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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 side:レオン


 カーハインドから支援の約束を取り付けることができた。


 安堵する一方で、気にかかっていることがある。


「夜明け前に、もう一度領主邸へ来てほしい」


 ポーションの引き渡しのためだとは思うが、なぜ夜明け前なのか。


 俺に渡すことを、誰かに知られたくないのだろうか。


 だが、それなら人目につかない場所を指定するはずだ。

 わざわざ領主邸へ呼ぶ理由がわからない。


 ……いや、まさか。


 カーハインドには、帝国へ繋がる秘密の抜け穴でもあるのか?


 そんな馬鹿げた想像をしていた俺は、今まさにカロルド殿に先導され、護衛と共に地下へ続く階段を下っていた。


 薄暗い通路を進みながら、冗談のはずだった考えが頭をよぎる。


 まさか本当に、秘密の通路でもあるのか……?


 だが、俺の目の前に現れたのは、そんなものではなかった。


 船だ。


 それも、思わず息を呑むほど巨大な。


 呆気に取られていると、カロルド殿が平然と言った。


「荷物の積み込みも、同行者たちの乗船も、すでに終わっている」


 ますます困惑する。


 海もない地下で船に乗り込み、一体何をするというのか。


 怪訝な顔をする俺を見て、カロルド殿は指を上に向けるとニヤリと口元を歪めた。


「飛ぶのだよ」


 ――っ!? いくらなんでもあり得ない。


 現実離れした言葉に、思考が止まる。


「レオン様!」


 その時、聞き慣れた明るい声が響いた。


「カーハインド嬢?

 そこでなにを……まさか」


「はい。私も同行いたします」


 驚きに足を止めた俺は、思わずカロルド殿を振り返る。


 災害現場は過酷だ。

 彼女が背負うには重すぎる。


「現実を見せてやってくれ」


 小さく息をつくカロルド殿の横顔に、苦渋が滲む。


 本心では連れて行きたくないのだろう。

 だが、それでも目を背けさせるつもりはないらしい。



 ――彼女に導かれて乗船した俺たちは、船とは思えないほど広い内部空間と、その完成された造りに圧倒されていた。


 壁面には装飾のように魔導灯が埋め込まれ、柔らかな光を絶えず揺らしている。


 足元は分厚い絨毯がひかれ、歩くたび僅かに沈む。


 さらに片側に設けられた大きなガラス窓からは、分厚い地下空間の岩壁が見えていた。


「……船、だよな、これ」


 思わず呟く。


「船というより、飛行艇ですね。

 カーハインドでもまだ新しい発明です」


 俺の言葉に、どこか声を弾ませたローラが答えてくれた。


 その時、遠くで低い振動が走った。

 まるで巨大な獣が目を覚ましたような感覚に、思わず息を呑む。


「出航準備が整いました」


 淡々とした声が船内に響く。


 低く響く振動が、足元からじわりと伝わってきた。


「何が……起きている?」


 思わず呟いたその瞬間、足元がわずかに沈んだ。


 いや――沈んだのではない。


 浮いている。


「……っ」


 理解するより先に、身体がそれを拒絶する。


 重力の感覚が、ほんの一瞬だけ曖昧になる。


「重力制御、安定。発進ハッチ、解放確認。

 離陸します」


 またも声が響いた直後、腹の底がふわりと浮くような、奇妙な違和感が走る。


 揺れがない。

 軋みもない。

 音すらも、必要最低限に抑えられている。


 まるで大地そのものが、そっと手を離していくような浮上だった。


 そして。


「外部確認。上空への離脱、完了」


 ふと、窓の外が明るくなった気がした。


 不思議に思って目を向けた瞬間、言葉を失う。


 さっきまでの地下の闇はもうない。


 窓の外には、夜の名残を帯びた青白い空が広がっていた。


 驚きを抑えきれぬまま、とにかく彼女について進むと、重厚で落ち着いた意匠の扉が静かに連なる廊下に出た。


 規則正しく続くその光景に、まるで城の中の居住区画を歩いているかのような錯覚を覚える。


「レオン様はこちらをご利用ください」


 一つの扉の前で足を止めたローラが振り返る。


「護衛の方お一人は、内部に続き部屋がありますので、そちらへ。

 それ以外の方は申し訳ありませんが、休憩室をご利用ください」


 彼女が部屋の扉に何かを差し込むと、静かに解除音が響いた。


 促されるまま中へと足を踏み入れ――目を丸くする。


 広い空間に中央には低い卓とソファが置かれ、脇には休息用の寝台まである。

 移動のための空間というより、最初から“滞在すること”を前提に設計されているようだった。


「……帝国まで何日ほどかかるのでしょうか?」


 驚くばかりで、具体的なことを何も聞いていなかった自分に気付く。


「あっ、心配なさらないでください。

 寝台を使うほどの時間はかかりませんよ」


 ローラは俺の様子に、慌てたように訂正を入れる。


「帝国側まで二時間もあれば到着しますから。

 今回は山火事の鎮火作業もあるので、着陸場所まではもっと時間がかかるでしょうけれど」


 ――待ってくれ、情報量が多くて整理が追いつかない。

 帝国までたったの二時間?

 それに鎮火作業?


「普段はもっと小型の物を使うことが多いのですが、今回は同行者も物資も多いですからね」


 困惑する俺に気付かず、説明を続けるローラ。


「……これ以外にも船が?」


「いえ、ここまで大型の物はこれだけです。

 保管にも気を遣いますし、なにより、あまり使う機会がありませんので」


 どうにか絞り出した問いは、今聞く必要もないことだった。


 ローラの口ぶりは、まるで“作れはするが、必要がないから作っていない”と言っているようで。


 しかも、“大型の物はこれだけ”という言葉は、裏を返せば、それ未満の規模なら他にも存在すると認めたようなものだ。


 俺はますます困惑を深めるしかなかった。


「個室の方が落ち着くかと思いまして。

 あ、でも、荷物を置いたら、一度ラウンジまでお越しくださいね。

 同行者の紹介と、詳しい予定をお話ししますから」


 そう言って部屋を辞そうとするローラを、俺は慌てて引き止める。


 こんな状態で置いて行かれても、落ち着けるはずがない。


「今すぐラウンジに伺います」



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