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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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113/130

第113話 捜索

 結果としてギャリオ帝国艦隊は敗走することになった。

 名目上は戦術的撤退になるのだが、事実上の敗北だろう。


「……どうする?我々の汚点が増えてしまったぞ」

「どうしようもありません。これは事実として未来永劫残ることになるでしょう」


 ギャリオ帝国艦隊旗艦の艦長が冷静に判断する。


「今はその感情論は抜きにして、今後をどうするか考えないといけませんよ。戦力としては2割減したとは言っても、士気はそれ以上に下がっているはずです。さらに惑星要塞という強大は存在が目の前にいますから、どうしようもない状況です」


 参謀がやや早口で説明する。


「うぅむ。どちらにせよ、苦渋の選択を選択するのは避けられないか……」


 指揮官がそう愚痴をこぼす。


「あの星系を迂回するのはどうかね?」


 指揮官が尋ねる。


「残念ながら、初期観測で周辺宙域にはブラックホールが複数個存在していることを確認しています。天体望遠鏡の観測によって、これらが非常に大きいブラックホールであることは周知の事実です。もし、ウェルン星系を迂回していこうと考えるなら、この危険地帯であるブラックホール群を通り抜ける必要があります。航海課としては推奨しません」


 航海課課長がそう推測する。


「指揮官、これは個人的な意見でありますが、このまま負けたまま撤退することは、私の信条が許しません。あの惑星要塞に一矢報いたい所存です」


 戦闘課課長が進言する。

 これに作戦課も乗っかった。


「それには同意見だ。このまま負けて引き下がるわけにはいかん。しかし、落とせるのか?」

「その回答にお答えすることは出来ません。量子コンピュータによる計算ではあらゆる可能性において、勝率は9.2%と出ています」

「敗北は必至というわけか……」


 指揮官は椅子から立ち上がると、一つ指示を出す。


「本国に、先の要塞戦のことを連絡してくれ。それと同時に、戦略研究所にも連絡を。どんな些細な事でもいい。惑星要塞を攻略できる作戦を探し出してほしい」

「了解、だたちに連絡します」


 通信士が伝えに行く。

 早速、ギャリオ帝国の総司令部を通じて国防省へと連絡が行く。

 戦況について、いくつか言いたいことはあったようだが、今は惑星要塞を攻略する方法を探し出すのが先である。

 戦略研究所に連絡が行くと同時に、国防省と研究所の双方で惑星要塞に関する情報を集めるために書類をひっくり返す作業が始まった。

 とはいっても、ほとんどは電子データ化されているため、特定の言葉を抽出して、それを検索すればいい。

 しかし、どれも惑星要塞が自軍にあった場合を記していて、敵軍にあった場合をほとんど想定していない。

 当然だろう。惑星要塞は、その強固な防御力と引き換えに、莫大な資源を消費する。いくら内部に核融合機関を内臓しているとはいえ、それ単体で支えるのは厳しい。これを言い換えるなら、何世代も前の原子力空母の運用のそれに似ているだろう。

 惑星要塞の資料に関して、ある程度集まったものの、その内容はほとんどが運用に関するノウハウと優位性に関するものばかりであった。

 もちろん、敵軍に惑星要塞があった場合の研究はないわけではないが、それでも数はしれている。

 2週間ほど探したものの、有力なものはなかった。

 国防省と戦略研究所は捜索範囲を広げた。

 実際に惑星要塞を建造した企業から詳細な設計図を一から説明してもらったり、過去に戦略研究所で行った机上演習の結果まで引っ張ってくる。

 それを基に、さらなる惑星要塞の弱点の研究や攻略方法を検討する。

 しかし、この短期間で見つけることは出来ないだろう。

 当然だ。これに限らず、研究というものはどんなものでも等しく長い時間をかけて検証するものなのだから。

 結局、戦略研究所も国防省も答えを見つけることは出来なかった。

 しかし、まだあきらめてはいなかった。

 国防省は軍学校の隅々まで探し、ギャリオ帝国としてはロクシン共和国とミューシャ王国に協力要請を出した。

 両国ともこれを了承し、資料をひっくり返すことになる。

 そんな中、ギャリオ帝国の軍学校でこの話を聞いた教官の一人があることを思い出した。


「そういえば、1,2年前くらいに惑星要塞に関してのシミュレーションをロクシン共和国でやっていたような……」


 その情報をもとに、ギャリオ帝国とロクシン共和国が探してみると、当時フクオカが演習をしていた時のデータが出てきたのだ。

 早速、その演習の模様を確認してみる。

 その内容は、素人なら一度は考えたことがあるような内容であった。


「艦艇1隻を光速の半分の速度で突っ込ませる……。本当にやった奴がいるのか……」

「これは演算処理が追いつかない程の影響が出ているのか……」

「いや、演算には量子コンピュータが使われていたはずだ。もしかしたら量子的重ね合わせが複数発生してエラーが発生したのかもしれない。つまり正しい演算が行われていない可能性がある」

「しかし一考の余地はあるぞ……」


 最終的な採用結果は会議で議論されることになった。

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