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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 side:カロルド


 レオンと名乗るマケイド商会の男から、面会の申し込みが入った。


 おそらく、地揺れの件だろう。


 問題は、その目的だ。


 ローラは、通信機で得た情報をあの男にも伝えたと言っていた。

 ならば、こちらが何らかの情報網を持っていることには気付いているはず。


 その手段を探りに来たのか。

 あるいは、別の発明品に目を付けたのか――。


 ローラは、

「命を天秤に乗せたくない」

「機密が漏れても助けるべき」

 と訴えていた。


 ……私とて、救える命なら救いたい。


 だが、領主である以上、それだけでは済まされない。


「お前のその優しさが、カーハインドの民を殺すかもしれない」


 私の言葉に、ローラは息を呑んだ。


 強い言い方だとは分かっている。


 だが、帝国の民を救った結果、カーハインドが危機に晒される――そんな事態は許されない。


 民を預かる者は、情だけでは動くわけにはいかない。

 ときに非情な判断を下すのも、領主の役目だ。


 ――そして娘に現実を教えるのは、父親の役目だ。


 もし判断を誤れば、民の恨みがローラへ向くこともあるのだから。


 それでもローラは、「せめて会ってから判断してほしい」と頼み込んできた。

 あの男のことを、多少は信用してもよいと思っているらしい。


 そのため面会を受けたが、男は終始低姿勢だった。


 こちらは見極めるつもりで幾つか厳しい問いも投げたが、男は気分を害した様子すら見せなかった。

 むしろ、危険を承知で山を越える覚悟まで口にした。


 この男がどこまでの身分なのかは分からない。

 だが、自らの危険を顧みず、国のために動ける為政者はそう多くあるまい。


 それでいて、カーハインドの技術を探ろうともしなかった。


「ポーションを譲ってほしい」


 その要求があまりにも真っ当で、拍子抜けしたほどだ。


 ――“身命を賭す”と言い切ったあの目に、嘘はないように思えた。


 少なくとも、信用に値する男ではあるのだろう。


 だから私は、あの男に賭けると決めた。


 面会の内容を各部署へ通達し、急ぎ復興支援の準備を始める。


 男には旅支度を整え、夜が明ける前にもう一度領主邸へ来るよう伝えた。

 突然の話に困惑していたようだが、深々と礼をして帰っていった。


 ――幸い、ポーションは保健局が増産に成功しているため、備蓄は潤沢だ。

 製法を安定させるために、と実験を兼ねて必要以上に生産していたため、置き場所に困るほどの量がある。


 だが、問題は山積みだ。


 山火事を放置すれば、こちらへ延焼する危険もある。早急に鎮火しなければならない。

 崩落現場の救助、水質汚染への対応も必要だ。


 アルフレートには、発明品と魔石を積み込むよう指示を出しておくか。


 それに、医師と看護師の派遣も要る。

 もっとも、こちらの人員まで不足させるわけにはいかない。最低限を残した上で、何人回せるか……。


 そして何より、現地の責任者を決めねばならない。


 ある程度の裁量を持たせる必要がある以上、帝国側との折衝も避けられないだろう。

 となれば、相応の身分を持つ者でなければ務まらない。


 ローラは行く気でいるようだが、あれにはまだ早い。


 責任者とは、最悪の場合、撤退を命じる決断まで負う立場なのだから。


 やはりハイリンヒを総指揮に、補佐としてマルクスを同行させるのが妥当か。


 そうなると、ハイリンヒの正体も明かさざるを得ないだろう。


 商人として築いてきた奴の立場を崩すことになるが……背に腹は変えられん。



 執務室からハイリンヒとマルクスへ連絡を入れると、数分も経たずにローラが押しかけてきた。


 どうやらハイリンヒと一緒にいたらしく、話を聞いていたようだ。


「お父様、私も同行させてください」


 こちらを見上げる目には、強い意思が宿っていた。


 だが――


「お前に災害現場はまだ早い」


 ローラなりに責任を感じているのだろう。

 しかし、現地で求められるのは善意だけではない。


「……なぜですか?」


「目の前に二人の負傷者がいて、どちらか一人しか助けられない。

 その時、お前は片方を見捨てる決断ができるか?」


 ローラは息を呑み、言葉を失った。


「帝国の対応次第では、支援そのものを打ち切る可能性すらある。

 それでも、お前は従えるのか?」


「それは……」


 ローラは言葉を詰まらせた。


 やはり、まだ現実を理解しきれてはいない。


 だが、それでも目を逸らさなかった。


「……それでも、行きたいです」


「なぜだ」


「私が言い出したことだからです」


 震える声ながら、ローラは真っ直ぐこちらを見る。


「助けたいと言った以上、私は結果から目を背けたくありません。

 救えない命も、苦しい判断も……全部、自分の目で見たいんです」


「…………良いだろう。

 ただし、兄たちの判断には必ず従え。

 守れなければ、即座に連れ戻す。よいな?」


 ローラの顔がぱっと明るくなる。


 いつまでも綺麗なものだけを見せていては、この子の成長には繋がるまい。


 ……もっとも、ハイリンヒたちには苦労をかけることになるだろうが。


 可愛い妹の頼みだ。

 あれらも、無下にはできまい。



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