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レオ様の地方視察が決まり、救護所は俄かに騒がしくなりました。
どの部隊がレオ様と共に支援に行くのか、どの部隊を選ぶのかを巡り、各方面から様々な意見が上がっているようです。
今まで救護所で共に活動してきた部隊から選びたいレオ様に対し、他の支援に回っていて皇太子部隊に入れなかった者たちからは、「不公平だ」と不満の声が上がります。
確かに帝国側の皇太子部隊は、人手不足を補うため急遽公募で集められた部隊でした。
その時点で他の支援活動の中核を担っていた者たちは、応募したくとも持ち場を離れることができなかったでしょう。
それに重要な現場を任されていた分、皇太子部隊にも引けを取らない――あるいはそれ以上の実力者が含まれていても不思議ではありません。
"皇太子部隊に所属していた"というだけで優先するのは、彼らからすれば納得し難いことでしょうね。
一方レオ様は、皇太子部隊でカーハインドのやり方を学んだ者の方が、迅速な支援活動ができると考えておられるようです。
しかし今回はあくまで視察であり、支援活動が行われると決まったわけではありません。
その段階で支援能力を重視して部隊を選ぶことに、疑問の声も上がっていました。
さらに共に行く役人についても、様々な政治的思惑が絡み合い、簡単には決められないようです。
これがカーハインドならば、支援を決めた翌日には飛行艇で飛び立てるのですが……
支援を始めるまでにも時間を要する。これも大国ゆえの難しさなのでしょう。
帝国の事情に口を出す訳にもいきませんから、私はポーションの製造指導として先ほど到着した、ロルフの元へ向かいましょう。
◇
「ロルフ!」
小型の飛行艇から降りてきたロルフに駆け寄ります。
「姫、久しぶり〜。なんかちょっと焼けた?
ちゃんとお肌の保護はしなくちゃダメだよ」
早速ダメ出しをもらってしまいました。
ずっと支援活動で屋外に居たので、多少は日に焼けたかもしれません。
ですが日焼け止めを塗って、できるだけ日影に居たのですが……
私が項垂れると、ロルフは何やら鞄をごそごそと探ります。
「はい、美白薬。
寝る前に毎日一錠飲んでね」
「また新しい薬を開発したのですか?」
ロルフに差し出された瓶を受け取りながら、私は目を丸くします。
「姫が支援活動に行くって言うからさ。
帰ってきたときに必要になりそうな薬を開発してたんだ〜。
まさか僕の方が来ることになるとは、思ってなかったけど」
「ごめんなさいね、ロルフ。
ポーションのことで、ロルフ以上に詳しい人は居ないから」
私が眉を下げると、ロルフは手を双眼鏡のように丸めます。
「いいよ〜。そろそろ姫にも会いたかったしね。
それにカーハインドにはない植物にも出会えるかもしれないし!」
ただそこで、何かを思い出したように苦笑して言いました。
「アルフレート様を止めるのは大変だったけどね〜」
「アルフお兄様ですか?」
「うん。僕らが帝国に行くことを聞いて、自分も行くって荷造り始めちゃってさ」
ロルフは肩をすくめます。
「僕らが何言っても聞く耳持たなくて……
結局領主様のところに直談判に行って、何を言われたのか『僕は過酷な環境では生きていけない』って項垂れて帰ってきたんだけどね」
「アルフお兄様らしいですね」
思わず笑ってしまいました。
お兄様は研究所でカーハインドの最新の魔道具に囲まれて暮らしていらっしゃいますから、何もないところでは耐えられないと気付いたのでしょう。
「でもそっから、姫様のこと今まで以上に心配し出してさ。飛行艇に魔道具いっぱい積んであるから、あとで通信機でお礼言っといてね」
まあ、どんな魔道具でしょう。楽しみですね。
そのままロルフと共に、私たちが寝泊まりしている大型船へと向かいます。
その道すがら、ポーションを帝国で作るに至った経緯を説明しました。
お父様からも話は聞いているでしょうけれど、実際に現場にいた者から聞くのとでは、また違う部分もあるでしょうから。
「なるほどね〜。そりゃあ姫が怒るのもわかるよ。
ならもう、聖王国とおんなじレシピで作る必要もないってことだよね?」
「それはまあそうですが……
新しいポーションとして売り出す予定ですから」
ニンマリと笑うロルフに私は目を瞬かせます。
「聖王国のレシピ、僕から言わせてもらうと無駄が多いんだよね。それに不味いし」
「そうなんですか? 味は確かに美味しいとは聞きませんが」
ポーションは飲むことが最も効果的とされています。しかし独特の苦味と臭いを嫌い、多くの者は多少効果が落ちるとわかっていても患部にかけて使いたがります。
「カーハインドの中で使うように改良したレシピがあるんだけど、そっち教えてもいい?」
「ポーションの改良までしていたんですか!?
さすがロルフですね……」
思わず足を止めてしまいました。
「まあ帝国も実証実験とかするだろうし、元のレシピと改良版、両方伝えるのがいいと思うけど」
「そうですね。お父様とハイリお兄様にもお伺いしてみます!」




