第118話 空挺団
モナック星系内部。仮設前線基地が設置されている第4惑星近くに、何者かが侵入してきたのである。
「こんな惑星の近くにワープだなんて、一体何が……」
第599任務部隊の指揮官が状況を確認しようとする。
『対象の正体が判明!ラサイド連邦軍の宇宙空挺団です!』
「なにっ」
宇宙空挺団。文字通り、宇宙空間から目的地に降下する精鋭部隊である。
それが惑星近くにまで接近し、降下しようとしているのだ。
『第599任務部隊!すぐに動けるか!?』
「もちろんだ。すでに何隻かをワープアウトした地点に送り込んだ」
『情報収集は素早く行ってくれ。こちらも情報がほしい』
そういってモナック星系防衛隊は、近くの防衛装置を動かす。
これは、自動で目標を追撃する砲台を、静止衛星軌道上や衛星表面に設置するタイプのものである。
これを動かせば、仮設前線基地くらいは守ることができるだろう。
「しかし、どうやってここまで入ってこられたんだ?」
第599任務部隊の指揮官は疑問を呈する。
「おそらく、超遠距離ワープを使用したのかと」
「宇宙空挺団と言えども、部隊としてはかなり小さいだろう?ワープ機関を持っていないのに、そんなことができるのか?」
「聞いたことがあるのですが、ワープ機能を持たない宇宙船を遠隔でワープさせる技術が開発されているそうです。我が国でも同じような技術が出来上がっているとかいないとか」
「もしそれを使用しているとすれば、可能というわけか……」
しかし、指揮官には一つの疑問が生じる。
「宇宙空挺団が出てくるということは、後方には大規模な艦隊が待っているということではないか?」
地上戦でもそうだが、空挺団が降下した場所の前線には必ずと言っていいほど、大量の部隊が存在している。その場所を制圧した所で、その部隊が前進し、完全に制圧をするのが定石なのである。
となると、この定石に則れば、宇宙空挺団の後ろにはラサイド連邦の大艦隊が差し迫っていると言っても過言ではない。
「とにかく、総司令部に連絡を!ラサイド連邦の空挺団がやってきた事と増援の要請だ」
「しかし指揮官、増援を呼ぶにしても、現状のネットワーク回線では連絡に丸一日を要することになります」
「くそ、こんな時に限って……!」
しかし、今悔やんでも仕方ないのは事実だ。
現状存在する戦力で、宇宙空挺団と後ろに存在するであろう敵艦隊を迎え撃たなければならない。
その時、作戦課からある提案をされる。
「可能であるならば、これを使用してほしいのですが……」
そういって端末を差し出す作戦課課長。
指揮官がそれを受け取って、その内容を確認する。
そこには、ある兵器の存在と、それを使用するという提言が書かれていた。
「……本気で言っているのか?」
「作戦課で考え出されたものですので。現在の戦力では最も大きいものかと思います」
「しかしだな……」
指揮官が難色を示すのも無理はない。
それは、モナック星系に存在する超巨大兵器、「ジ・ラーグの鉄槌」と呼ばれる大砲である。
いつ、誰が、何のために建造したかも分からない古代兵器だ。作戦課の中でも、これを使用するか否かで分かれていた。
現在は、仮設前線基地の部隊と共に来た工兵によって、ある程度復旧している。
「だが、こんな巨大兵器、どうやって運用するというんだ?」
そう。この「ジ・ラーグの鉄槌」、大きさがとんでもなく大きい。
それは、モナック星系の恒星を丸ごと包み込むほどの大きさなのだ。全長205万km、砲の口径が18万kmという、もはや構造物なのかどうかも怪しい塊なのである。そのため、砲の内部に恒星が存在しているという、ダイソン球のような構造をしているのが明らかになっている。
「この兵器……、発想が子供が考えたような絵空事じゃないか」
「しかし、このようなものに縋らないといけない状況なのです」
指揮官は悩む。
「だが、完璧に使えるというわけではないのだろう?」
「いえ、使えることは使えるのですが……」
「何か問題でも?」
「……攻撃力が高すぎるとの事です」
モナック星系を占領したのちに、「ジ・ラーグの鉄槌」を復旧。試射を行った。
その際、出力を1%にまで絞ったのにも関わらず、射線上にあった第7惑星の一部を吹き飛ばしたらしい。
その威力は、工兵曰く「超新星爆発に指向性を持たせたようなもの」だという。
「正直言って、宇宙空挺団に使うには宝の持ち腐れのような気がします」
「だからといって、使わないわけには行かないだろう?」
「えぇ、そうですが、もし使うことになったら、その時は相当な覚悟が必要です」
「相当な覚悟だと?」
「えぇ、それは……」
そこまで言いかけた時、ある情報が入ってくる。
『モナック星系内部に、巨大な空間の歪みを観測!大規模艦隊並みの空間歪曲です!』
「不味いことになった」
指揮官が情報を確認していると、ある報告が飛び込んでくる。
『モナック星系防衛隊指揮官より、「ジ・ラーグの鉄槌」の使用許可の下命を確認!現在、起動作業中!』
それを聞いた時、戦術課の課長が飛んできた。
「指揮官!大変です!」
「どうした?」
「砲撃準備がされている『ジ・ラーグの鉄槌』ですが、モナック星系防衛隊指揮官の階級と権限が、指揮官殿と同等であるため砲撃の許可が必要だと言っています!」
「なんだと!?」
一つの大きな決断が必要になった。
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