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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 王太子殿下一向を乗せた小型飛行艇は、予定通り地方視察に飛び立ちました。


 やはり地方にも、支援が必要な領地が少なからずあったようで、「視察をしておいて良かった」とレオ様がおっしゃっていました。


 視察部隊は、時折帝都に戻っては部隊の入れ替えと物資の積み込みを行い、また飛び立つ。


 そのサイクルを繰り返しながら、今のところ大きな問題なく支援活動を続けているようです。


 また聖王国の間者の炙り出しも進んでいるそうで、怪しい者を何人か国外退去にしたと聞きました。


 ただ、残念ながらまだ瓶に付着していた指紋を持つ者は見つかっていません。


 しかし、兵の巡回を増やし怪しい者には声を掛ける。


 それを徹底したおかげでしょうか。

 現在のところ新たな被害は出ていません。


 このまま何事も起こらないことを願うばかりです。


 一方で、帝国のポーションは、ロルフのレシピが採用される方向で実証実験が進められています。


 カーハインドへの技術提供の対価の他に、ロルフには個人としても帝国から報奨金がいただけるようです。


 しかしロルフは「お金よりも珍しい植物が欲しい」と、帝国の役人を驚かせていました。


 結局、報奨金はそのまま、植物は支援部隊の入れ替えの際にロルフが飛行艇に同乗して、自ら集めに行くことで話がついたようです。


 ロルフが何を珍しいと思うかなど、帝国側からはわかりませんからね。


 ときに帝都の物資が不足して、カーハインドから急遽運び込むようなことはありましたが、おおむね落ち着いた日々を過ごしていたそんなある日。


 陛下から私とハイリお兄様にお声が掛かりました。


 ◇


「今日来てもらったのは他でもない。

 ポーションのことだ。

 君たちのおかげで帝国産ポーションの生産は順調に進んでいる。感謝しておる」


 陛下はポーションの生産現場に顔を出されることもあり、折に触れて感謝の言葉を述べられています。


 改まってどうされたのでしょう。


「その上で儂も色々考えて、会議にもかけたのだが……

 やはり、帝国だけがカーハインドの技術を独占するのは健全ではない」


「……?」


 私とお兄様は陛下の真意がわからず、顔を見合わせます。


「今は良い。レオニールの代も問題ないだろう。

 だが、どこかで恩を忘れる者が出ないとも限らん。

 もしいつか、ポーション技術を独占したいと欲をかく者が皇帝になれば……カーハインドを滅ぼそうと考えるやもしれん」


「……!」


「そんなことは絶対にあってはならんことだ。

 儂やレオニールの目が黒いうちは、どんな手段を持ってしても止める。それは約束しよう」


「だが儂らが居なくなって何十年と経った時、この国がどうなっておるか。……残念ながらそれはわからん」


 確かに帝国は少し前まで拡大路線をとっており、周辺国を次々と侵略していました。

 いつかの時代、その風潮に戻る可能性は否定できません。


「そのような事態を引き起こさぬために、ポーション技術を帝国が独占するのは避けたい」


「そこで、他の国にも知識を提供してもらうわけにはいかぬだろうか?」


「……それをすれば帝国の優位性は失われますが?」


 お兄様は陛下の真意を探るように、慎重に言葉を選ばれます。


「もちろん理解している。

 だがカーハインドかてその優位性を捨て、我が国に知識を提供してくれた」


 陛下の眼差しは穏やかです。


「ですが……カーハインドは、全ての知識を伝えてはおりません」


 お兄様のおっしゃる通り、月光草の毒素の消し方はこちらが握ったままです。

 それゆえ帝国は、自国だけでポーションを作ることはできません。


「そうだ。それもあって危惧しておる。

 カーハインドの協力なく、帝国だけでポーションを作ろうと圧力をかける者が現れるやもしれん」


「だがもしカーハインドが、他国とも同じ契約を結んでいればどうだ?」


「帝国が無理を通せば、他国も警戒する。

 そうなれば、一国の都合だけでカーハインドを押さえつけることは難しくなるだろう」


 つまり。


「カーハインドを守る盾を増やすべきだ、と?」


 お兄様が陛下の顔を伺うように問いかけられました。


「その通りだ」


 陛下は頷かれました。


「カーハインドには様々な魔道具や知恵がある。

 しかし、人の数だけはどうにもならぬ。

 圧倒的な人数を相手にすれば、苦しい戦いを強いられることもあるだろう」


「戦い……」


 その言葉に私は眉を寄せました。


「だが他国の牽制があれば、戦いそのものを起こさせない抑止力にもなる。

 利害を共にする国が増えれば、お主らを一方的に追い込むことも難しくなるだろう」


「……ではどこの国と契約を結ぶべきと?」


 お兄様の問いかけに陛下は静かに頭を振られます。


「それはこちらが決めるべきことではない。

 どの国と関係を築くかは、カーハインド自身が選ぶべきだろう」


「それこそ、以前話に出ていた御母堂の母国でも良い。

 面識のない国に繋ぎを求めるのであれば、帝国が仲介しよう」


 その答えを聞いて、陛下は本当にカーハインドのことを考えてこの提案をしてくださったのだと理解しました。


「もちろんこの話はあくまでも提案だ。

 最終的にどうするかは、カーハインドで決めてもらえれば良い」


「ご配慮ありがとうございます」


 私とお兄様は揃って頭を下げました。


 帝国と提携した以上、もし今後カーハインドが他国との提携を望んだとしても、帝国の意向を無視することはできません。


 場合によっては帝国の利益に影響する話ですから、もしそうなっても簡単には認めていただけないだろうと思っていました。


 それがまさか、帝国側から打診してくださるとは。


「それにな。カーハインドですでに新しいレシピが生まれておるように、知る者が増えればポーションの改良はさらに進むだろう。

 それは帝国だけでなく、世界中の益となる」


 陛下のお考えの深さに驚きます

 この方は自国だけでなく、世界全体の発展を見据えておられる。


 ――なるほど、賢王と称されるわけですね。


「今回カーハインドの者と交流を持てたことで、帝国の薬師も奮起しておるわ」


 陛下は満足そうな笑みを浮かべておられました。



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