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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 side:レオン


 思いのほか、長い地揺れだったな。


 店内や周辺を見回るが、特に被害はない。

 ほっとして一息ついていると、慌てたように走る馬車が見えた。


 あれは……カーハインドの紋章が付いている。

 被害を受けた地域でもあったのか?


 ――まさか酒蔵か?

 あそこは火を扱う場所だ。

 あの程度は揺れでも、被害があっておかしくはない。


 嫌な予感に眉を寄せて見ていると、なぜかその馬車は俺の目の前で停まった。


「――レオン様!」


 従者の手も借りず、慌てた様子で馬車を降りるローラに驚く。


「カーハインド嬢、いかがされましたか?」


「実は、先ほどの地揺れで――」


 ――目を見開く。


 まさか帝国が被害を受けているとは。

 それも状況は深刻らしい。


 ただ、いくらなんでも情報が届くのが早過ぎる。


「その情報は一体どこから……?」


 ローラの言葉を疑うわけではないが、出所の確認はしておきたい。


「……」


 俺の問いに、ローラは気まずげに視線を逸らした。


 ……なるほど。機密に関わることか。

 それでも伝えてくれたのか。それもこんなに急いで。

 数日経ってから伝えれば、機密に触れずに済んだだろうに。


 ローラの気遣いに、張っていた気持ちがわずかに緩む。


 だが、こうしては居られない。

 すぐにでも国に戻らなければ。


「教えてくださり、ありがとうございます。

 私は一度、国に戻ろうと思います」


「やはり戻られますか……」


「……? それはもちろん。

 本店も心配ですし」


 なんだ? 何が言いたい?

 視線を泳がせるローラに、嫌な予感が胸をよぎる。


「どうされたんですか?」


 焦る気持ちを抑えて、努めて優しい声色を意識した。


「その……山肌が崩れて道が塞がれていると」


「――っ!

 その情報の出所も……」


「……申し訳ありません」


「いえ、情報感謝します。

 もし、また何か掴まれましたら、お知らせいただけると助かります」


 ローラは終始申し訳なさそうな顔をしつつ、こちらを気遣いながら帰っていった。



「――おい」


「はっ!」


 周囲を見回し呼びかけると、護衛の者が姿を現す。


「帝国の被害と山道の状況を確認しろ」


「はっ!」


 とにかく、いつでも戻れる準備をしておくか。



 数日後――


 命懸けで山を越えた伝令と、伝書鳩による報告が届いた。


 俺の元にもたらされた情報は、想定よりも遥かに悪かった。


 被害は甚大。

 とくに帝都の被害が大きく、石造りの建物が密集していた区画ほど被害は深刻。

 古い建物や貧民街では倒壊が相次ぎ、死者数すら把握し切れていないらしい。


 井戸の崩落や水路の損壊によって、すでに飲み水まで不足しているという。


 さらに最悪なのは、地震による崖崩れで主要街道が寸断されたことだ。

 帝都へ向かう物資輸送は大きく遅れ、救援も思うように進んでいないらしい。


 なんとか帝国へ戻れないかと尋ねたが、山中では道が塞がれているだけでなく、倒壊した炭焼き小屋から山火事まで発生しているらしく、「とてもお連れできる状況ではありません」と止められてしまった。


 父上をはじめ、家族の無事が確認できたことには安堵した。

 だが、国が危機に瀕しているというのに、自分だけ安全な場所に留まっているなど許されない。


 少しでもカーハインドで物資を集め、危険を承知で山を越えてでも戻らなければ。


 父上と直接やり取りできれば、不足している物資も把握できるのだが……。


 とはいえ、水や食料は俺が多少持って行ったところで、不足は解消されないだろう。


 ならばせめて、ポーションを持てるだけ持って山を越えるか。


 ……だが、カーハインドが側にどれだけポーションの備蓄があるのかわからない。

 それにこちらに譲ってくれるかも未知数だ。


 辺境ならば、聖王国からポーションを輸入するのも楽ではないだろうからな。


 一先ず領主の許可がいる案件だ。

 領主邸に人を向かわせ、早急に面会の約束を取り付けなければ。



 それにしても――。


 ローラからもたらされた情報は、一つとして誤りがなかった。

 まるで実際に帝都を見てきたかのような報告だったことに、静かな戦慄を覚える。


 あれほど正確な情報を、どうやってこの短期間で掴んだというのだ。


 ――それを追求する時間も権利も、俺にはないが。


 この地には、まだまだ秘密が隠されているようだ。


 またここへ戻れるのか。

 それがいつになるのかも分からない。


 だからだろうか。

 出立の前に、最後にもう一度だけ彼女の顔が見たいと思った。



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