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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第49話 偵察

 大気圏への突入が無事に完了し、そのままディディラの上空を飛行する。

 今回の偵察隊に使われている機体は、現代的な宇宙空間専用の機体ではなく、大気圏も飛行可能な宙空両用航空機だ。

 そのため、機体には大気圏内を飛行するための主翼が装備されている。

 前世代の攻撃機であるドレイクの機体は、改造なしで飛行が可能だ。

 もちろん現代宙間航空機でも、オプションで主翼を取り付けることも出来る。

 現代航空機の話は置いといて、偵察隊は順調にディディラの行政区画へと近づいていく。


『目的地まで残り3000kmを切った』

『現在マッハ0.75で巡航中』

「到着まで残り3時間18分。高度は1000mを維持」


 編隊を組みながら、目的地に向かってまっすぐ飛ぶ偵察隊。

 今回は偵察任務ということもあり、その飛行には変則的な場所が見られる。

 まず行政区画近辺までは、巡航速度で突っ込む。その後、行政区画周辺10kmになれば、エアブレーキを使用して速度を300km以下に、高度も地上から100m以下に抑える。

 この状態で行政区画周辺を数回周回し、状況を確認するのだ。その際、持ち込んだデジカメを使って、地上の撮影も並行して行う。

 そして、十分に情報を集めたら、最高速度で行政区画上空から離脱する。この時に、クーデターの主犯人である駐留陸軍の対空砲や対空ミサイルに墜とされないようにしなければならない。

 特に高度を低くしている上、速度もそこまで出ていないため、駐留陸軍にとっては恰好の餌食だろう。

 だが偵察任務とは、敵の情報を持ち帰ることこそを主眼に置いている。

 決して敵に墜とされることがあってはならない。

 ドレイクは、そのような覚悟を持って、この偵察任務に従事している。

 海を渡って、いよいよ陸地が見えてきた。

 ディディラの行政区画は、内陸に存在しているため、しばらくは大地を飛んでいくことになる。

 途中、駐留陸軍に悟られないように、地上すれすれをマッハに近い速度で飛んでいく。当然、レーダー対策である。

 途中山岳地帯も存在しており、そのたびに高度な操縦技術が要求された。

 しかしそこはベテランとレジェンド。簡単に通過する。


『目標まで残り50km』

『減速用意』

「エンジン出力は75%を維持」


 そうして目標近くまで来ると、エアブレーキを展開する。

 フラップと違って、エアブレーキは簡単には壊れない。ジェット戦闘機が登場してからは、ドッグファイトや着陸の際に使われたりするのだ。

 音速に近い速度から、一気に500km以下に落ちる。

 その時点で、行政区画まで残り10kmといった所だ。


『撮影準備』

「カメラ準備良し」

『気を抜くなよ。最も、伝説級のパイロットさんがヘボなんてしないだろうが』


 そういって、二番機がドレイクの事をイジる。

 ドレイクはそれに反応しなかった。今更イジられるのは慣れているからだ。

 そのまま、偵察隊は行政区画の上空に突入する。

 密集している建物の中で、たった一つの建物を狙って撮影しなければならない。

 そのため、建物スレスレを低速で通らないといけないのだ。

 かなり難しいミッションではあるが、偵察隊のメンバーにとっては朝飯前である。


『右旋回、フラップ展開』

『周辺に敵機なし。地上にも対空砲はなさそうだ』

「了解。写真撮影に入る」


 そういって、ドレイクはデジカメを使って撮影を開始する。

 行政の要である建物には、駐留している陸軍の部隊旗がはためいていた。

 地上にいる駐留陸軍は、偵察隊の事を仲間の航空機と勘違いして、歓迎ムードに浸っているようだ。


『地上はお祭り状態だな。市民の革命みたいだ』

『これが限界地方の行く末か……。市民を守るためにいる軍が、市民を弾圧しているなんて、まるで皮肉のようだ』

「しかし、人々の思想は簡単には変えられない。長年の積み重ねが、現在の惨劇を生んでいる」


 ドレイクは、まるで悟ったように言う。


『撮影は済んだか?』

「あぁ、ばっちりだ。これ以上やっていると、建物に向かって機銃掃射してしまいそうだ」

『そりゃ大変だ。それに、これ以上いると敵に正体がバレそうだからな。さっさととんずらしちまおう』


 そういって速度を出そうとした時だった。

 レーダーの隅に影が映る。それにドレイクが気が付いた。


「不味い!敵だ!」


 その瞬間、偵察隊の二番機が爆散した。


「あ……、あぁ……」


 一瞬、呆然とするドレイク。

 その時、脳内によみがえる戦友の姿。それと映像が重なり合った。

 しかし、すぐに正気に戻ったドレイクは、すぐさま操縦桿を全力で倒す。それと同時に、フレアを放出する。

 機体が曲がり、その場から離れた瞬間、フレアを放出した周辺で爆発が発生した。


「クソッ!空対空ミサイル!敵が来たか!」


 一瞬で状況を判断するドレイク。

 そして、それに一瞬で反応する。現役時代の勘は十分残っていたようだ。

 しかしドレイクはいいとして、一番機の方は混乱しているようだ。


『こんなの聞いてない!なんで敵の航空機が出てきているんだ!』

「落ち着け!とにかく逃げろ!全速力で離脱だ!」


 そのように言い聞かせても、落ち着くことは出来ない。

 そして曖昧な回避行動を取ってしまい、一番機は敵の手によって墜とされてしまった。


「不味い……!」


 ドレイクは焦り始める。

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