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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 飛行艇の周りは、野戦病院さながらの光景です。


 診療所や教会に入り切らなかった怪我人が、次から次へと運び込まれて来ました。


 治療のためのテントを複数箇所設営し、軽傷者には手当てを施し、重傷者はポーションを使い治療を行っていきます。


 しかし怪我から時間が経っているためか、傷口から別の病が入り込んでいる者も多く、傷口が治ったからといって油断ができない状況です。


 もう少し早くポーションだけでも届けられていれば、と思う気持ちもありますが、過ぎたことを悔やんでもどうにもなりません。


 それに治療だけではなく、水路の整備も急がなければ。

 早急に、帝都の民たちに安定した水を届けられるようにせねばなりません。


 人口の多い場所や診療所の近くなど、レオ様と共に優先順位を決めて人を派遣していきます。



「おい! 早く寄越せよ!」


 皆が懸命に各々の職務に邁進している中、男の大きな怒鳴り声が聞こえてきました。


 イヴァンと顔を見合わせて、慌てて声の元へと駆けつけます。


「どうされました?」


 見れば足を引きずった男が、ポーションを持った看護師の女性に掴みかからんばかりに詰め寄っています。


「ポーションだけ寄越せって言ってんだよ」


「ポーションは診察を受けた方にしかお渡しできません!」


 看護師は詰め寄る男にも毅然と対応しています。


 カーハインドでは、ポーションは医師が必要性を認めた者にしか使用しません。さらに、診断を受けたその場で使用することが定められています。


 ポーションは強力な治癒効果を持つ反面、使い方を誤ると、傷口に残った異物ごと塞いでしまう危険があり、その結果、後に患部が壊死する恐れがあるからです。


「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ!」


 男が拳を振り上げた瞬間、私は看護師の前に滑り込みました。


 手を広げ固く目をつぶったそのとき――


「いででででっ!」


 男の腕はイヴァンによって捻り上げられていました。


「……嬢ちゃん」


「うふふ」


 イヴァンに半眼で睨まれてしました。


 私が行けば、イヴァンは必ず守りに来てくれる。

 それがわかっていたからこそ、私は飛び出したのです。


 男は他の護衛に拘束され、現場から連れ出されていきました。


 ですがこれは問題ですね。

 今回は、私がたまたま近くに居たから良かったものの、もし誰も気付かなければと思うとゾッとします。


 医療従事者を守れるように、兵の配置を見直さなければ。

 できれば救護所には、常に複数人の兵を配置したいところです。


 ただ今でも負傷者の搬入や瓦礫の撤去、水路の整備に被災地の見回りなど、やることが山積みで人手が足りていないのですが……。


 これからは横暴な者がいたら決して一人で対応せず、すぐに大きな声で人を呼ぶように申しつけて、私たちは悩みながらも持ち場に戻りました。


 ◇


「ローラ!」


 しばらくするとレオ様が駆け寄って来られます。


 どうやら先ほどの騒ぎを聞きつけて来られたようです。

 些細を説明すると眉を寄せて考え込まれました。


「ここに帝国の者を入れてもいいだろうか?」


 レオ様は顎に手を当てておっしゃいます。


「予想以上に負傷者が多い。

 ここの人員だけで対応するのは厳しいだろう」


「そうですね……。

 このままでは医療従事者を守れません」


 ハイリお兄様とも話し合い、帝国の兵や侍女、下働きたちにも手伝いを求めることになりました。


 皇太子直属の部隊と銘打っているためか、ありがたいことに希望者を募ると多くの者が手を挙げてくれました。


 人員が増えたことで炊き出しも行えるようになり、それから数週間は問題もなく支援を行えていたのですが……。


 しばらくすると帝国、カーハインド双方の者から不満が聞こえるようになったのです。


 どうやら原因は、帝国とカーハインドの価値観や仕事のやり方の違いのようで、支援の優先順位や休憩の取り方を巡り、現場では小さな衝突が繰り返されていたのです。


 帝国側は怪我が癒えればすぐに仕事ができる、大人の治療を優先すべきだと主張し、カーハインド側は体力のない子供の治療を優先すべきだと主張する。


 また、まとまった時間休憩を取りたい帝国側と、こまめな休憩を複数回とりたいカーハインド側。


 どちらの主張も間違いとは言えないことが、この問題の解決を余計に難しくしていました。


 さらに帝国側からすれば、今まで国で見かけたことのない者たちが、見たことのない魔道具を使い、聞いたこともない理論で活動することに、不気味さを感じている者もいるとか。


 これは盲点でした。

 カーハインドの名を伏せているのだから、正体不明の怪しい集団だと思われるのは、少し考えればわかることです。

 ただ人手の解消にばかり目がいって、他の者がどう感じるかまで考えが至っていませんでした。


 それに必死に支援をしているのに、怪しい者を見るような目で見られては、カーハインドの者も良い気はしないでしょう。


 レオ様は現状に頭を下げ、「支援を受けている以上、全てカーハインドのやり方に合わせるべきだ。帝国の者にはそう指示を出す」とおっしゃってくださいました。

 しかし、それは帝国側の感情を逆撫でするとしか思えません。


 自国の皇太子が、自分たちではなく正体不明の者の肩を持つ。


 レオ様に不信感を持つ者が必ず出るでしょう。

 下手をすると、皇位継承にも影を落とすかもしれません。


 かといって、現状打てる手は多くありません。

 そこで一先ず、混成部隊を解消することに決めました。新たに帝国の医療従事者にも協力を仰ぎ、皇太子部隊へ組み込んだうえで、出身地ごとに部隊を組み直すことにしたのです。


 ただそうなると今度は、「帝国出身者のみの部隊にカーハインドの魔道具を貸し出すのか」という問題が持ち上がりました。


 帝国の皆さんからすれば、せっかく使い方を覚えた便利な道具です。それを今さら返せと言われれば反発も出るでしょう。


 これを取り上げてしまえば、両者の溝をかえって広げてしまうかもしれません。


 ですが、混成部隊を解消した以上、他国の者だけで運用させてよいのかという声が上がるのも当然です。


 話し合った結果、魔道具の貸し出しは継続。


 また、貸し出しの際には部隊長が貸し出し表へ署名し、責任を持って管理・返却することとしました。


 ただし、軍事転用の恐れがあるものや、扱いに専門知識を要する魔道具、高価な魔道具については、これまで通りカーハインドの管理下でのみ使用を認める。そう決まりました。


 これでうまく行けばいい……

 祈るような気持ちで数日を過ごしたとき、問題は別のところからやってきたのです。



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