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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第128話 爆発

 第599任務部隊は、後方から迫ってくる亡命国家艦隊をあえて無視して、ブラックホール爆弾に対して攻撃を開始する。


「最大火力を叩き込め!」


 指揮官の命令により、攻撃が開始される。

 数十秒ののち、攻撃はブラックホール爆弾に命中するが、まったくもってびくともしない。

 少しばかり攻撃力に劣る第599任務部隊ではあるが、これでも並みの艦隊と同程度の戦力である。


「こんなに堅いとは聞いてないぞ!」

「こうなれば、起爆装置のある司令塔か何かを破壊して、物理的に起爆出来ないようにするしかありません!」

「しかし、我々の存在は完全に知られている。もしその司令塔を探したところで、破壊する前に起爆されてしまっては元も子もない!」

「クソッ……どうすれば……!」


 その時、未知の無線通話が第599任務部隊の通信に割り込んでくる。


『我々は亡命国家だ。爆弾を破壊しようとしているが、それは無駄だ』

「この通信は!?」

「後方にいる亡命国家艦隊からのようです!強制通信授受装置を使用しています!」

『我々は完全にブラックホール爆弾を完成させた。現在、各地に散らばっているブラックホール爆弾群を銀河中心部に集結させている。それらがこの宙域に来た時が、銀河の、宇宙そのものの終わりだ』


 すると、モニターにタイマーが現れ、カウントダウンを開始する。


『これはブラックホール爆弾群の起爆までの時間だ。その間に我々の野望を止めることができるかな?』


 高笑いののち、通信が切れる。


「残り時間は?」

「あと7分です……」

「絶体絶命、絶望的状況だな」


 指揮官は見るからに落胆している。

 しかし、それでも第599任務部隊はブラックホール爆弾への攻撃をやめない。

 現場では、破壊できるという希望を持って、指揮している者や兵たちがいるのだ。

 その時、斜め前方から何かがやってきた。


「2時方向より艦隊と思われる影を確認!」

「新たな敵か?」

「いえ、IFFに反応あり!友軍です!」

『こちら、ギャリオ帝国第802艦隊所属第1145戦隊だ』

「敵だと思ったらどうしようかと考えていたところだよ」


 そう指揮官は回答する。


『ロクシン共和国の加速装置がもうすぐで超々遠距離ワープをする。おそらく、爆弾破壊よりも、空間対消滅を選択したようだ。我々の任務は、なるべく敵を囲みつつブラックホール爆弾とともに散れというものだ』

「しかし、それは可能性の話なんだろう?それに全てを賭けて問題ないのか?」

『今は砂漠の中の砂粒一つでも可能性のあるものを信じるしかないんだ。悪いが、全員ここで戦死してもらうしかない』

「……もとよりそのつもりだ」


 そして指揮官は通信を切り替える。


「総員、聞いていたな?これより我々はブラックホール爆弾を処理するために、ここに骨を埋める。これは決定事項だ」


 そういって機関課に指示を出す。


「すまないが、機関を暴走させてこの壁を吹き飛ばしたい。できるか?」

「指揮官殿。残念ですが、現在は機関の出力を全て火器管制に移行しています。仮に今から攻撃をやめて機関を暴走させようにも、エネルギーが足りません」

「そうか……。ならば、亡命国家艦隊を攻撃しよう。奴らの足止め程度、最後の戦いとしてふさわしいだろう」


 そういって、戦闘課のほうを向く。


「やってくれるな?」

「もちろんです。指揮官の命令とあらば」


 そういって第599任務部隊の攻撃は亡命国家艦隊へと向く。

 この時点で、起爆まで残り1分半を切った。


「奴らめ、やっと諦めたか」


 亡命国家とラサイド連邦の合同艦隊の旗艦で、レプティリアンがそんなことを話す。


「残り時間は少ない。祝いの酒を開ける時が来たようだな」


 彼らの元には、ワインのようなビンが差し出される。

 そしてそれをグラスに注ぎ、上層部の連中はそれを掲げた。


「我らの未来のために!」


 この時、爆破まで残り30秒。

 勝負は決着する。

 かに思えた。

 突如として、ブラックホール爆弾群の外側に、超巨大構造物が出現する。

 ロクシン共和国の超高エネルギー円環加速装置を改造した、民間構造物転用型ブラックホール爆弾対処用円環加速装置群臨時増設改造仕様、通称「ラグナロクの首飾り」である。

 一部改造が間に合っていなかったのか、むき出しの構造物が見えるだろう。

 それに、遠距離での操作が不可能だったため、円環加速装置を使用する研究所所属の民間人と軍人が乗り合わせていた。


「ワープ完了!」

「ブラックホール爆弾爆破時間とシンクロ!物質衝突時間調整!」

「ラドンとテルルの衝突まで残り5秒!」


 そしてブラックホール爆弾の爆発の直前に、円環加速装置の衝突が発生する。


「衝突を確認!」


 その瞬間、「ラグナロクの首飾り」自体がブラックホールよりも黒く発光する。

 直後、ブラックホール爆弾群も爆破時間となり、エネルギーが集中した。

 この時、外からの様子を見れば、異様な光景が広がっていただろう。

 ブラックホール中心部で白く輝く光と、その周辺で黒く輝く光。

 相対(あいたい)する物同士が接近し、そしてぶつかった。

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