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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 飛行艇が帝都側の草原に着陸した時、あたりは既に恐ろしいほどの騒ぎになっていました。


 普通ならば攻撃を受けていてもおかしくない程の騒ぎでしたが、飛行艇に皇太子殿下の紋章を掲げていたおかげで、遠巻きに警戒されるだけで済んでいるようです。


 そのとき、群衆がさっと左右に割れ、その奥から馬上の一団が姿を現しました。


 飛行艇の前まで進み出た彼らは、こちらではなく群衆へ向き直ると、なかでも一際大きな馬に跨った人物が、静かに兜を外します。


 その仕草に、思わず見入ってしまいました。

 あまりに絵になる光景だったからです。


 陽光を受けた淡い青髪が、さらりと揺れて輝いたのが見えました。


 ……綺麗です。


 誰かが息を呑む声が聞こえた気がした、次の瞬間――周囲の者たちが一斉に膝をつき、こうべを垂れました。


「私はレオニール=サイブル。

 サイブル帝国皇太子である」


 まだ若い、しかし威厳のある声が辺りに響きます。


「驚かせてすまぬ。

 この飛行艇は、災害支援のために呼び寄せたものだ。

 今より私の責任において、救助ならびに支援活動を開始する。

 ――安心せよ。帝国は決して民を見捨てぬ」


 民たちは戸惑ったように顔を見合わせていました。


 無理もありません。

 空を飛ぶ船が現れたかと思えば、皇太子殿下自ら支援活動の開始を宣言されたのですから。


 ですが、その言葉が浸透するにつれ、人々の表情が変わっていきます。


「皇太子殿下万歳!」


 上がった歓声は次々と周囲に広がり、気付けばあたり一面が万歳の声で満たされていました。


 私たちも乗降用のハッチを開放し、支援部隊が次々と地上へ降りていきます。


 しばらく手を挙げて民の歓声に応えていらした皇太子殿下でしたが、馬を降りるとこちらへ来られました。


「カーハインド嬢! お世話になります」


「――いけません!」


 レオンのときのように頭を下げようとする皇太子殿下を、慌てて止めます。


 ご自身でも気付かれたのでしょう、苦笑いをして頭を掻いていらっしゃいます。


「皇太子殿下におかれましては、ご機嫌うるわしゅう」


 私は深くカーテシーをしました。

 王族に対して臣下が捧げる最敬礼です。


「……やめてください」


 顔を上げると、皇太子殿下は困ったように眉を下げておられます。


「私が皇太子だと分かった途端、そんな態度を取られては寂しいです」


「え?」


「できれば今まで通りに接していただきたい」


「……ですが」


「それに私は皇太子としてここへ来たわけではありません」


 皇太子殿下は小さく息をつかれます。


「カーハインドの皆さんに協力を願う、一人の人間として来たのです」


「……」


「ですから、どうか今まで通りに」


「……わかりました」


「ありがとうございます」


 皇太子殿下は、それはもう見事な笑顔で微笑まれました。


 その笑顔を正面から受けてしまい、私は思わず目を瞬かせます。

 なぜだか胸がそわりと落ち着きません。


「そういえば、そちらが本来の髪色ですか」


 居た堪れなくなった私は、咄嗟に話を変えました。


「ええ。皇家は代々この色が多くて。

 このままでは目立ちますから、染髪していました。

 黒髪の方が良かったですか?」


「いいえ。黒髪も精悍な感じがしてよくお似合いでしたけど、今の色の方が皇太子殿下の優しい雰囲気によく合っていると思います」


「……そうですか」


 私が笑顔でそう言うと、なぜか皇太子殿下は少しだけ目を逸らされました。そして――


「その……皇太子殿下ではなく"レオ"と呼んでいただけませんか?」


 私は目を瞬かせます。


「災害現場では不測の事態も起こります。

 短い名の方が、咄嗟の時に呼びやすいですから」


「……そういうことでしたら」


 皇太子殿下を愛称で呼んでもよいものかと少し考えました。ですが確かに現場では、短い呼び名で呼び合うと聞いたことがあります。


「私もローラとお呼びしても?」


「え?」


「現場でいちいち敬称を付けていては長いでしょう?」


 そういうものなのでしょうか。


 よく分かりませんが、皇太子殿下――いえ、レオ様がそう仰るなら。


「もちろん構いません」


「では私のこともハイリンヒ、と」

「俺もマルクスでいいぜ」


 いつの間にか近くまで来ていたお二人が、揃ってにっこりと微笑みました。


 レオ様は一瞬だけ表情を引きつらせました。

 急に話しかけられて驚かれたのでしょうか。


「……レオと呼んでください」


 なぜか額にうっすらと汗を浮かべたレオ様が、お兄様方にもそうおっしゃいます。


「喜んで。

 では実務のお話をしたいので、執務室に来ていただいても? レオ総司令官殿?」


「いやいや、レオは実働部隊だろ?

 空挺降下の訓練でもしといた方がいいんじゃねえ?」


 マルクお兄様はレオ様の肩を抱くと、そのまま歩き出しました。


 ハイリお兄様も穏やかな笑みを浮かべたまま後に続きます。


 どうやら支援活動について詳しく打ち合わせをなさるようですね。


 私は邪魔にならないよう、その場で深く頭を下げました。



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