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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 なんとか話がまとまった頃には、飛行艇は山火事の現場に到着していました。


 すでに延焼範囲の確認も済ませてくれていたようで、すぐに消火活動を始められます。


 ここからは私の出番です。


「上部デッキに出ます!」


 それだけ言って駆け出した私の後を、マルクお兄様とレオン様が追ってきます。


「――レオン様!?」


「邪魔はしません。

 学ばせてください」


「危険ですよ?」


「だったら余計に。

 我が国の問題を、あなた一人に押し付ける訳にはいきません」


 真っ直ぐこちらを見て、真剣な目で話されるレオン様。

 その目には意思の強さが見えました。


 マルクお兄様に目配せすると、小さく頷かれたので、レオン様の安全にも気を配ってくださるでしょう。


 それに慌てたように、レオン様の護衛たちが駆けつけて来るのも見えます。


「――わかりました。

 山火事は、闇雲に水を撒いても意味がありません。

 まずは風向きと延焼方向を見極めます」


 上部デッキに出ると、熱風と煙が押し寄せてきます。


「皆さん、煙を吸わないよう注意してください!」


 私は魔道拡声器を起動すると、船内に声を届けます。


「放水管接続! 魔道具、起動!

 風は南西方向!

 火元ではなく、延焼方向の先を狙ってください!

 風下側を重点的に冷却し、ここで延焼を止めます!」


「カシュン……!」「ガコン……ッ!」

 側面ハッチのロックが外れ、ハッチが開かれる音が響きます。


「ザパアァァ……ッ!」「ドドドド……ッ!」

 勢いよく放たれた水は、そのまま風を切り裂くように広がりました。


 ですが――


「……火の勢いが強すぎる」


 放水魔道具だけでは追いつきません。


「……船底の排水口も流用します!

 圧力を上げて、そちらからも散水してください!」


 そう指示を出したとき、グラリと船体が揺れました。


「キャ……ッ!」


「大丈夫ですか!」


 足を取られそうになった私を、いち早く支えてくださったのはレオン様でした。


「ローラ……!」


 傍にいたお兄様の声が、遅れて耳に届きます。


 こんなに近くにいらしたなんて……。気付いていませんでした。

 ……落ち着かねばなりません。


 私は一つ息をつくと現場を見回しました。


「煙柱の真上には入らないでください! 上昇気流に巻き込まれます!」


 指示を飛ばした直後、すぐそばで動く気配がありました。


 レオン様は短く頷くと、私の支えから手を離し、そのまま甲板の縁へと駆け出します。


「左舷、風が巻いています! そのままだと吸い込まれます!」


 風の流れを一瞬で読み取り、声を張り上げるレオン様。


 迷いがない。

 まるで最初からこの場にいたかのように、状況へ割り込んでいきます。


「放水班、角度を浅く! 上から叩くな、斜めに流し込め!」


 飛び交う声の中、お兄様が呆然としたようにレオン様を見つめていました。


「あいつ……飛行艇に乗ったの初めてだよな?」


 お兄様の呟きに答える余裕もなく、私は前方へ視線を戻します。


 尾根に沿って駆け上がり、風下の森へ手を伸ばそうとする炎が見えます。


 ――このままでは尾根を越える。


 尾根の向こうに延焼が広がると、範囲が一気に拡大しかねません。


「放水だけでは間に合いません……!

 熱気が強すぎて、水が火へ届く前に蒸発しています」


 そう呟いた瞬間、レオン様が振り返りました。


「他に手は?」


 短い問い。


 けれど、その目にはもう迷いがありません。


 私は一瞬だけ考え込み、上部デッキ中央へ駆け上がると、固定布を乱暴に剥ぎ取りました。


 その下から現れたのは、円筒状の大型魔道具。


 本来は飛行試験中、気流を再現するための装置ですが――これを使えば。


「まさか、それを回す気か!?」


「熱気を崩します!」


 お兄様の制止も聞かず、私は魔石を接続しました。


 低い駆動音。


 次の瞬間――


 轟音と共に圧縮風が放たれ、山肌を覆っていた熱気と煙が、横殴りに押し流されます。


「火勢が……弱まってる?」


 レオン様が目を見開きます。


「酸素と熱を散らしています!

 完全には消せませんが、勢いなら削れます!」


 熱気が押し流され、燃え上がっていた木々の勢いが目に見えて落ちていくのが見えました。


「ですが長時間は使えません!

 船体が流されます!」


「なら今だ! 放水を合わせろ!」


 レオン様の号令と共に、水柱が一斉に叩き込まれました。


 さきほどまで弾かれていた水が、今度は確かに炎へ届いていきます。

 私は少し肩の力を抜きました。


 しばらくすると、あれほど荒れ狂っていた炎は目に見えて弱まりました。


「消えたのか……?」


 誰かの呟きと共に、張り詰めていた空気がわずかに緩みます。


 しかし――


「待ってください。まだ終わっていません」


 火勢の弱まった山肌を見下ろしながら、私は首を振りました。


「表面の炎が消えても、地中では火が燻っています。放置すれば再燃します」


 お兄様が眉を寄せる。


「なら、どうする?」


「水を流し込みます。地中へ直接」


 私は細長い杭状の魔道具を掲げました。

 先端には、水魔石が埋め込まれています。


 本来は土壌を潤すために、地中深くへ水を浸透させるための魔道具です。


「尾根沿いへ投下してください。熱の残りやすい場所を優先します!」


 次々と撃ち込まれた水杭から、地中へ水が流れ込んでいきます――


 しばらくすると、赤く燻っていた地面から白い蒸気が立ち昇り始めました。


 これで一先ずは安心です。

 何人か観察役を置いて、この場を離れましょう。


 もたもたしている暇は、ありませんから。



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