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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 side:レオン


 夕闇が迫る頃、部屋の扉がノックされた。


 いつものように護衛が対応に出る。

 ――この飛行艇内でそんな必要があるのか、正直なところ疑問だがな。


 ここまで、我々の知らない技術や魔道具をたくさん見てきた。

 カーハインドが本気になれば、数人の護衛など意味を持たないだろう。


 まあそもそも害す意思があるなら、ここまで内情を曝け出してまで、帝国を救おうとなどしないだろうが。


 そんなことをつらつらと考えていると、どうやら現れたのは医師らしい。


「入っていただけ」


 俺が声を掛けると、眼鏡をかけた白衣の男が顔を出した。


「もう間も無く離陸します。

 離陸後は三十分程で降下ポイントに到着しますので、その前に体調の確認に参りました」


 柔らかい笑みを浮かべた人の良さそうな男は、そう言って何かの器具を見せた。


 ここからたった三十分で帝都まで着くというのか。

 この移動手段が使えれば、移動にかかる手間が減るだろうな。

 他国とのやりとりも、もっとスムーズになるだろう。


 飛行艇の使い道を想像する俺に、男から声が掛かる。


「空挺降下する予定の方を、集めていただけますか?」


「……」


「あ、それとも別々の方が良いですか?」


 返事を返さない俺に、眉を下げる男。


「いえ、一緒で問題ありません。

 ただ、誰が飛ぶのか把握していなかったもので」


 チラリと側に居る護衛に視線を送ると、気まずげな顔をしつつ「呼んで参ります」と部屋を出て行った。


「では先にあなたから始めましょうか」


 男はよくわからない平らな器具を俺の胸に押し当て、ふんふんと頷いている。


「失礼。それは何をされているのでしょう?」


「これは胸の音を聞いています。

 ……ご経験ありませんか?」


 男は不思議そうに顔を上げた。


 確かに帝国でも医師は、胸の音を聞くことがある。

 だが使っていたのは、もっと円錐形の器具だったように思う。


「経験はあるのですが、見知った器具とは随分と形が違いましたので」


 俺の答えに男は納得がいったようだ。

 大きく頷きながら「そう言えばそうでしたね」などと呟いている。


 これもカーハインドの発明品か。

 医師の器具が違うということは、きっと医療の知識も治療方法も違うのだろう。


 出そうになった溜め息を、慌てて飲み込む。

 羨んでいても仕方がない。


「少し脈が早いですね。

 緊張されてます?」


「それは……」


 手を取りながら問うてくる男に、俺は素直に言葉を返せなかった。


「その……体調の確認が必要な程のことなのでしょうか?」


「空挺降下ですか?

 それはもちろん。心臓や肺に問題がある方は、体調を崩す恐れがありますから」


「……そうですか」


「緊張しますよね。

 僕はあの高さから飛ぶなんて、考えただけでも倒れそうです。

 ですが一緒に飛ぶ者はみんな、訓練を受けた慣れた者ばかりだと聞いています。

 ですから――」


 俺の気持ちを軽くしようと声をかけてくれているのがわかる。本当にカーハインドには優しい者が多いな。


「ありがとうございます。

 私の体調は問題ありませんでしたか?」


「ええ、大丈夫です」


 俺が意識して笑顔を作ると、医師はほっとしたように笑顔を返してくれた。


「先生、少しお伺いしても?」


「もちろんです」


「今回の責任者を務めていらっしゃる方ですが、カーハインド姓を名乗っておられました。

 あの方は……?」


 医師は俺の質問が予想外だったのか、少し目を丸くした。

 まあ今の流れで聞くことではないからな。


「あの方はカーハインド家のご長男、ハイリンヒ様です」


「――ということは」


「はい。次期領主様ですね」


 やはりか。


 名乗りを聞いた時点でそうであろうとは思っていたが……。


 カーハインド家の家族構成や主な容姿は、こちらでも調べていた。

 だが、あまりにも商人として板についた様子のハイド殿と、貴族の嫡男という肩書きが結び付かなかった。


 そうだ……あの領主の姿を見たときに感じた既視感。あれはハイド殿だったのだ。

 なぜ気付かなかったのかと思うほど、あの二人はよく似ている。


 髪色や顔の造形もそうだが、あの柔和な表情の下に隠された、相手を見透かすような目。

 穏やかな物腰とは裏腹に、相手の本心を逃さぬような視線。

 ……あの空気感まで、そっくりだった。


 それにあの孤児院で、やけにローラと親しげだったのも、兄妹だからだと言われれば納得がいく。


「そうですか。まさか嫡男の方が他国まで来てくださるなんて、驚きました」


「そうですね。

 あまり一般的ではないでしょうけれど、カーハインド家の皆様は、大変な仕事ほど自分たちで引き受けられますから」


 領主一家を思い浮かべているのだろう。


 困ったように、それでいて目を細めながら男は言った。


 領主一家のことを語る者は、皆どこか誇らしげな顔をする。


 その後男は他の者の診察も行い、空挺降下時に身に付けるようにと、服や装備を置いて部屋を辞していった。



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