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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 待ちわびた集団が姿を現したのは、それから五日後のことでした。


 各部隊や救護所、医師にも周知して、現れた場合の対応も決めてあります。作戦は予定通りに進みました。


 最初の者を医師がわざと時間をかけて診察している間に、周囲を精鋭部隊が取り囲み、一斉に捕縛したのです。


 素早く両手を縄で縛り、自害を防ぐために猿轡をかまされた者たちの衣服を、兵たちが躊躇なく剥ぎ取ります。


 男たちは皆、衣服に隠して、液体が入った瓶を所持していました。

 そしてその瓶の形状は、ポーション瓶と瓜二つです。


 急ぎ中身が鑑定に回されます。


 飛行艇内には、最低限の研究施設も設備してありますから、解析にそう時間はかからないでしょう。


 その間に男たちは城の地下牢へと移送されていきます。


 ただおかしなことに、治療もまだだというのに傷を庇う仕草を見せる者も痛がる素振りを見せる物もいません。


 治療を待っている間は、あれほど「痛い、痛い」と叫んでいたというのに。


 男たちの取り調べは、帝国の尋問官に任されることになりました。


 ◇


 責任者が飛行艇の会議室に集まり、中身の解析と尋問官の報告を待つこと三時間あまり。


 先に報告がきたのは、中身の解析をおこなっていた研究員からでした。


「中身は解毒薬でした」


 そういうことですか……。

 ポーションの代わりにこれを飲むことで、治療が成功したように見せかけていたのですね。


「つまりあいつらの変色は毒か」


 ハイリお兄様が呟かれます。


「恐らくは。これは影染草(かげぞめそう)の毒を解毒するものですから」


 影染草(かげぞめそう)は染料として使われる植物ですね。しかし生の樹液が傷口に入ると、患部が黒紫色に変色するとされています。


 放置すると数ヶ月しびれが残ったり、傷跡が黒く残ったりはしますが、命に関わる毒ではありません。


  染め物に従事する者が誤って触れてしまうこともあるため、解毒薬も広く普及していたはず。


 珍しくない解毒薬……それにしては。


「随分と時間がかかりましたね」


 私が問いかけると、帝国の者たちがぎょっとした顔で振り返りました。


 レオ様も苦笑しています。


 何かおかしなことを言ったでしょうか?


「申し訳ありません。

 ここから何か掴めないかと、解毒薬の配合比率の確認をしておりました」


「配合比率……?」


 誰かの呟きが聞こえます。


「この解毒薬は、帝国で一般的に流通しているものとは配合比率が異なっています」


「ふむ……」


 眉を寄せて考え込まれるハイリお兄様を横目で見ながら、レオ様が困った顔で笑われました。


「悪い、ローラ。

 配合比率とはなんだ? 解毒薬は解毒薬だろう?」


 あら、薬の配合比率を調べることは、帝国では一般的ではありませんでしたか。


「失礼しました。

 配合比率とは、簡単に言えば"それぞれの薬草をどれだけ混ぜるか"ということです」


「だが分量が違えば効能が変わってしまうのでは?」


 帝国の役人が、不思議そうに問いかけてきます。


「そう考えるのは自然なことです。ですが、実は薬というのは同じ効能を得る方法は一つではないのです」


 私の言葉に帝国の者たちが首を傾げます。


「そうですね……例えば料理と同じです。同じスープでも、塩を多めにする人もいれば、香草を多めにする人もいるでしょう?


 薬もそれと同じで、目的が同じでも調合する薬草の種類や分量には違いが生じるものなのです」


 そういうものなのか……と理解したようなしていないような、微妙な表情で顔を見合わせる者たち。


「身近なところで言うと……同じ熱冷ましでも、火消し草を多めに使う薬師もいれば、冷露花を多めに使う薬師もいますね」


「……なるほど」


 レオ様が大きく頷かれました。


「だから同じ効き目でも、効き方や安定性に差が出るのか」


「そうですね。だから“あの薬師は腕がいい”と言われる者がいるのです」


 私がそう言うと、場に小さく納得の空気が広がりました。


「重要なことは、薬師ごとに微細な違いはあるものの、その土台となる配合比率には国や流派ごとの特徴が現れるということです。


 そして、この解毒薬の配合比率は帝国で主流のものではありませんでした」


「……つまりあいつらは他国の者である可能性が高い、と」


 レオ様の言葉に辺りがざわめきます。


「俺もそう思う。

 あれだけ組織だった犯行を、皇太子殿下直属の部隊に仕掛ける奴は国内にゃいねえだろ。

 露見すりゃあ反逆罪で、下手すりゃ一族郎党打首だ」


 マルクお兄様が、首をトントンと叩きながらおっしゃいました。


「まあ王位継承争いでもしていて、大規模な派閥闘争があるのだとしたら、その限りではないだろうけれどね」


 ハイリお兄様がちらりとレオ様を見ておっしゃいます。


 その言葉にいち早く反応したのは、帝国の者たちでした。


「あり得ません!」


「レオニール殿下以上に皇太子に相応しい方はおりません!」


「陛下の跡を継げるのはレオニール殿下だけです!」


 レオ様が口を開くよりも早く、矢継ぎ早に言葉が飛んできます。


 人望がおありなのですね。


「お前たち落ち着け! ハイリ殿の冗談だ」


 片手を額に当てたまま、もう一方の手を振って皆にやめろとおっしゃるレオ様。


 ふふ。照れていらっしゃるようです。赤い耳が隠れていません。


 こちらの調べでも、レオ様には四人の弟妹がいらっしゃいますが、兄弟仲は良好。


 さらに実務の面でも評価が高く、長男で正妃様の子。

 血筋にも問題ありません。


 陛下もレオ様以外に跡を継がせるつもりはないようですから、継承者争いは起こらないでしょう。


 もちろんハイリお兄様も承知の上で、レオ様を揶揄われたのでしょうけれど。


 マルクお兄様もそんなレオ様を、ニヤニヤして見ていらっしゃいます。

 困ったお兄様方ですね。


「問題はどこの国の手の者かだ」


 レオ様は強引に話題を戻されました。


「尋問官が情報を引き出せれば良いのだが……」


「現在、瓶の配合比率を調べております。

 また何かわかれば報告いたします」


 レオ様の言葉を受けて、研究員は頭を下げるとその場を辞しました。



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