家
俺が防具屋から荷物を運び終えた頃にジェスロが戻ってきた。相変わらずガーディアンを着たままで顔は見えない。
「その腕」
「はい?あぁ、ちょっとでかいですけど意外と便利ですよ?右手と殆ど変わりませんし」
今装着している多目的擬態義肢は蜥蜴の肌みたいにざらざらしていて右手に比べると少し大きいがそういうところを気にしなければ普通の手と何ら変わりない。
「ならいい」
そう言って俺の後ろにある箱の山を見るとため息をついた。
「家の前に運べばよかっただろ」
「……そうでした」
と、なんやかんやあったがベベの作業が終わる昼前になった。
「昨日は何にも無かったなぁ」
「突然なんだ?」
「何でもないです」
俺とルイスは車の中で寝っ転がりジェスロは熱心に手帳に何かを書き込んでいる、俺の独り言が思ったより大きかったのか不機嫌そうに文句を言ってくる。
「べべはまだ準備が終わらないのでしょうか?」
「そろそろだと思うぜ」
「何の根拠が」
唐突に車のドアがノックされルイスがドアを開けに行く。開かれたドアの向こう側にべべが仁王立ちしている。
「一階は終わったぞ、次は二階と地下どっちやる?」
「あー、とりあえず荷物運び込んでから決めましょう」
「さっさと終わらせるぞ」
家の中に運び込んだ箱を開けて中身を適切な場所に置いていく、服のハンガー、部屋は二階だから戻す、歯磨き、一階奥に洗面台が有ったからそこに置く、ダンベル、戻す。といった感じだった。
「大体終わったか?」
「少なくとも車から箱は消えましたね」
「じゃあまた寝てて良いよな」
「ばか野郎、いい加減補給と修理だパイルも何本か使ったし無力化用の毒もない、装甲も削れてる」
「分かったって、リーシャまた後でな」
そうして二人とも隣の防具屋に行ってしまった、まあ俺の時はガーディアンだけ預けたし直ぐに戻ってくるだろう。
「それで二階?それとも地下?」
「寝室って二階でしたよね」
「そうだよ」
「じゃあ二階で」
「はいよー」
そう言ったバタバタと二階に道具箱を持って駆け上がって行くが一度だけ振り向き。
「絶対上がってくるなよ?」
とだけ言って上っていってしまった、俺はフラグをわざわざ回収するような男(女)じゃないので一階のリビングで寛いでいることにする。
しかしさっきも寝転んでいたので同じことをするのもつまらない、何か小道具がないか箱の中をもう一度漁り始める。
「お?チェスか?」
白黒のチェック柄の板に知らない形ではあるもののこれまた白黒な駒達、俺の知ってるチェスとは違うかも知れないがこれで十分代用出来るだろう。
「久しぶりだなぁ、一人チェス、意外とムズいんだよね」
両手を使ってゆっくりとチェス盤に駒を配置していく、半分ほど余ったので予備として箱に積め直しチェス盤の前に座る。
「訓練ばかりじゃなくてこういうこともすれば良かったな」
一号達のことを頭に思い浮かべ黙々と手を進めていく。まだそんなに経ってないが振り返ってみれば想像を絶する様な体験だった。
「慣れない体でよくまああそこまで動けたもんだ」
始めに蜘蛛と戦って次はゴブリンの追跡者からスライムの奇襲、内臓がはみ出て死ぬほど驚いた。塔まで着けてなかったらゴブリンに追い付かれてどんな目にあっていたことやら。
「あれから気にしてなかったけど、あのゴブリン普通に撃ってたんだよなぁ銃」
球型の弾丸だったからこのガーディアンなら防げるだろうが生身なら俺ではまず勝てなかっただろう。一号と出会ったのはゴブリンの追跡者から逃げて直ぐだった、あれも俺がただの人間なら一瞬で斬り殺されて終わっただろう。
「なんで一号は俺のこと殺さなかったんだろ?」
それからあの階層でずっと生活してたら俺の部屋を用意して貰った、いろんながらくたを集めていたが今も俺の部屋は残っているのだろうか?




