第102話 朝令暮改
そのまま第599任務部隊は第7惑星重力圏にいるラサイド連邦軍の艦隊に攻撃を開始する。
「目標までの距離、9500万km!」
「船体スタビライザー起動!近距離砲撃戦準備!」
「主砲、諸元入力完了!攻撃準備ヨシ!」
「攻撃開始!」
主砲が斉射される。
数百にも上るビームが、ラサイド連邦軍艦隊に襲い掛かる。
しかし、当然のごとくラサイド連邦軍艦隊も、攻撃を開始した。
攻撃が届くまでに、10分ほど時間のかかる距離だ。着弾観測なんてしていられない。
そのために、艦内量子演算コンピュータがある。
これまでの目標の運動を観測して、現在の位置を特定する。さらに、攻撃が届く時の目標の位置まで表示する。
もちろん、それらは確率で表示されているため、攻撃もそれだけ分散して行うことになる。
当然、目標が突然方向転換なんぞ始めたら、修正を加えないといけないのだ。
それでも、艦内量子演算コンピュータは高い精度で目標の位置を特定する。宇宙を戦場にするには必須と言っても過言ではない一品なのだ。
「着弾まで残り1分!」
予測された地点に、砲撃が着弾するまでもうすぐである。
当然のごとく、着弾の瞬間は距離の関係上、すぐには分からない。それを知るには10分ほどの時間を要する。
しかし、先述した通り、着弾観測なんてしていたらいつの間にか敵の攻撃が飛んできていた、なんてこともあり得るだろう。
少しでも遠くから攻撃する。そのために着弾観測に依存しない戦闘が模索されてきたのだ。
「目標に着弾!攻撃続行します!」
「いや待て!目標の進路変更!奴ら超出力レーザー光線砲を盾にしようとしている!」
「くそっ、ブラックホールには攻撃できないとでも踏んでいるのか!?」
「指揮官、ここは衛星での重力ターンが終わるまで攻撃を中止するのはいかがでしょう?」
「むやみに攻撃しても無駄ならそうするほかあるまい……。攻撃を中断せよ!」
「攻撃中止!繰り返す、攻撃中止!」
第599任務部隊は、しばらく慣性航行で移動する。
はずだった。
突如として艦内にアラームが鳴り響く。
「どうした!?」
「船体表面の装甲が異常な発熱をしています!」
「観測機器に影響発生!観測に支障をきたしています!」
「方向からして、ラサイド連邦艦隊からです!」
「一体なにが……!?」
指揮官が困惑する。
そこに声をかける人間が一人。
「おそらく、超出力レーザー光線砲の影響でしょうな」
「ドレイク大尉!一体どういうことだ?」
「我々は超出力レーザー光線砲の逃がし弁を破壊したことで、砲撃に回すエネルギーを減少させることに成功しました。しかし、ラサイド連邦はエネルギーが十分出ない状態にも関わらず、砲撃をしてきているのでしょう」
「まるでなぶり殺しされているようだな」
「そうかもしれません。しかし対処は単純です。今の軌道から外れれば、それ以上の攻撃はしてこないでしょう」
「なるほど。よし、軌道変更だ!」
そう指揮官から指示が飛ぶ。
「しかし指揮官。今から軌道変更となると、以降の作戦行動に支障が……」
「む、それもそうか……」
指揮官は悩んでしまう。
しかし、実際には悩んでいる時間なんてない。現在進行形で、第599任務部隊には相当の熱エネルギーが集中している。
と、その時だ。
超出力レーザー光線砲の照射が止んだのである。
「攻撃が止んだ……?」
「なんだ急に?」
「何が起きたんだ?」
艦橋は混乱の渦でいっぱいになる。
その原因は、復旧したレーダーによって明らかとなった。
「超出力レーザー光線砲が……回転しています!」
「回転だと?」
「おそらく、我々が爆撃をしたことによって、静止状態だった砲塔のバランスが崩れ、勝手に回転を始めたのでしょう」
ドレイクが冷静に分析する。
「なるほど……。そういうこともあり得るんだな……」
状況を飲み込んだ指揮官は、次の命令を下す。
「ならば超出力レーザー光線砲を破壊するチャンスだ!主砲攻撃用意!」
「砲撃準備!急げ!」
そして砲撃の準備が整う。
「攻撃開始!」
主砲からレーザーが発射される。
当然、数分ほどの時間を要して、攻撃が命中した。
「……ダメです!光線砲を防御するように外部装甲が点在!我々の攻撃では歯が立ちません!」
「外部装甲だと?爆撃時にはなかったようだが……?」
「おそらく、現場の思い付きで、艦艇に使用されている装甲を流用したのでしょう。敵の数を考えれば、超出力レーザー光線砲を防御するだけの外付け装甲が集まりますからね」
「小癪な真似を……」
指揮官は握りこぶしを作る。
しかし、ここで怒りをあらわにしても、何も解決しない。
指揮官は気持ちを入れ替えて、直ちに命令を下す。
「作戦課、いるか!?」
「はい。ここに」
「衛星にて重力ターンを行うまでに、超出力レーザー光線砲を無力化する方法を考えろ」
「しかし、それならラサイド連邦軍を直接叩いたほうが早いのでは?」
「う、それもそうだが……」
指揮官はしばらく考えた後、答えを出す。
「やはり先にレーザー光線砲を無力化する。作戦を立案してくれ」
「承知いたしました」
そういって作戦課の課長は、戦術室に入る。
「話は聞いていたな。いささか不本意だが、今すぐ作戦を立案してくれ」
「了解!」
すぐさまフクオカたちは動き出した。
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