第108話 戦果
第599任務部隊に戻ってきたドレイク。
格納庫に入ると、すでに医療班が待ち構えていた。
「大尉!機体の情報から、殺人的な加速をしたことを確認したのですか!?」
「あぁ、確かにした」
「すぐに医務室に入ってください!内臓破裂していてもおかしくありませんよ!?」
「分かった。分かったから手を離してくれ」
そういって、ドレイクと同乗していた中尉は、ストレッチャーに乗せられてそのまま医務室行きとなった。
そこで検査を受けながら、ドレイクは旗艦の艦長から今回の戦果や損害を聞く。
『今回の一連の作戦で我々は機体を51機、艦艇を8隻失った。その代わり、敵は一個艦隊と最大の戦力である超出力レーザー光線砲を失った。割に合うと思うかい?』
「未熟な者がいながらも、敵を殲滅出来た。これは十分だと思いますよ」
CTスキャンを受けながら、状況の確認をする。
『確かにそうだろう。この艦隊には随所に新兵が配属されている。いくら訓練を受けているからといって、即実戦に出せるか心配だったのだよ』
「杞憂に終わって良かったではないですか」
『あぁ。本当にそうで良かったよ』
そういってスキャンの結果が出る。
『ドレイク君は素晴らしい肉体を持っているようだ。あれだけの加速を経験しながらも、内臓には目立った傷がない。同乗していた彼は消化管から出血していたのにな』
「どうも悪運だけは良いようで」
そういってドレイクは検査室を出る。
「しかし、この後すぐに作戦に出せる状況ではないのは事実だ。しばらく医務室で経過観察する必要があるだろう。先生もそう言っている」
「えぇ。悪運が強くても、今回ばかりは命の危険を感じました」
「と言いつつも、ケロッとしている辺り、超人と言わざるを得まい」
そういって、艦長は自分の仕事に戻る。
「ドレイク大尉。先ほど艦長からの説明もあった通り、医務室で経過観察します。2日分の着替えを持って来てください」
「分かりました」
そういって、ドレイクは自室に戻る。
一方で作戦課では、一連の作戦の戦果とその振り返りを行っていた。
「……やはり、今回の作戦で一番問題だったのは、光線砲の自爆における作戦だと思うのだが?」
「確かに。我々作戦課は、戦況に応じた作戦を現場で立案するのが任務。しかし、この作戦だけはかなり無茶をしたと思う」
「損失は艦載機34機。その前に行った光線砲に対する爆撃に比べれば、圧倒的に損失率が高すぎる」
「だが、光線砲に対して爆撃機が接近して作業を行わなければ、これ以上の損失が出ていたかもしれないぞ」
「いや、逃がし弁を破壊した状態だったから、光線砲は定格以下の出力しか出せなかったはずだ。放置あるいは占領という形にしていれば、この損失はなかったのではないか?」
「一理あるな。仮に光線砲を放置していたとしても、ラサイド連邦側としては損しか出ない。ならば占領という形にして、あとは後方の部隊が修理なり解析なりをすれば良かっただろう」
「でも今回の作戦がなかったら、今後も光線砲の無力化、ないしは破壊方法を見いだせなかったかもしれないよ」
「それは時間が経てば分かることだろう。今回はあくまで緊急事態であっただけで……」
このように、お互いが作戦の評価をつけることによって、今後素早く、より合理的な作戦を導き出してくれることだろう。
そんなことを思いながら、作戦課課長はコーヒーをすするのだった。
そんな中、第599任務部隊はさらなる進撃を続けることが、総司令部より通達される。
『戦死者が出ていることは悲しき事であり、今後の行動に注意してほしい所である。しかし、我々も総力戦だ。国境警備以外に回せる艦艇は残り少ない。第599任務部隊には、このまま戦線を押し上げ、ロクシン共和国軍にとっての槍になってもらいたい』
「承知いたしました、元帥殿。しかし、我々は足が早いだけで、攻撃力は並であります。少しばかり心もとないようにも感じる次第であります」
『うむ。それは重々承知している。しかし、ラサイド連邦軍がいつまでも艦艇の壁を作っているとは思えないだろう。それを突破するためにも、諸兄らには一層奮起してもらいたい』
「はっ」
そういってタキオン通信は切れる。
「総司令部も無茶を言ってくるな」
そう艦隊指揮官が嘆く。
「仕方ありませんよ。あちらも無茶を承知で命令を下しているのですから」
「そうかもしれないがなぁ……。もし、この突出作戦が失敗すれば、我々は敵地にて包囲されるという悪魔のような経験をするだろう」
「そうなれば、我々自慢の足を使うほかないでしょうな」
「……それもそうかもしれないな」
そんなことを言いつつも、指揮官たちは自分の持ち場へと戻っていく。
結局、第599任務部隊は戦線を突出させるべく、全速力で銀河内を走ることになる。
もし包囲されるようなことがあった場合、それは第599任務部隊の壊滅を意味するだろう。
第599任務部隊の指揮官は、そうならないことを祈りつつ、艦隊を進めるのであった。
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