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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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101/130

第101話 壁

 投下された爆弾が超出力レーザー光線砲に命中しようとした。

 その瞬間である。

 着弾まで数秒といったところで、爆弾が爆発した。


『命中か?』

『いや、着弾まで2.7秒だった。何かに迎撃された模様』

「面倒なこっちゃな」


 そうドレイクが言う。

 その時、通信機に何かの音声が入る。


『……防衛成功!繰り返す!防衛成功!』


 どうやら、ラサイド連邦の兵士が暗号通信を介さずに、全周波数による通信をしているようだ。


『向こうさん、えらい盛り上がってますよ』

「仕方ないだろう。ただでさえ貧弱な装備をしているんだ。迎撃が成功すれば誰だって喜ぶさ」


 ドレイクが味方を慰める。


「だが、ただで転ぶようなロクシン共和国ではない」


 すると、ラサイド連邦側が何かに気が付いたようだ。


『なんだ……レーダーの様子がおかしい!』

『か、壁だ!前方の宙域に壁が出現!』


 その壁は、まるで傘のように、超出力レーザー光線砲を覆いつくさんとしていた。


『我々の作戦は成功のようですね、大尉』

「あぁ」


 そう、爆撃隊が投下した爆弾は、レーダーを攪乱するためのチャフが入っていたものであった。

 通常、チャフはレーダーなどの電磁波を反射して自分の居場所を分からなくするのが目的である。しかし、今回ドレイクたちが使用したのは、対艦隊攪乱兵器として開発された、チャフを目いっぱいに詰め込んだチャフ弾であった。

 チャフ弾が迎撃されれば、内部に詰まったチャフが辺り一帯を覆いつくし、レーダーを攪乱させる。仮に迎撃されなかったとしても、相対速度が大きい場合はそのまま質量兵器として使用できるという利点があるのだ。

 そして、本命の爆弾はというと、すでにドレイクの手によって投下されていた。

 この爆弾は、チャフが反射しにくい周波数の電波を使用して誘導される。さらに、アクティブレーダーホーミングのため、爆弾自ら目的の場所に飛んでいく。

 そのため、壁に隠れながら至近距離までその存在を認知されることはない。


『着弾まで、あと10秒!』


 その時にはチャフの壁を突破しているが、ラサイド連邦の対応は完全に遅れた。

 これにより、超出力レーザー光線砲の逃がし弁に、爆弾が接近する。


『着弾、今!』


 その瞬間、超出力レーザー光線砲の外殻から光のようなものがあふれ出す。

 いや、ドレイクたちは光の速さでも数分の場所にいるため、着弾の瞬間はそれだけ遅れることになるが。

 しかし光学装置によって、逃がし弁そのもの、もしくはその周辺を破壊することに成功したことが分かった。

 さらに、周辺にあった他の逃がし弁も、連鎖的に爆発していく。


『爆撃成功!』

『よっしゃ!』

「……ま、ここまで規定路線か」


 そういって、ドレイクたち爆撃隊は、第599任務部隊へと戻っていく。

 第599任務部隊の旗艦でも、破壊の情報は届いていた。


「そうか。これで一つ、問題が解決したということか」

「作戦の内容が少し変更になりましたが、これ以降は作戦通りになります」

「うむ。その通りに進めてくれ」

「了解」


 指揮官は安心したように、椅子に座る。

 しかし、まだまだこれからである。

 一番の問題であった超出力レーザー光線砲を無力化したに過ぎない。

 光線砲の周りには、まだラサイド連邦軍がいる。これらを排除しなければ、この星系を占領したことにならないだろう。

 そんな指揮官の考えとともに、第599任務部隊は作戦を続行する。


「艦隊、現在の速度を維持」

「各艦、爆撃隊を収容したのち、減速を開始。第7惑星衛星にて重力ターンを行う」

「爆撃隊を光学で観測。レーダーの視界に入り次第、各艦は格納準備に入れ」


 こうしている間にも、超出力レーザー光線砲にジワジワと接近していく。


「爆撃隊の収容、完了しました」

「各艦、減速行動に移ります」

「ラサイド連邦艦隊を光学で捕捉、光速度補正プログラムにて観測中」

「指揮官、いつでも攻撃可能です」

「分かった。全艦、ラサイド連邦艦隊に向けて攻撃開始!」

「全艦攻撃開始」

「主砲、うちーかたーはじめ!」


 第599任務部隊が主砲を発射する。

 それは、光の束となってラサイド連邦軍へと降り注ぐ。


 しかし、さすがに遠すぎたのか、主砲の光線が減衰してまともに攻撃できていない。


「指揮官、さすがに遠すぎましたね」

「牽制にはなるだろう。ミサイル攻撃の準備を急がせろ」

「了解」


 ミサイルの残弾を撃ち尽くすつもりで準備が進められる。

 兵站担当の連絡要員は、面倒な仕事が増えたと不満そうな顔をしているが。

 それは置いといて、ミサイル攻撃が着々と進められる。


「ミサイル発射準備完了」

「ミサイル発射」


 第599任務部隊から数多のミサイルが発射される。

 そしてそれは、約1時間ほどかけてラサイド連邦軍に降り注いだ。

 ラサイド連邦軍は、対小型飛翔物体機銃の弾幕で回避しようとするものの、身軽で高機動なミサイルには手出しできない。

 さらにミサイル誘導システムも、簡単な攻撃程度なら宙域を縦横無尽に移動して攻撃を避ける。

 そのため、鈍重な動きしかできないラサイド連邦軍の艦艇は、簡単にミサイルを食らっていく。

 そして第599任務部隊は、第7惑星衛星の重力圏へと突入する。

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