「全弾着弾!目標を破壊!」
「よし!見たか、これが宇宙軍の実力だ!」
そう言ってられるのも、後わずかである。
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