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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第120話 発覚

 史上稀に見ることのない極太光線が、宇宙空間へと消えていく。

 この攻撃によって、ハイトット2世を含むラサイド連邦の大規模艦隊が消滅した。

 ついでに、その後方に存在した第7惑星も完全に蒸発したらしい。


「これほどまでの威力とは……」


 第599任務部隊の指揮官が、各種観測結果のデータから「ジ・ラーグの鉄槌」の真の実力を想像する。


「まさに圧倒的な威力だと思います。推定で2.25*10^6YJ(ヨタジュール)のエネルギーが放出。これを食らったら、まさに蒸発するしかありません」

「しかし、一瞬で死ぬことができたと考えるならば、彼らにとっては良かったと言えるだろう。そこだけが救いだ」


 そういって指揮官が帽子を脱ぐ。

 それは、宇宙空挺団を身を挺して妨害していた第599任務部隊の彼らに対する敬意であった。


「しかしこんな超兵器、放っておくわけには行かないだろう?これが敵の手にあったと思うとゾッとする。すぐにでも爆破解体するべきだ」

「それもそうですが、ロクシン共和国内部では、これを解析しようとする動きが出ています」

「こんな古代兵器、そんな簡単に解析できるわけないだろう?」

「それもそうですが、今のご時世何が起きるか分かりませんからね。こういうのを解析しておく必要があるんでしょう」

「そんなものなのかね……」


 指揮官は少し疑問に思いながら、現状の確認をする。

 一方その頃。亡命国家領域の深い所を、とある構造物が静かに移動していた。

 それは、300年も前に建造された構造トラスと居住モジュール。通信するための大型のアンテナ。そして居住するために現代のエネルギー源を備えた小型の宇宙船。

 ギャリオ帝国が用意した、亡命国家偵察用小型宇宙船「サムゲイル1」である。

 サムゲイル1は銀河の下部方向から投入され、亡命国家のある銀河中心部に向かって移動していた。


「船長、本当に亡命国家の本拠地になんて着けるんですかねぇ?」

「今は我慢だ。特にこういう閉所ではストレスがたまりやすい。今は落ち着くことが優先される」


 たった二人だけの単独作戦である。居住モジュールの大きさは、郊外にある平屋建て程度であり、互いにプライバシーを保てる状態ではあるものの、それでもストレスというのはどこまでも付きまとってくるものだ。


「別に船長との生活が嫌だってわけじゃないんですけど、なんかゴールの設定されていないマラソンを走らされているようで性に合わないんですよね」

「偵察任務というのはもとよりそういうもんだ。今は静かに時を待つしか出来ないだろう」


 そういって船長は、観測機器を使用して状況を確認する。


「航海班、今どのあたりだ?」

「えっと……。銀河中心部まであと500光年くらいですかね」

「それでも500光年か……。しかし、ここまで来れば、何かしらの証拠をつかめるはずなんだ」

「それ船長の勘でしょう?」

「俺の勘は良く当たるからな」


 そんな感じで日々を過ごしていく。

 そんなある日。定期通信の日だ。

 亡命国家にバレないように、1,2世代前の通信方法でやりとりをしていた。


「こちらサムゲイル1、現在も亡命国家領域を通過中。めぼしいものは見当たらず。定期通信終了」

「船長、この定期通信って必要ですかねぇ?毎日のようにめぼしいものは見つからないし、飽きてきた感じしません?」

「それも仕事だ。仕事のためなら死んでも構わん」

「うわぁ、仕事熱心なタイプ。それ一昔前の幻想ですよ?」

「そういう嫌味なことをズバズバというのはお前のタイプなんだろうよ」


 そう言いながら、日々の仕事をこなす二人。

 その時であった。

 船長が何か違和感のあるものを発見する。


「何だ?あれは」

「どうかしました?」

「あんなところに亡命国家の艦がいる」


 そういって示した場所には、確かに亡命国家特有の艦艇があった。


「こんな所で漂流か?」

「そんなことはないでしょう。もしかしたら、誰かが乗り捨てたのかも」


 その時であった。

 急な磁気嵐に巻き込まれる。


「うわわっ!」

「何かにつかまれ!振り回されるぞ!」


 まるでドラム式洗濯機の中に放り込まれたような状態から、一気に静かになった。


「何だったんだ……?」


 すると、航海班の彼が窓の外を見て驚愕する。


「船長!あれ見てください!」


 そこには、巨大な何かを取り囲むように無数の巨大構造物があった。


「まさか、ここが亡命国家の本拠地か?」

「でもどうして急に?」

「そんなことはいい。急いで観測だ!」


 各種様々な装置を用いて観測を行うと、一つの結論に至った。


「あれは、ブラックホール兵器だ」

「まさか……。帝国でも出来てないんですよ?」

「いや、亡命国家ならあり得る。もともとラサイド公国時代の優秀な人材が流れているからな」


 そして画像処理をしながら、ある結論を導き出す。


「これはおそらく、ブラックホール爆弾だ。昔ラサイド公国の論文を読んだときに見たことがある。ブラックホールのエネルギーを取り出して、銀河規模の破壊を可能とする兵器だ」

「しかし、そんなことが可能なんですか?」

「可能だから言っているんだ。じゃなかったらこんな戯言吐いていない」


 本国に送る文面を作りながら船長は言葉を続ける。


「なんでもブラックホールを疑似暴走状態にして、真の真空への相転移を目的としている兵器だ。相転移が始まったら最後、この宇宙空間すべてを光速で破壊しながら拡大していく」

「そんなの……、誰にも止められないじゃないですか」

「そうだ。だから、これだけは確実に止めなければならない」


 そういって船長が報告書を書き上げる。


「さて、これを送りたいのだが、先ほどの磁気嵐によって通信がしづらい状態にある。よって送信機の出力を上げて送るのだが、場合によっては我々のことを察知されるかもしれない」

「でも、それも仕事なんでしょう?」

「あぁ。死ぬ覚悟は出来たか?」

「ここまで来たら、もう下がれないでしょう。やっちゃってください」


 そういって船長は、送信ボタンを押した。

 その瞬間、情報がギャリオ帝国本土に送信される。

 と同時に、亡命国家の防衛機構が起動。

 数秒もしない内に、サムゲイル1は撃破された。

 しかし、大切な情報と引き換えならば十分だろう。

本日も読んで頂きありがとうございます。

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