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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 side:皇帝


「失礼します!」


 空が茜色に染まる頃、レオニールが押し掛けるように執務室にやってきた。


 またこいつは……


「お前は先触れというものを知らんのか」


 呆れた目でレオニールを見た儂は、その後ろからひょっこりと顔を覗かせた女性に気付き、目を見張った。


「ローラ嬢まで一緒とは驚いた」


 昨日の謁見で見た華やかな装いとは似ても似つかぬ、実にラフな格好で現れた彼女は、気まずげに礼をとった。


「陛下、私を視察に出してください」


 そんな彼女の様子を気にも留めず話し出すレオニールに、ため息が出た。


「それは彼女と共に、カーハインドに戻りたいということか?」


「……!? 違います! 帝国内の視察です!」


「ならばもっとわかるように話せ。

 儂はてっきり、二人揃って結婚の許しでも請いに来たのかと思ったわ」


 鼻で笑ってやると、レオニールはわずかに視線を逸らした。


 ……まんざらでもないらしい。


 だが当のローラ嬢はというと、話の意図がわからないとでも言いたげに首を傾げている。


 先は長そうだな……


「カーハインドの支援もあり、帝都の状況は落ち着いてきました。ならば次は、地方に目を向けるべきではないかと」


 レオニールはわざとらしく咳払いをした後、話し始めた。


「ふむ。それで?」


「それで……とは? だから視察に――」


「彼女を引っ張って来たのはなぜだ?」


「いや、引っ張ってきた訳では……

 彼女が進言してくれたのです。"地方は大丈夫なのか"と」


「……カーハインドに地方の支援までさせるつもりか?」


 私が目を細めると、レオニールはわずかに表情を引き締め、こちらを真っ直ぐ見据えた。


「はい。平時であれば話は別です。ですが今は国難の最中です。

 国のメンツを気にしている場合ではありません」


 青いな……


「だがそれにより地方の信を失えば、いずれさらに大きな国難を招くぞ」


 儂とレオニールの視線が静かにぶつかり合う中、儂の言葉に強く反応したのは、ローラ嬢だった。


 眉を下げ、唇を引き結ぶ。


 地方の窮状も、帝国の事情も、そのどちらも知っているからこその顔のように思えた。


「……よろしいでしょうか」


 恐る恐ると言った様子で口を開いた彼女に、儂は頷きを持って答えた。


「陛下のご懸念はもっともです。

 ですから地方への支援は、帝国の皆様に主軸になってもらいたいと考えています」


「ほう?」


「まだ主要街道が全て開通していない以上、支援に飛行艇は欠かせません。ですからカーハインドは飛行艇で、帝国の皆様と物資を輸送します。


 ですが。

 現地での支援活動は帝国の皆様にお任せします。


 支援の主体はあくまで帝国です。カーハインドはその手助けをするだけに留めます。


 これならば困っている方々を助けながら、帝国の立場も守れるのではないでしょうか」


 話し始めた時は遠慮がちだったが、言葉を重ねるごとに声に力が宿っていく。

 どうやら思いつきではなく、彼女なりによく考えた末の提案らしい。


「それは帝国にとって、あまりに虫の良い提案だな」


 儂が苦笑すると、彼女は笑顔で言い切った。


「いいえ、双方に利のある話です」


「そうなのか?」


 目を瞬かせながら、レオニールが問いかけた。


「もちろん! 帝国の復興が進むことは、カーハインドにとっても望ましいことです。


 それに、困っている方々を助けながら帝国とも良い関係を築けるのですから、十分な利益があります。


 なんといっても業務提携を結んでいますからね!」


 胸を張って言う彼女に思わず笑みが溢れた。


「業務提携は、ローラ嬢のお父上の了承が得られてからだがな」


「「あっ」」


 儂の言葉に二人揃ってバツの悪そうな顔をした。


「申し訳ありません。陛下。

 カーハインド卿より、業務提携の受諾はすでにいただいております」


「はい。明日にはカーハインドから、ポーションの作り方を指南をする者が到着します……」


 此奴ら、地方のことに気を取られて大事な報告を忘れておったな。


 呆れた目で二人を見ていると、部屋にノックの音が響いた。


「失礼いたします。ハイリンヒ殿がお見えです。陛下へのお目通りを願っておられます」


「通せ」


「失礼いたします。……っローラ!?」


 丁寧な礼をとって入室したハイリンヒ殿は、ローラ嬢の姿を見て目を丸くした。


「地方への支援のことで少しな」


 儂の言葉に思い当たることがあったのか、彼は頭が痛そうにこめかみを抑えた。


「こんな格好で陛下にお目通りするとは……

 愚妹が大変失礼いたしました」


「いや、彼女はレオニールに引っ張って来られたのだ。

 気になさるな」


 頭を下げるハイリンヒ殿から、レオニールは気まずげに目を逸らす。


 ……ったく。


「それで、ハイリンヒ殿の用件は何かな?」


「はい。父より業務提携の件、承諾が取れましたので、計画書をお持ちいたしました」


 気を取り直して問いかけた儂に、彼はすっと書類を差し出した。


「帝国産ポーションの生産は早い方が良いかと愚考します。そこで、明日にもカーハインドより飛行艇で製造指導を行う者を呼び寄せたく存じます。


 帝都への受け入れをご許可いただけますでしょうか」


「もちろんだとも。

 こちらでも信頼できる薬師を探して、早急に生産体制を整えよう」


「ありがとうございます。

 それから新たなポーション瓶ですが、こちらの製造について――」


 実にスマートだ。

 話も丁寧で説明もわかりやすい。


 レオニールに「見習えよ」と目線で訴えると、奴は苦笑しながら肩を竦めた。


 はぁ……



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