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「発言してもよろしいでしょうか!」
私が勢い込んで言うと、お兄様方とレオ様は目を丸くして、動きを止めました。
しかし、陛下だけは楽しそうに口元を緩めて「勿論だとも」と許可をくださいました。
「待て! ローラ!」
「何を言う気だ!」
お兄様方の声を無視して、私は陛下を見据えます。
「業務提携してください!!」
私の言葉に、一瞬時が止まったかのような沈黙が部屋を包みました。
「……詳しく聞かせてくれるかな?」
陛下の言葉にハッとします。
私ったら焦るあまり説明を飛ばしてしまいました。
「失礼しました。
ポーションを共同で作りませんか?」
「なっ……ローラ! 何を言うんだ!」
我に返ったハイリお兄様が止めに入りますが、止まるつもりはありません。
「私たちだけではこれ以上、ポーションを増産するのは難しい。
ですが帝国の協力があれば、聖王国を上回る量のポーションを作ることができるかもしれません!」
「ポーションの機密を教えてくれると言うのかね?」
陛下が机に身を乗り出しました。
「はい。ですから帝国には、ポーションの原料の調達と作成をお願いします」
「だが、それではカーハインドの資金源がなくなってしまうのではないのか?」
レオ様が心配を含ませた声色で問うてきます。
本当に優しい方ですね。
「いいえ。ポーションの原料の一つに、毒素を持つ物があります。
カーハインドでは独自の技術で、その毒素を無効化する方法を確立しました。
ですから帝国から送られた原材料を、ポーションに使える形に加工する工程は、カーハインドに任せていただきたいのです」
「なるほど。いくら制法を知ったとて、カーハインドの協力がなければ作れないという訳か」
陛下の言葉に、頭を抱えていらしたハイリお兄様が顔を上げられました。
「はい。そしてこれを機に、ポーション瓶も変更します。今までは聖王国の瓶に似せていましたが、その必要もなくなりましたから。
新たな瓶で"帝国産ポーション"として売り出します」
「ほう?」
陛下は興味深そうに顎に撫でられます。
「これで民の間に流れている、ポーションへの不信感も払拭できるでしょう」
「なるほど。面白い。
お嬢さんは聖王国に、真っ向から喧嘩を売る気かな」
陛下は片眉をあげて、こちらを窺うようにおっしゃいます。
「はい。民を犠牲にする聖王国のやり方は許せません。
……しかしこの方法では、帝国が矢面に立つことになります。
外交上の不利益があるならば、断ってくださって構いません」
「帝国が断ったらどうするつもりなんだ?」
レオ様が慌てたように口を挟まれます。
「その場合は他の大国に持ちかけるか……
ただ帝国の他に信頼できるのは、お母様の母国くらいですからね。そこにも断られたら、カーハインドの名で作ります」
「潰されるぞ」
レオ様が鋭い目で私を見据えました。
「そうかも知れません……
ですがここで何もせずこのようなやり方を見逃せば、また罪のない民が犠牲になるかもしれません」
「だが……!」
「――まあ待て。断るなど言うておらん」
私とレオ様の間の空気が張り詰めたところで、陛下が口を挟まれました。
「聖王国からの輸入品はポーションだけだ。
それも帝国側がかなり譲歩した不平等な条約を結んで、やっとのことで輸入しておった。
あの国は唯一のポーション生産国ということで、強気な姿勢を崩さんからな。
ポーションが自国で賄えるならば、不平等な条約は破棄できる。
こちらにはメリットしかない」
「では……!?」
「ああ。帝国はお嬢さんの策に乗ろう」
「ありがとうございます! ではまず――」
「しかし」
弾む声でお礼を述べた私の言葉を、陛下の声が遮りました。
「お嬢さんの一存で決められることではなかろう?」
陛下は眉を下げられます。
「帝国としては願ってもないことだ。
ただポーションの製法を知る、カーハインドの優位性は失われる。
お父上が許可を出されるかな?」
「大丈夫です!
もし反対されても、父は私が説得します。
それにお兄様方も味方になってくださいますから、問題ありません」
ねっ! とお兄様方を見ると、深いため息を吐き、呆れたような目をされました。
ですが――
「そうですね。カーハインドとしても、機密を自国だけで抱え込むのは本意ではありません」
「ああ。人を救うための技術は、可能な限り共有すべきだ」
二人は穏やかに笑うと、そう言って賛成してくださいました。
「頼もしいことだ。
ではお父上の許可が降り次第、こちらも動き出そう」
陛下が満足気に頷かれたところで、会談はお開きとなりました。




