第111話 撤退
想定していたよりも多くの艦艇が沈んだギャリオ帝国艦隊。
指揮官はめまいに似た感覚を覚える。
「結局はゲリラ戦法に似た作戦で来ているだけじゃないか……。どこが正規軍の戦いだね?」
「ごもっともです。しかし奴らも消耗戦。じきに攻撃は来なくなるでしょう」
「しかし、惑星要塞と言えば超遠距離からの砲撃というのが定石なのだろうが、そのあたりはどうだ?」
指揮官は観測員に尋ねる。
「現在の所、大きなエネルギー出力といったものは観測されていません。通常なら、熱エネルギーが放出されていてもおかしくはないのですが……」
そう言って観測の範囲を拡大する。
しかし、それでも何かしらの形跡を発見することは出来なかった。
そこで指揮官は思う。
「まさか、奴ら惑星要塞に使用される核融合機関をまともに扱っていないのか?」
惑星要塞は、その大出力のエネルギーをもって周辺宙域を制圧する。
そのためには、心臓たる機関がしっかり動いていないといけない。
現在、惑星要塞で使用される核融合機関は、およそ50年前に技術体系として完成していた。当時でさえ、「何も整備しなくても100年は持つ」と言われる程完成された技術なのだ。
それが、定格出力にも達しないほどの低出力で運用されているのではないかという考えに、ギャリオ帝国艦隊は至ったのである。
「畑違いの技術屋として意見を述べるなら、少なくとも定格出力を超えても超えなくても問題は起きやすいだろうな。特にこういったプラント系の機械は、低出力を維持していても破損や問題が発生する恐れがある。何事もほどほどが一番という事だな」
艦載機の整備を担当している主任からは、そういった意見が出た。
「我々は技術に詳しくないからなんとも言えんが、彼らがそういうのならきっとそうなのだろう」
「しかし、どうして彼らは定格より低い出力で運用していたのでしょう?」
「おそらく隠密行動をしていたのだろう。熱エネルギーが放出されていないのなら、放棄された要塞だと勘違いしていてもおかしくはない」
そう言って、指揮官はわざとらしく咳を入れる。
「だが我々が今すべきことは、惑星要塞の運用状況を確認することではなく、攻略方法を見つけることだ」
「しかし、惑星要塞は現在の軍事学では最強の兵器と称されています。簡単には攻略することは叶わないのでは?」
「それもそうだろう。そこで、我々は一度退却する」
「敵を目前に控えているのに、逃亡なさるということですか?」
「いや、これは戦略的撤退というものだ。幸い、我々の後方には大規模な帝国艦隊があるそうじゃないか。惑星要塞攻略のために艦艇を分けてくれとでも言えば、簡単によこしてくれるだろう」
「相変わらず腹が黒いようで」
「臨機応変な対応ができると言ってくれ」
結局、ギャリオ帝国艦隊は一時後退し、後方にいる正規艦隊と合流することになった。
正規艦隊としても、これ以上の進軍を続けるのであれば、戦力を補充しようと考えていたところらしい。
こうして1週間ほど戦線を離れ、再度ウェルン星系へとギャリオ帝国艦隊はやってきた。
再度やってきた時には、以前の倍以上の艦艇数になっていた。
さらに今回は秘策がある。
「さて、まずはあちらさんに挨拶をしなければな」
「その前に、向こうからやってくるそうですよ」
前回の時と同様に、攻撃艇が惑星要塞から出撃し、ギャリオ帝国艦隊へと向かってきた。
しかし、ここで秘策が登場する。
「さぁゆけ、人工知能の子供たちよ」
ギャリオ帝国の後方支援艦艇から発進したのは、亡命国家の攻撃艇と似たような小型艦艇であった。
これこそ秘策である、無人艦艇による波状攻撃である。
人工知能と称しているが、中身は単純なアルゴリズムの塊だ。
身もふたもない言い方をすれば、ただ大きくしただけの砲撃のできるミサイルである。
通常のミサイルと異なる点を上げるならば、自分で敵味方を認識し、自分で誘導し、攻撃を加える点だろう。そんなの普通のミサイルでもやっているのでは、という疑問もあるだろうが、上層部をだますための方便だとか。
とにかく、攻撃をするために無人艦隊は前進する。
そして攻撃艇と交戦を開始した。
「無人艦隊、なかなか良い成績を出してくれそうですね」
「我々が危惧すべき点は、彼らに我々の仕事をとられるくらいか?」
指揮官は冗談を言ってみせる。
結局無人艦隊と攻撃艇の戦いは、ほぼ互角の状態になった。
ギャリオ帝国艦隊は、ここぞとばかりに突撃を行うことにした。
「敵の惑星要塞が攻撃をせず、小手先の防衛のみを行うのであれば、我々は十分に前進し、存分に暴れまわることが必要だろう」
そういう経緯によって、艦隊は前進を開始した。
前進に気が付いた敵の攻撃艇が、艦隊に対して攻撃を加えようとするものの、残念ながら無人艦隊が邪魔をしてうまく特攻が出来ない。
結果、亡命国家の攻撃艇はギャリオ帝国正規軍の前にひれ伏すことになったのだ。
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