第117話 反転
亡命国家艦隊が第599任務部隊の側面に現れ出る。
「まずい!反撃しつつ亡命国家艦隊と反対側に回頭!攻撃を最小限に抑えるんだ!」
「了解!」
第599任務部隊の主砲が、敵である亡命国家艦隊に向けられたころ、亡命国家艦隊からの攻撃がやってくる。
「敵からの攻撃来ます!着弾まで約10秒!」
「総員衝撃に備えろ!」
攻撃の多くは艦艇の間をすり抜けていったが、いくつかは直撃したものもあった。
「被害は!?」
「複数艦艇に外部装甲の歪み発生!航行に支障なし!」
「艦隊第4戦速!ワープの準備もしろ!現宙域を離脱する!」
亡命国家艦隊からの攻撃を食らいながらも、第599任務部隊は進路を反転する。
「指揮官、ワープ先はどうしましょう!?」
「仮設の前線基地があったはずだ。そこまでワープせよ!」
「了解!」
ワープの準備に入っていると、第599任務部隊の後方から再び何かが接近してくる。
「艦隊後方より、正体不明艦出現!」
「今度は一体なんだ!?」
「これは……、ラサイド連邦軍です!」
「くそ!よりにもよってこんな時に!」
しかも、今回のラサイド連邦艦隊の様子が少し違う。
第599任務部隊に接近してきている艦隊は、巨大な艦艇一隻とそれに付随するように複数の巡航艦が群がっている。
その巨大な艦艇は、まさに宇宙における戦艦そのものを象徴するかのように鎮座していた。
「なんだ……、あのバカでかい艦艇は……」
周辺の艦艇から推測するに、全高全幅が最低でも3kmある。
第599任務部隊に所属している巡航艦のうち、最大の艦艇が全長1kmないことを考えると、その大きさは計り知れないだろう。
指揮官は絶えず命令を出す。
「総司令部に連絡!ラサイド連邦への突出作戦は失敗に終わった!現在戦力温存のために後方へ退避中!」
「了解!」
「各艦へ通達!180秒以内に現宙域を離脱!ワープに入る!目的地は仮設前線基地!」
「承知!ワープ目標地点をモナック星系に設定!ワープ回数は3回とする!」
「攻撃はワープ直前まで続行!とにかく隙を与えるな!」
こうして第599任務部隊は、続々とワープを行う。
「旗艦は殿を務める!全艦直ちにワープ!」
その言葉通り、旗艦以外はすべてワープしていった。
「すべての艦が撤退しました!」
「我々もワープするぞ!」
直後、ワープを知らせる警報が鳴り響く。
そして、ワープ直前に攻撃を受けそうになりながらも、ギリギリの所でワープした。
第599任務部隊は、最小限の損害で危機を脱したのである。
そのころ、ラサイド連邦軍艦隊では。
「やはり、この巨大な艦影に圧倒されたか」
「さすがはわが連邦の虎の子である、超重量級宇宙戦艦『ハイトット2世』だな」
「しかし、いささか急ではないかね?」
「何がだ?」
「こういった最後の切り札というものは、最後まで取っておくべきものではないか?」
「しかし、最後を見誤れば敗北は必至。破局は免れぬ」
「だからこそ、最後の切り札があることを敵に知らしめる必要があるのだ」
そのようなことを司令部の人間は言う。
しかし、そこに乗っていた士官は別のことを呟く。
「本当はこいつを出したくて仕方なかったんだろ……」
その小さな声は、彼らに届くことはなかった。
一方、複数回のワープを経て、仮設前線基地であるモナック星系へと退避する。
突然のことで驚いた兵士も多くいるだろう。
そんな兵士のために、第599任務部隊はしばらくモナック星系に駐留することにした。
『作戦遂行、お疲れ様です』
そういうのは、モナック星系防衛隊指揮官である。
「本当に大変だ。亡命国家の艦隊が接近すること自体想定外なのに、ラサイド連邦の超巨大艦艇が出てくるとは聞いてない。本当、どうすれば良かったんだね?」
そんなことをぼやく第599任務部隊指揮官。お互い階級が同じであるがために、会話に花が咲いたようだ。
その通信の様子を、フクオカは遠くから眺める。
「おい、フクオカ。そろそろ会議が始まるぞ」
「あ、うん」
作戦課では、今後の立て直しをするべく、会議が開かれていた。
当然議題は、亡命国家艦隊とラサイド連邦艦隊をどのようにして撃破するか、である。
「現状、戦力は第599任務部隊とモナック星系防衛隊の2個艦隊。一方で敵の戦力は、推定するに亡命国家が2個艦隊、ラサイド連邦が1個艦隊だ。しかし、ラサイド連邦には見たこともない巨大な艦艇が存在している。これを適正に評価しなければ、我々は敗北する」
そういって、先の巨大艦艇の映像がホログラムに映し出される。
その巨大すぎる艦艇は、まさに虎の子というにはふさわしいだろう。
「しかしどうする?これが今ここに来ると敗北は必至だぞ?」
「その前に対策を講じたいのだが、うまくできるか……」
「それよりも、我々が後退したことにより、前線は後退したんだ。これはもはや泥沼化は免れない」
「しかしアレがあるだろ?」
「アレは完全ではないらしい。復旧はさせたらしいが、古代兵器ゆえに扱いは難しいだろう」
あーだこーだ言うものの、解決策は見つからない。
いや、解決方法はある。しかしそれを使うのはハイリスクハイリターンであることは、この場にいる全員が理解していた。
その時である。
『星系内部にて空間の歪みを確認!何者かがワープしてきます!』
この状況で、ワープしてくるものなんて限られてくる。
敵だ。
誰もがそう理解した。
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