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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 今まで交流のあった帝国の皆様に別れを告げに行くと、沢山の感謝の言葉をいただきました。


 中には私の手を握って涙ぐむ方までおられて、私も感慨深くなりました。


「また会いましょう」


「お世話になりました」


 そんな言葉を背に飛行艇は飛び立ちました。


 ◇


 久しぶりのカーハインドは相変わらず活気に満ちていて、飛行艇を見つけた多くの民が私たちの帰郷を喜んでくれました。


 思えばこんなに長くカーハインドを離れたのは、初めてかもしれません。


 私たちを出迎えるため領主邸の前に集まった民の中に、孤児院の子供たちを見つけ、私は顔を綻ばせました。


 他領からやってきた子たちが、見違えるように逞しい姿になっていたからです。


 彼らの目にはもう、怯えの色は見えません。


 私が居ない間も皆で彼らをサポートしてくれていたのでしょう。そう思うと感謝の気持ちが溢れてきます。


 カーハインドが皆にとって、もっと住みやすい領地になるように頑張ろう。より一層そう思いました。


 ーー


「ローラ! お帰り!

 ちょっと痩せた? やっぱり大変だったんだね……」


 領主邸に入ると、アルフお兄様が待ち構えていらっしゃいました。


「アルフお兄様! ただいま戻りました。

 いいえ。お兄様の魔道具のおかげで、被災地でも快適に過ごせましたわ」


「ほんと? それなら良かった」


「いくつかはマルクお兄様にもお渡ししたのですけど、あれって増産できます?」


「ん? どれのこと?」


「あの――」


「ふーん……オッケー! やってみるよ」


「よろしくお願いします」


 私がアルフお兄様とこそこそと話していると、急に背後から影が差しました。


「ところでアルフレート。ハイリンヒお兄様に迎えの言葉はないのかい?」


 驚いて振り返ると、ハイリお兄様が私のすぐ後ろに立ちアルフお兄様を覗き込まれていました。


「うわぁっ! ……ハイリンヒ兄様、お帰りなさいませ。お元気なようで何よりです」


「いいやあ、私にはアルフレートからの差し入れがなかったからねえ。被災地で過ごすのは大変だったなあ」


 慌てて挨拶をされるアルフお兄様に、わざとらしく眉を下げて答えられたハイリお兄様。


「それはー……申し訳ありません」


「いいやいいや、いいんだよ。

 ただローラに渡した魔道具のレポート、もちろん出来てるよね? あとで部屋に持って来てね」


「……!」


 口を開けて固まるアルフお兄様の頭に笑顔で手を一つ置くと、ハイリお兄様は颯爽と去って行かれました。


 ハイリお兄様の後ろ姿を、何も言えずに見送る私たち。


 しばらくして、


「僕、研究室に戻るよ……」


 それだけ言い残すと、アルフお兄様もとぼとぼと去って行かれました。


 頑張ってください。アルフお兄様。


 私は心の中でエールを送ることしかできませんでした……


 ◇


 翌日、早々に領地会議が開かれました。


 緊急性の高い報告は通信機で受けていましたが、それ以外の細々としたものや、直接顔を合わせて意見を聞くべき案件もありますからね。


 また、帝国との一件についても、当事者である私たちの口から改めて説明しなければなりません。


 気になる報告としては、遂にカーハインド産の熟成酒が王都に流れ始めたことでしょうか。


 まだカーハインドへの直接的な接触はありませんが、今後の動きに気を配る必要がありますね。


 喜ばしい報告としては、ヒエやアワの種を融通した領地のいくつかから、商会を通して「仕事があるならば回して欲しい」と要望が届いたことです。


 こちらから無理に踏み込むことはできませんでしたが、向こうから関わろうとしてくれるのであれば、支援の幅も広がるでしょう。


 早速カーハインドで手が回らなくなっている、糸紡ぎやコルクの製造を他領に任せているようです。


 これで周辺地域が少しでも潤うと良いのですが……。



 それから気になっていた流民の問題にも進展がありました。


 カーハインドには、今も途切れることなく流民がやって来ます。


 カーハインドは立地柄、一度に大勢の流民が押し寄せるようなことはありません。しかしその数は着実に増え続けており、領民と流民の間で揉め事が起きることも増えていました。


 そこで以前、私たちは検疫も兼ねて、新たな流民は一定期間隔離することに決めたのです。


 隔離期間中にカーハインドの法や慣習を説明し、遵守を約束した者のみ入領を認める。

 また、入領後であっても悪質な法令違反があった場合は領外退去を命じるなど、取り締まりも強化しました。


 さらに、すでに領内にいる流民についても集会を開き、改めて法や慣習の周知を行うなど、この問題の解決に向けて様々な対策をとってきました。


 これにより領内の治安が悪化する事態は防げました。


 しかし、育った環境や価値観の違いから生じるすれ違いまでは防ぎきれません。


 この問題は時間が解決してくれるのを待つしかない―― 以前の会議では、そう結論づけていました。


 ところが、なんと子供たちが両者の溝を埋めてくれたというのです。


 そのきっかけとなったのが、教育でした。


 流民の子にも教育を推奨し、領内の子と共に教会や礼拝堂で学ぶ環境を整えていたことで、子供たちは自然と交流を深めていったそうです。


 大人たちが距離を測りかねている間にも、先入観に囚われることの少ない子供たちは、あっという間に打ち解けていったといいます。


 やがて、その繋がりは双方の家庭にも広がり、子供を通じて領民と流民が顔を合わせる機会も増えていったそうです。


 その結果、両者の隔たりは少しずつ薄れ、互いを理解しようとする空気が生まれ始めているというのです。


 子供たちが大きくなった時を見据えて始めた教育が、親世代にまで効果を発揮してくれるとは、嬉しい誤算でした。



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