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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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121/130

第121話 譲歩

 サムゲイル1が撃破された頃、ギャリオ帝国はロクシン共和国とミューシャ王国とホログラム会議を行っていた。

 ただ、ロクシン共和国はネットワークが貧弱なため、音声のみの参加となる。


「お集まりいただき感謝します。本日お集まりいただいた理由ですが、ラサイド連邦および亡命国家に対して講和を行うという提案を、我々のほうからさせていただきたいと考えています」


 その言葉に、会議の場はざわめきが起きる。


『今の段階で講和をする理由をお聞かせ願えますか?』


 ミューシャ王国の代表が聞く。


「先ごろから、亡命国家およびラサイド連邦の戦線が膠着状態にあるからです。本来であれば、電撃作戦よろしく戦線を押し込む予定だったのに対し、想定より敵の攻撃が激しいことが原因です。当初の計画を変更せざるを得ない状況になったのは、誠に不本意ではありますが、ここで一挙攻勢をかけるのも大変でしょう。そのための講和です」


 ざわめきはいったん収まったようだ。


『しかし、どう講和を飲み込ませるんです?こちらから一方的に最後通牒を押し付けるような形で開戦に踏み切ったのですから、何かしら譲歩は見せないと問題になるでしょう』


 ロクシン共和国の意見が入る。

 ノイズ交じりで若干聞こえずらい。


「あくまで主導権があるのはこちらです。我々が高圧的な態度をとって接すれば、おおよその問題はないと考えます。とにかく、講和内容を決定するべきだと思いますが……」


 確かに一度は考えるだろう。

 泥沼化と化した前線で、これ以上兵士に負担をかけるわけにはいかない。

 それにラサイド連邦に対しては経済制裁をかけているため、連邦内の経済や産業はガタガタである。まともに経済が機能しているとも思わないだろう。

 そのため、ここ辺りで講和を吹っ掛けるのも一つの手ではある。


「では、講和という形でよろしいでしょうか?」

『問題ないでしょう』

『こちらも異議なし』

「では、ラサイド連邦および亡命国家に対する無条件降伏に関する講和を制定することにいたしましょう」


 ここまで言ったところで、会議室に伝令の兵士が入ってくる。


「何かね?重要な会議なんだ」

「申し訳ございません。しかし、サムゲイル1から緊急の通信が入ったので共有を」

「偵察している船か!?何か情報が入ったんだな!?」


 ギャリオ帝国代表の大将が聞く。


「今読み上げます。『銀河中心部にて、亡命国家はブラックホール爆弾を製造。宇宙すべてを真の真空に相転移させる模様。対抗するにはブラックホール爆弾そのものを破壊するほかなし』、とのことです」

「ブラックホール爆弾だとぉ……?それで具体的にどうすればいいんだ?」

「現在国防省と先端技術研究センターに問い合わせ中です」


 そこに別の兵士がやってきた。


「先端技術研究センターからブラックホール爆弾に関する回答が届きました!これに対抗する手段なし!起爆前に破壊するのみ、とのことです!」


 その発言に、一同ざわめく。


『もしこれを使って脅されたらたまったものではないぞ』

『宇宙を真の真空にするってことは、これまでの物理法則が成り立たないことになるんだよな?』

『そんなことされたら、銀河の秩序がどうこうの話じゃない』


 ざわめく会議室を、ギャリオ帝国の代表団が抑える。


「皆さん静粛に!これではっきりしたこともあります。これまで発見されてきた、ブラックホールを使用した兵器は、亡命国家とラサイド連邦が共同して開発運用していたことがはっきりと分かったのです。ならばなおさら、講和を続けることが重要であると考えます」


 一部からは同意の声が上がる。


『しかし、亡命国家はもともと捨て身覚悟のならず者国家。今更民主主義的対応を取るのでしょうか?』


 その考えも最もだろう。


「だからと言って、我々が邪道を行ってはならないでしょう。あくまでも、我々は王道を行くまでです」


 その一声に、皆が押し黙る。

 数分間の沈黙。それを破ったのはギャリオ帝国の代表であった。


「では、講和の中に条件を付け足すのはどうでしょう?内容は、亡命国家の探索とブラックホール兵器の有無の確認、といたしましょう」

『しかし、先ほども言った通り、通告通りに動いてくれますかね?』

「それは保障しかねる。しかし、我々がデータでも文書でも送付すれば、それが証拠となってこちらが有利になるだろう」

『それが文書主義というものですか』


 結局、その後も代案になりそうな意見が出てこなかったため、これを停戦交渉の一歩とすることになったのだ。


「では草案のほうはギャリオ帝国のほうでまとめます。本日の会議は以上にしましょう」


 そういって各国の通信が切れる。


「しかし、こんな草案で大丈夫なのか?」


 メモ程度の草案だが、内容は察するに有り余る。


「相手は国として自覚していません。ただの軍事的組織でしょう。ならばこれくらい厳しくいったほうが後々楽になるでしょう」

「まったく、末恐ろしい男だ」


 そういって代表は部屋を出る。

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