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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 支援活動を続けるうち、あの慌ただしさも次第に影を潜め、救護所はようやく落ち着きを見せ始めています。


 怪我から他の病を併発していた者も、多くは救護所を出て、日常生活に戻っていきました。


 中には「恩を返したい」と、そのまま救護所を手伝ってくれる者も居て、当初に比べれば皆の負担も軽くなったように思います。


 それにポーションの一件があった頃からでしょうか。

 帝国の兵がカーハインドの者に向ける視線から鋭さが消え、こちらに感謝の言葉を告げてくれる者も増えました。


 それにより救護所には、以前のような張り詰めたものではなく、穏やかな空気が漂うようになったのです。


 この数ヶ月、私たちは救護所を拠点に帝都の各地で支援活動を行ってきました。


 ときには道の塞がれた山間部に飛行艇で赴き、空挺降下で物資を運搬して道の開通工事をしたり、火事の現場で上空から消火活動を行ったりもしました。


 それもあって今や帝都では、飛行艇を見て怖がる民も少なくなり、それどころか歓声が上がることさえ珍しくない光景です。


 一方、飛行艇をはじめとするカーハインドの発明品を探ろうとする者も確実に増えました。


 きっかけは、ある部隊長が「最近見覚えのない顔が増えた気がする」と報告を上げてくれたことです。


 普段の帝都を知らない私たちでは気付けないことですので、助かりました。


 そしてその情報を元に調査を行った結果、帝国の貴族の私兵や他国の間者が帝都に入り込んでいることが判明したのです。

 さらに、その数は日を追うごとに増えているといいます。


 帝国の貴族の中には、こちらにも支援の手を回して欲しいと、飛行艇を呼び込む者も居ましたが、これに関しては皇太子殿下がきっぱりとお断りされました。


 そもそも一番被害が大きかったのは帝都ですからね。

 それを置いて他領の支援をする余裕はない、と突っぱねたそうです。


 ただそういった事情もあって、そろそろ支援を終えカーハインドに戻ろうかと引き継ぎを進めていたある日――


 再びポーションが闇市で流れ出したというのです。


「そんな馬鹿な! あれ以来、ポーションの管理は徹底しています」


 急遽開かれた責任者会議で、帝国の部隊長は信じられないと声を上げます。


 その気持ちは私たちも同じです。


「皆様が"再発を許さない"という気持ちで取り組んでおられたこと、皆が知っています」


 私がそう声を掛けると、部隊長はこわばった顔を少し緩めました。


「そうだ。私も君たちを疑っているわけではない。

 だが闇市に流れているのは事実。

 原因を調査せねばならない」


 よかった。レオ様も皆を信じておられる。


「もちろんです」


 部隊長は力強い目で頷かれました。


「帝国の威信にかけても、必ず原因を突き止めます」


 ◇


 それからカーハインド兵と帝国兵、合同での調査が始まりました。中でも帝国兵の意気込みは凄まじいものでした。


 ここ数か月のポーションの使用記録を洗い直し、不自然な点がないか確認するとともに、医師や看護師、下働きの者にまで声を掛けて、「怪しい者を見なかったか」と聞き込みを始めたのです。


 すると、いくつかの救護所でポーションがまとまった数だけ使用されている日があることがわかりました。記録を照らし合わせると、その日はどの救護所でも「作業中に崩落事故が起きた」と主張する集団がポーションを受け取っていたのです。


 ですが、その場に居た者は皆、「確かにその場でポーションを飲ませた」と証言しました。


 空き瓶の数も使用記録と一致しています。


 対策を講じて以降、空き瓶の回収と確認は毎日欠かさず行っていました。横流しがあったのなら、必ずどこかで帳尻が合わなくなるはずです。


 にもかかわらず、記録上は何一つ不自然な点が見当たりません。


 一体なぜ……


「――っ!

 ポーションの空き瓶を確認してきます!」


 皆が思い悩む中、ある可能性に気が付いた私は、飛行艇内の保管庫へと走り出しました。


「――違う」


「一体どうしたんだいローラ」


「何に気付いたんだ?」


 保管庫で瓶が入った木箱を片っ端からこじ開け、瓶を見比べて呟いた私に、後を追ってこられたハイリお兄様とレオ様が顔を見合わせます。


「カーハインドの瓶じゃないんです。

 これも……これも!」


 私が差し出した瓶を見て「本当だ……」と声を漏らされるお兄様に対して、レオ様は困惑気味です。


「なぜ違うと?俺にはどれも同じに見えるが……」


「ここをご覧ください」


 私は瓶をひっくり返すと、ある一箇所を指差しました。


「これは……"K"と見える」


「そうです。カーハインド製の瓶には、全てこの文字が刻まれています」


 よく見ないとわからない場所にですが、いつか模倣されることを想定して、瓶や魔道具などカーハインドの製品には、全て頭文字である"K"が刻まれているのです。


「ですがこちらには……」


 私はもう一つの瓶を差し出します。


「――っ!ない」


「はい。こちらで用意した瓶ではないということです」


「つまり……瓶ごと入れ替えたということか」


 レオ様は顎に手を当てて、眉を寄せられました。


「おそらくポーションを渡されてすぐ、別の瓶とすり替えたのだろうね」


 ハイリお兄様のおっしゃる通り、そこしか入れ替えられるタイミングはありません。


「また帝国の民か……」


 レオ様は悔しさを滲ませて呟かれました。

 しかし――


「そうとは言い切れません。

 この方法には、専用の瓶を製作する必要があります。

 民が行うにしては大掛かりすぎます」


 レオ様ははっとしたように顔をあげられます。


「それにポーションの処方には、医師の診断が必須だろう? 民だけで出来ることじゃない」


 お兄様は難しい顔をされています。


「私は、医師が共謀しているとは思えません」


 キッパリと言い切ると、お二人は目を瞬かされました。


「医師は皆、信用できる者ばかりです」


「ローラ、それは……」


 私の言葉にお兄様は苦言を呈され、レオ様は困ったように眉を下げられます。


 わかっています。私だって感情論だけで言っているわけではありません。


「だって複数の救護所で行われているのですよ?」


「……そうか!」


 レオ様が勢いよく立ち上がられました。


「医師を買収するにしても、人数が増えるほど漏洩する危険は増える」


「医師が共謀しているなら、わざわざ複数の救護所に手を広げる必要はないか」


 お兄様も納得したように頷かれました。


 私たちは顔を見合わせ、医師に話を聞くために動き出しました。



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