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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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110/130

第110話 要塞

 亡命国家ウェルン星系防衛隊は、迫りくるギャリオ帝国軍に対して戦闘準備に追われていた。


「急げ!奴らはすぐにここまで来るぞ!」

「各攻撃艇は即座に発進せよ!」

「長官、このまま戦闘に入れば、確実に損害が出ます!攻撃艇の出撃を止めてください!」

「馬鹿言え!ここまで入り込まれているのに降伏しろっていうのか!?」

「敵艦隊、星系絶対防衛線を超えました!」

「敵はここまで来ている。今更止められまい!」


 そういって、防衛隊長官は司令室の椅子に座る。


「それに、ここでは新たな戦術を生み出せる可能性がある。我々はそれを見届けねばならん」


 そういって要塞内の通信をONにする。


『諸君!これより敵の艦隊が攻めてくる。しかし!我々は祖国を追いやられた身!万に一つでも引いてはならん!我々の栄光ある公国の復活はすぐそこにある!総員、攻撃準備!』


 すでに攻撃艇は発進している。

 もう戦いは始まっているのだ。

 一方で、ギャリオ帝国艦隊は、惑星要塞の出方をうかがっていた。


「惑星要塞から出撃しているアレは艦艇なのか?」

「名目上は、ですが。過去の資料によりますと、ラサイド公国で研究開発されていた単座攻撃艦艇と呼ばれるものとのことです」

「公国時代の骨董品か?」

「作られた年代は推察することは出来ませんが、設計書を流用したのは間違いないでしょう」


 ギャリ帝国艦隊の指揮官が過去の資料を読む。


「ずいぶんと厄介なのが出てきたな……。まずコンセプトが無茶苦茶だ。なんだ?『一人で攻撃可能な小型艦艇』というのは?」

「文字通りとしかいいようがないでしょう。実際大真面目に研究していたんですから」

「それはそうとして、攻撃方法が書いてないのだが?」

「公国時代では、船体だけ先行研究して、武装は後々考えることにしたのでしょう」

「どう考えても無茶としか言いようがないな……」


 そんなことを話している間に、敵は接近しつつある。


「指揮官、敵の砲撃です」

「攻撃だと?どこから来ている?」

「前方ですね。攻撃艇のようですが、正直主砲の口径が小さすぎてここまで届いてないようです」

「……本当に真面目に研究したのか、甚だ疑問なんだが?」

「言わんとしていることは分かります」

「とにかく応戦だ。雑魚相手なら、赤子の手をひねるより簡単だろう」


 そういって、ギャリオ帝国艦隊は攻撃を開始する。

 しかし、そこに大きな問題があった。


「指揮官、敵の艦艇が小さすぎて、通常の攻撃では当てるどころか避けられています!」

「盲点でしたな。通常の主砲では避けられ、かと言って艦載機用の機銃では撃ち落とせない程度の装甲。唯一効きそうなのがミサイルであるものの、そのミサイルには限りがある」

「これは一本とられたな」


 そう言って、指揮官が3Dホログラムの戦況モニターを見る。


「さて、どうしたものかな……」


 ギャリオ帝国艦隊と攻撃機との距離は10光秒を切っている。

 しかし、ここまでの距離なら、そこまで構えなくても問題はないだろう。

 そう考えていた時だった。

 右翼に展開していた艦艇数隻が爆発する。


「な、何事だ!?」

「現在解析中!」


 観測データをもとに、艦内のローカルコンピュータが結果をはじき出す。


「出ました!敵の攻撃艇による……短距離ワープ攻撃!?」


 報告した士官も驚く結果となった。

 ワープを行う際には、約1光年以上の距離から行うことが推奨されている。それは、ワープの原理に関係しているからだ。

 このワープに関する取り決めは、銀河内に存在するギャリオ帝国、ロクシン共和国、ミューシャ王国、ラサイド連邦、そしてその他の小さな国家にいたるまで、規格によって決められている。

 そのため、亡命国家でもこの規格が浸透しているものだと考えられていた。

 だがしかし。


「どうして10光秒の距離でワープが行えるんだ!」

「分かりません!」


 それもそうだ。

 実は亡命国家では、現在主流のワープ技術を改良して、新たなワープ航法を確立したのである。

 それは、空間を完全に切り離すのではなく、新しく亜空間を生成して空間の波に乗るという方法を編み出していた。仮に名前をつけるとすれば、「亜空間サーフィン航法」と言ったところか。

 しかし、そんなことはつゆ知らず、ギャリオ帝国艦隊は混乱に包まれていた。


「このまま密集していては危険だ!すぐに散開せよ!」

「しかし指揮官!散開してしまったら、惑星要塞に対する攻撃力が半減しますよ!」

「ここで戦力を削がれるわけにはいかない!奴らは特攻まがいのことをしてくる!回避できるうちに回避するしかあるまい!」


 結局、指揮官の指示通りに、艦隊は散開することになった。

 その間にも、ワープによって攻撃艇の攻撃は続く。

 この攻撃艇には、自己防衛用の主砲が2門、爆薬が10tのみという、実に簡素な作りをしている。

 その代わり、機関は100年ほど前から使われる、信頼のおける物を使用していた。

 そのため、足だけは壊れずに特攻することが出来る。

 こうして、合計3000隻以上に及ぶ特攻は、ギャリオ帝国艦隊を1割ほど数を減らすことになった。

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