閑話4:勇者2
剣と剣がぶつかり合い火花を散らす。両方とも真剣だが片方は片刃でもう片方は両刃だった。
二度、三度と剣を交え時折蹴りや盾による打撃が繰り出される。
場所は王国の名を冠する中央都市パールヴァティにある王城の兵舎にある訓練場。その中央で二人の男を囲むように人集りが出来ていた。
「上、斜め下、盾、突き」
「くそっ、なんでっ!当たんねぇんだ!」
「なにやってんだ!ちゃんと当てろ!」
「十二番隊の意地を見せろ!」
攻撃を避け続けどう方向から何が来るのか、それを全て言い当てそれを最小限の動きだけで対処していた。まるで最初から全て見えているかのように。
それでいてただ回避するだけでなくわざわざ体勢を崩しやすいタイミングで一撃を入れて着実に体力を削っていった。
「ぐぇっ」
「あぁ、こりゃだめだな」
結局男は一撃も入れること無く体勢を崩され刃の無い方の刀身で殴られ倒れた、そこから起き上がろうとしたが首に剣を向けられ動けなくなる。
「それまで!」
終わりの合図である掛声をしてもう一人の男は片刃の剣を鞘に納め数歩下がり礼をしてから何処かへ歩いていった。
「くっそ、これで俺達は何敗目だ?」
「確かー一二……三十五回?」
「全く、体力が回復次第直ぐに訓練再開だ」
◇ ◆ ◇
訓練場を去り城にある自室に向かっているのは地球からこの世界へ召喚された勇者、月城 蓮翔だ。
「くそっ」
誰も居ない石造りの廊下で唐突に月城は壁を殴り呟く、それもその筈。月城はこの世界に来てから1ヶ月もの時間が経過したというのに灰冬は未だに健在で外へ出るのを妨害しているのだ。
無理矢理でも勇者として召喚された者として責務がある、それを果たさないのであれば月城は檻に寝転がる手なづけなられた猛獣でしかない。
「既にやれることは尽くした、後は……待つだけだというのに」
兵士や騎士と戦いレベルを上げ、勇者部隊の訓練、改造も大半が終わり城と城下町に密偵を紛れさせ拠点を作り裏社会にも介入を始めた。
しかし一向に灰冬は静まる気配を見せずドームの外側で激しく吹き荒れている。
「勇者様!」
「……エスカ、身体は異常ないか?」
「はい!何時でも魔人をバラバラにしてやります!」
廊下の向こうからやって来たのは少女の声を発する異形の人間だ。身体は少女だがその四肢は常人の倍もの長さがあり威圧的な鋭い金属で出来ていた。
二人は話をしながら歩き始める。
「グラウザムたちの様子は?」
「みんな健康そのものです、でもグラウザムはまだあの口で食べるのに慣れてないみたいでよく溢してます」
「そうか、確かにあの頭じゃな、しかしそれには慣れてもらうしかない、武具の配備はどうだ」
「八割は既に完了し、残りは鍛冶待ちです」
地球を技術を吸収して魔法を加えた影響か鍛冶の速度は恐ろしく早い、直ぐに残りの二割も終わることだろう。
「よし、遠征の準備を」
「おお、勇者様!ここに居られましたか」
曲がり角からいつぞやを王宮魔導師が現れた、月城は記憶をたどり名前を思い出して舌打ちをする、彼の名はオスクロ、月城はをこの世界に召喚した張本人だ。
「何のようだ」
「あまり邪険に扱わないでくだされ、今日はとある貴族からの要請を伝えに来たのです」
「……はぁ、聞こう」
「おお、ありがとうございます、しかしここで話すのは少々問題が」
「エスカ、私の部屋に行き準備をしておけ」
「わかりました!」
それから暫くして城の上層にある月城の部屋に集まった、月城とオスクロは椅子に腰掛けエスカは二人に茶を出した。
「では依頼の話を、今回勇者様に出動を要請したのはアルチバルト公爵で内容は一人娘の捜索だそうだ」
「たしか、南の領地の管理者だったな」
「その通りです、そして公爵は一人娘を何よりも大事にしておられましてな、最も信頼でき最も強い兵士を護衛につけたのにも関わらずお戻りにならないそうです」
「そこで私を使うわけか、良いだろう、エスカはグラウザムと共に準備しろ」
「了解!」




