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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第112話 目覚め

 惑星要塞周辺の宙域は、ギャリオ帝国優勢の状態になった。


「では、惑星要塞の破壊へといこうではないか」


 そう指揮官が命令する。

 すでに無人艦艇によって、敵の攻撃艇は見るも無残な状態になっていた。


「しかし指揮官。前進するのは構いませんが、惑星要塞が本気を出してきたらどうするんです?」


 艦隊旗艦の艦長が尋ねる。


「艦長、先ほども話したろう。あの惑星要塞はすでに、かつての輝きを失い、没落状態にある。仮に復活を遂げようとも、心臓に病を抱えた老人にすぎん」


 そういって、まるで戦勝祝いのように、ワインをあおる指揮官。

 ギャリオ帝国艦隊はさらに前進をし、惑星要塞まで残り3光秒といったところまで来た。

 その時である。


「指揮官!惑星要塞から高出力の熱反応を探知!内部の核融合機関が始動しています!」

「……機関の出力は算出できるか?」


 旗艦の艦長が尋ねる。


「現在計算中……。出ました、出力140%!」

「なにぃ」


 指揮官は思わず立ち上がってしまう。

 そして、一度冷静になって椅子に座りなおす。


「待て待て。これは風前の灯というやつに違いない。土壇場で出力を上げて、最大の戦力を得ようとしているだけだ。そのうち勝手に自滅するだろう」


 そんな楽観的なシナリオを描く指揮官。


「指揮官、現実を見てください。現に惑星要塞は息を吹き返し、我々に攻撃をせんとしているんです」

「……そんなことは分かっている。しかしだな、畑違いとはいえ、技術者が難しい見解を示しているんだ。これは自滅の予兆にしか見えないのだよ」

「まさか指揮官、ギュルリッターの戦いを忘れたとは言わせませんよ」


 ギュルリッターの戦い。それは、先の第一次銀河戦争にてラサイド公国が唯一勝利した会戦である。

 ロクシン共和国4個艦隊と、ラサイド公国1個艦隊による艦隊戦であった。場所は小惑星の多い星系。

 この会戦で数的有利を確信したロクシン共和国軍は、完全に舐めきった行動を取る。一方、ラサイド公国軍は地の利を活かした戦術を取り、戦場を支配していた。

 この結果、ロクシン共和国艦隊は1個艦隊を失い、敗走することになったのである。

 この戦いを基に、いついかなる時も油断をしてはならないという戦訓が生まれたのだ。

 しかし、これは普通の軍としては必然の結果とも言われている。油断と慢心の結果に起きた惨劇なのだから。

 そのため、現在では言うことを聞かない子供のように、戒めの言葉として軍人の間で使われている。


「しかしだなぁ……」

「しかしも何もありません。今目の前に生きた惑星要塞が存在しているんですよ?最大限の警戒をしなければ……」


 その瞬間、警報が発せられる。


「光学で惑星要塞からの攻撃を確認!到達まであと4秒!」


 そして、艦隊の横を光線が通り過ぎる。

 ギャリオ帝国艦隊に損害が発生した。


「左翼7隻蒸発!」

「21隻に何らかの損害あり」

「陣形再構築!今すぐにだ!」


 その様子に、旗艦の艦長は指揮官に問う。


「指揮官、これでもまだ悠長に構えてられますか?」

「……えぇい、分かった!全艦、散開!無人艦隊は積極的に前に出せ!両極付近に火力を集中させるんだ!」


 やっと本気になってくれたのか、指揮官は指示を出す。

 それに合わせて、艦隊は大きく陣形を変える。


「全艦、一斉射撃!目標は絞らなくていい。撃てーっ!」


 幾万もの光線が宇宙を駆ける。

 十数秒後、惑星要塞に命中するものの、明らかに火力不足である。


「やはり通常火力では敵わないのか……」

「まだだ!ミサイル発射準備!」


 今度はミサイルによる波状攻撃である。

 惑星要塞の砲1門でも折ることが出来れば、こちらに分があるだろう。

 しかし、重厚に作られた砲身は、それ自体が装甲の役割を果たす。

 そのため、ミサイル1本当たった所で何かしら成果が出るわけではない。

 その間にも、惑星要塞からの攻撃は続く。


「クソッ、これでも足りないか……」

「腐っても要塞。これ以上の攻撃は難しいでしょう」

「そういえばアレはどうなっている?」

「アレとは?」

「ほら、アレだ……。対消滅爆弾だ」


 反物質と物質が衝突し、対消滅を起こすことで莫大なエネルギーを取り出す兵器である。

 これを利用することで、どの兵器よりも優れた加害力を得られるというものだ。


「指揮官、それに関しては現在技術的には可能です」

「可能ならばなぜ使わない?」

「技術的に可能というのは、科学者の間では理想的な状態ならできるという意味だそうです」

「……つまり、実戦に出せるほどの物になっていないということか?」

「おっしゃる通りです」


 それを聞いた指揮官は、小さく溜息をつく。


「なら、これ以上の攻撃は出来ないんだな?」

「結論を言えばそうなります」


 その時、士官が指揮官に報告する。


「指揮官!我が艦隊の損耗率が2割を突破しました!」


 2割という数は、艦隊を撤退させる指標の一つだ。

 指揮官はここで、撤退をするかどうかの選択を迫られる。


「指揮官、これ以上の損耗はひたすらに兵を死なせるだけです。とにかく撤退を!」


 参謀が意見具申する。

 指揮官が出した答えは。


「……撤退する!この戦況では勝てない!これ以上の損耗も許される状況ではない!」


 こうして、ギャリオ帝国艦隊は撤退するのであった。

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