表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
80/89

80

 翌日には、毒入りポーションの事件が民の間に広まっていました。


 あまりにも噂の広がりが早過ぎる。

 扇動している者が居ると見て間違いないでしょう。


 民に不安が広がる前に解決したかったのですが、こうなっては一定の混乱は避けられませんね。


 先ほど行われた会議では「騒動が落ち着くまでは、救護所でのポーションの使用も控えるべきでは?」という意見も出ました。


 しかしポーションを使用するのは重症者です。

 使用を控えれば、救えたはずの命まで取りこぼしかねません。


 様々な意見が出る中、最終的にレオ様はポーションの使用継続を決断されました。


 ただし、使用を望まぬ者に無理強いはしないこと。使わないことへの危険性を説明した上で、それでも拒否するなら本人の意思を尊重すること。


 そう付け加えて。


 おかげで救護所での混乱も、ある程度は抑えられるでしょう。



 ――私たちは今、陛下への謁見に向けて身支度を整えています。


 会議の後、レオ様に言われたのです。


「今回の事件のことで、陛下がカーハインドの者と話したいそうだ。頼めないか?

 もちろん兄君たちも一緒で構わない」


 と。お断りなどできるはずがありません。


 陛下にお会いするのはこれが初めてです。


 通信機越しで声は聞きましたが、あのときも専らハイリお兄様がお話をされていたので、私は挨拶を交わした程度。

 ……緊張してきました。


 レオ様の先導で、お城の中を歩きます。


 すれ違う者が皆、足を止めてレオ様に深々と頭を下げるのを見て、やはりこの方は皇太子殿下なのだな、と今更ながらに実感しました。


 普段のレオ様は、特に私たちに対して、身分を振りかざすような真似はされませんからね。


「失礼します」


 私的な面会室のような場に通されると、すでに陛下がお待ちでした。


 こういったものは普通、身分の低い者が先に来て待っているものではないのでしょうか。


「呼び出して悪いな。

 儂が出向くとうるさい者も多くてな」


 陛下はそう言うと席から立ち上がり、両手を広げて私たちを歓迎してくださいました。


 レオ様と同じ髪色。

 それにレオ様に似て、優しそうな方ですね。


 ただ、こちらは謁見に備えて着替えてきたというのに、当の陛下はマントも羽織らずシャツにスラックス姿なのですから、あまり儀礼にこだわらない方なのかもしれません。


 マルクお兄様はレオ様を送り届けたときに、ハイリお兄様は支援の開始前に、それぞれ面識をお待ちでしたから、初対面なのは私だけです。


 緊張しながらも礼をとって挨拶をすると――


「美しいお嬢さんだ。

 レオニールが夢中になるのもよくわかる」


 陛下は笑顔でそう返してくださいました。


「父上! いや、陛下!」


 レオ様が慌てたように口を挟まれますが、陛下が冗談でおっしゃっていることぐらい私にもわかります。


 そう伝えると、レオ様は何とも言えない顔をされ、陛下は声を殺して笑っておられました。


 ? よくわかりませんが、親子仲も良いようですね。


 ーー


「今日来てもらったのは、ポーションの件だ」


 席について落ち着いた頃、陛下がそう話し始めました。


「奴らの動きを見る限り、どうもポーションの信用を落としたいように見える」


 それは私たちも感じていました。

 ただそれがどういった意味を持つのかが、読めていません。


「毒入りポーションを渡したのは帝国の兵を装った者だと聞く。

 だが民の間で広まっている噂に、帝国の兵の存在が全く出てこんのだ」


「帝国を貶めたいのであれば、"帝国兵が毒入りポーションを配った"と広めるのが普通ですね」


 陛下の言葉にハイリお兄様がそう返されます。


 確かに不自然ですね。


 帝国の復興を妨害したい、帝国の権威を貶めたい――そうした意図があるのなら、『毒を配った帝国兵』という噂が与える影響は決して小さくありません。


「そうだ。だが民の間で広がっているのはポーションの不安を煽る話ばかり。

 そこで、だ。


 あのポーション、聖王国からの輸入品ではないな?」


 私は驚いて目を瞬かせました。

 眉を上げて問われる、陛下の意図が読めません。

 機密には触れない約束だったはずです。


「ええ。あれはカーハインド産です」


 困惑する私を尻目に、ハイリお兄様は淡々と答えてしまわれました。


 どうして――


「大丈夫だ。なにも陛下は"機密を寄越せ"なんて言うつもりはないさ」


 私の焦りが伝わったのでしょう。レオ様が優しく語りかけてくださいました。


「もちろんだ。儂はただ、聖王国産かどうかの確認がしたかっただけだ」


 陛下は落ち着いた口調でおっしゃいます。


 どうやら私の心配は杞憂だったようですね。

 ハイリお兄様は、わかっていらっしゃったのでしょう。


 ですがポーションの産地がどう関係するのか。

 私がいまいち状況を掴めないでいるなかで、マルクお兄様が声を上げました。


「ああー、やっぱりか。

 あの間者、聖王国の者か」


 聖王国?

 聖王国はポーションを唯一生産している国です。

 ……もしかして。


 私が考え込む間にも話は進みます。


「気付いていたのですか?」


 マルクお兄様の言葉に、レオ様が驚いたように声を上げました。


「昨日会ったときに思ったんだよな。

 あいつらが揃って妙にそわそわし出すときがあったんだ。

 別々の部屋で取り調べていた連中が、同じタイミングで落ち着きをなくすなんて不自然だろう?

 あれ、多分祈りの時間だったんだよ」


 聖王国には日に三度、祈りを捧げる時間があると聞きます。

 敬虔な信者ほど、その時間を大切にするのだと。


「つまりこれは、聖王国による他国産ポーションへの攻撃ということか……」


 ハイリお兄様が目を細めました。


「聖王国はポーションを外交のカードに使っていますからね。他国で作られれば聖王国の優位性は大きく崩れる」


 レオ様はそうおっしゃいますが、そのために人の命を奪うなんて信じられません。それも敬虔な信者が。


「聖王国の仕業とみてまず間違いないだろう。

 儂の方からも聖王国へ厳重に抗議しよう。まあ認めんだろうがな」


 陛下はそうおっしゃると、小さくため息をつかれました。


 相手の目的は、カーハインド産ポーションの信頼失墜。


 敵は強大ですが、目的が判れば戦いようもあります。


 自らの目的のために民の命を奪うよう下劣なやり方を、私は絶対に認めません。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ