第106話 白兵
最上階に向かったドレイクは、中央制御室へとたどり着く。
「ここが中央制御室ねぇ……」
警備もおらず、完全に放棄状態になっている。
「軍施設としてどうなんだ?」
そう言って中に入る。
しかし、直後に後ろから何かを突きつけられる。
『そこまでだ』
「おや、先客がいたのか」
『ラサイド連邦軍ティツナ星系防衛軍司令長官のジェアだ。よく覚えておけ』
「ほう、司令長官直々にお相手していただけるとは、なんとも光栄だ」
『なんとでも言え。貴様は今、完全に包囲されている』
そういうと、他にも多数の兵士が出てくる。
「確かに包囲はされているようだ。しかしよく見てみれば、銃もまともに握ったことのない民間人だらけじゃないか」
『これでも愛国心のあるほうだよ。軍人ながら、星を守る気もない連中が我が軍には多くてな』
そういって、兵士がジリジリと滲みよってくる。
「だが、彼らはとても困惑しているようにも見えるぞ?緊張しているんじゃないのか?」
『初めて人を殺す時は、それは緊張するものだろう?ドレイク大尉よ』
「名前を知っているようで何より。それで、私はどうなるのかな?」
『もちろん、我が軍の捕虜として扱う。と思ったのだが、残念ながら宇宙空間に遺棄しなくてはならなくなってね』
「そうか。それは残念だ」
次の瞬間、ドレイクは持っていた拳銃を、脇腹の横から後ろに向かって撃った。
それにより、ジェアの腹に弾丸が命中する。
『グアッ!お、応戦しろ!』
ジェアは倒れこんだものの、周りにいた兵士が一斉に襲い掛かってくる。
しかし、実態は武装した民間人。統率がなっていない。
「まったく。これだから民間人は嫌いなんだ」
そう言ってドレイクは、床を思いっきり蹴る。
そして同時に、前方から接近してくる兵士の肩をつかんで、そのまま飛び越えてしまった。
超出力レーザー光線砲は、当然ながらラサイド連邦の所有する兵器である。
それと同時に、超出力レーザー光線砲のあらゆる規格は、ラサイド連邦首都星に基準が定められている。
使用されているネジの規格、公用語、そして重力までもだ。
ラサイド連邦の重力は、0.7G程度である。一方でロクシン共和国の重力は1.1G程度であるため、ドレイクにとっては身軽な環境である。
つまり、ドレイクにしてみればパルクールを行うが如く、超人的な動きができるのだ。
『クソ、撃て撃て!』
兵士は小銃を使って応戦する。しかしドレイクは、身をかがめてなるべく壁や手すりに近い所を走る。
重力が小さい惑星での映像を見たことはあるだろうか?
重力が小さいと、その分だけ動きが緩慢になる。
すると、フワフワとした挙動になるだろう。
ロクシン共和国の人間にしてみれば、その挙動は狙われやすい。
ならば、壁や手すりを使って俊敏に動き続けたほうが、狙われにくいであろう。
『逃がすな!』
兵士が銃を撃ちまくる。
しかし狙いが甘いのか、それともドレイクの動きが俊敏なのか、命中する様子はない。
ドレイクが物陰に入ろうとした瞬間、ドレイクの動きが止まる。
そのタイミングで、ドレイクは拳銃で兵士を狙う。
「恨むなよ」
その一言を残して、ドレイクは拳銃を撃つ。
その銃弾は、兵士の腹部や足、そして脳天に命中する。
ドレイクは再び狙われる前に、物陰へと飛び込んだ。
『奴は一人だ!絶対に逃がすな!』
ジェアが命令する。
しかし、先ほどのドレイクの攻撃でビビったのだろう。兵士は誰も動こうとはしない。
『貴様ら、それでも連邦市民か!?』
腹を押さえながら、ジェアは一人の兵士をドレイクのいる物陰のほうに押す。
兵士は仕方なく、そちらのほうへと行く。
そして物陰を見る。
しかし、そこにはドレイクの姿はなかった。
兵士が物陰に入って確かめようとすると、上から何かがやってくる。
叫び声を上げる暇もなく現れたのは、ドレイクであった。
「いいか?助かりたかったら、あの司令長官を殺せ。いいな?」
兵士の口を塞いだ状態で、耳元でささやくドレイク。
兵士はいうことを聞く他なかった。
兵士が物陰から出てくる。
『どうした?奴はどこ行った?』
そうジェアが聞く。
その瞬間、兵士はジェアに向かって銃を乱射した。
それにより、ラサイド連邦側は混乱に陥った。
他の兵士も負傷し、床に伏せる。
ジェア本人は、太ももに弾丸を受け、膝まづいてしまう。
その混乱を、ドレイクは見逃さなかった。
壁を伝って俊敏に動き回ると、腰からナイフを取り出し、そのままジェアの首を狙う。
『このっ……!』
しかし、ジェアもただではやられない。
小銃を盾にして、そのままナイフをやり過ごす。
だが、一瞬通り過ぎる間際に、ドレイクはあるものを構えていた。
拳銃である。
『へ?』
「残念だったな」
そう言って、ドレイクはそのまま拳銃の引き金を引く。
弾丸はそのまま、ジェアの眉間に向かって飛び、そして命中する。
血が無残に床に飛び散った。
その様子を見ていた兵士たちは、そのまま及び腰になってしまう。
「逃げるならさっさとしろ。でなければ、この兵器とともに宇宙に散ることになるぞ」
ドレイクは兵士たちを脅す。
真っ先に逃げる者や、最後まで抵抗しようとするが結局逃げる者。
最終的には、中央制御室にはドレイクと死体だけになった。
「さて、本来の仕事をするか」
そういって、ドレイクは制御装置を見る。
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