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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第109話 次

 亡命国家の中心部に向けて前進を続けるギャリオ帝国艦隊。

 銀河の中心まで、残り4万光年ほどの所を進撃中である。


「現在、我が艦隊は亡命国家の本拠地が存在すると推測される場所へ向けて航行中。現在まで目立った軍事行動は見当たらない。本国からの支援もあり、現在の士気は上々である」


 前線を行くギャリオ帝国艦隊の指揮官が、報告を受ける。


「願わくば、このまま敵と遭遇することなく到達することができればいいのだがな……」

「同感です。亡命国家の基本戦術はゲリラ戦闘。我々は常に警戒せねばならず、次第に疲弊していき、最終的には士気が低下することでしょう」

「それだけは回避したい所なのだが……」


 実際、亡命国家は国家としての体制がなっていない部分が多い。

 それもそうだろう。国家と名前がついているが、実態は軍事組織の集まりに過ぎない。

 そのため、組織的な行動が苦手な部分も多い。

 だが、かつてのラサイド公国の残党が作っただけのことはあり、その技術や社会体制は一定の水準を超えている。

 だが、最新の装備を備え、基礎訓練を積んでいる正規軍のロクシン共和国やギャリオ帝国と比べれば、遥かに劣っているだろう。

 そんな彼らが取るべき手段は、突発的なゲリラ戦法に収束するだろう。これなら、敵の警戒心を煽り、心理的に追い詰めることができる。

 もちろん、それを狙ったわけではないものの、結果としてそうなっているだけだ。


「とにかく、我々は早く亡命国家の目的を探らなければならない。そのためにも現状の維持は必須だ」

「もちろんです。そのために総員が全力を尽くしていますから」


 そういって艦隊は前進を続ける。


「指揮官、まもなく次のワープに入ります」

「次のワープ先はどこだったか?」

「ウェルン星系です。十分な調査や測量が行われていない場所ですので、細心の注意を払う必要があります」

「うむ。それで頼む」


 そういって、ワープを開始する。

 艦隊でのワープは、なかなかに壮観だ。しかし反面、それだけ空間を切り貼りすることになるため、意外と危険な行為だったりする。

 そのため、艦隊内でも時間差でワープを行うことが推奨されている。

 まずは艦隊の目を担っている艦が次々とワープを始めた。

 彼らはワープ先が危険な状態かどうかを確かめるための試金石でもある。

 彼らの安全を量子通信によって確認し、それによって旗艦や本隊が続いてワープするという方法だ。

 かくして、最初にワープした艦の安全を確認したギャリオ帝国艦隊は、次々とワープする。

 その中で、観測艦が気になるものを発見した。


「それで、気になるものというのは?」

「これです」


 そういってモニターに画像が映し出される。

 それはウェルン星系に属する惑星のようだ。

 しかし、各種測定結果を重ね合わせると、天然の惑星とは言い難い事実が浮かび上がってくる。

 その観測結果を見た指揮官が口を開く。


「……もしかしなくても、これは惑星要塞ではあるまいか?」

「その認識で間違っていないと思います」

「だが、こんなヘンピな場所で、なんで惑星要塞がある?」

「それは、この地図を見れば分かります」


 そういって、航海長がホログラムの地図を見せる。


「ウェルン星系のエッジワースカイパーベルト天体は、通常の恒星系と比べて質量と数が多いことが、初期調査によって判明しています。そのため、この周辺の航路を通る場合には、恒星ウェルンを通過するほかありません。このように、重要な通り道には軍事施設を置くことは古今東西の常識でしょう」

「なるほど。それを踏襲して、亡命国家が惑星要塞を運用しているということか……」


 それを聞いた指揮官は、あることに気が付く。


「これでは、確実に惑星要塞と戦うことになるじゃないか」

「おっしゃる通りです。これ以上の進軍をするならば、惑星要塞を無力化するほかありません」

「面倒なことになったな……」


 そういって額の汗を拭う。

 その時、観測員がある報告をする。


「指揮官!敵の惑星要塞から何かが発射されている様子です!」

「詳細は分からないか?」

「現在解析中。判明するまで少々お待ちください」


 そう言って、観測員が作業をする。


「……結果出ました。メインモニターに映します」


 モニターに、鮮明な画像が表示される。

 そこには、無数の光が惑星要塞の両極から飛び出している様子が映っていた。


「これは……?」

「おそらく敵の攻撃機でしょうな」


 艦橋にいた戦術長が話す。


「しかし、亡命国家はこれまでゲリラ戦法を多用していたのではないのか?」

「惑星要塞でゲリラ戦法を使うのは愚の骨頂ではないでしょうか?」


 その言葉に、指揮官はムッとしたが、心の中にとどめておいた。


「これは仮定の話ですが、ここは曲がりなにも交通の要所。そのため、ここでは正規軍と同様の戦術を使用しているのでしょう」


 そのように言われれば、確かにそうだろう。ここでゲリラ戦法を使用しても大きな効果を得られない。

 ならば、他の場所の人員を削減してでも、この通路を死守するのが道理だろう。


「とにかく、敵の攻撃機に対応できるように、戦闘配置につけ」


 ここでまた、戦いが始まろうとしていた。

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