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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 side:レオン


 やっとカーハインドへ来ることができた。

 まさか商会の支店にここまで許可がおりないとは……。


 父上には俺が怪しまれ過ぎたからだと叱られ、結局手を煩わせることになった。

「お前は昔から目立ち過ぎる」と、呆れたように笑っていたが、隣の宰相は露骨に嫌そうな顔をしていたな。


 早く見習いを卒業したいのだがな……

 思わず苦笑いが出た。


 だが、どこに疑われる要素があったのか、今でもわからない。

 ただすでに疑われているのなら、下手に取り繕う必要もないかと気が楽になった部分もある。


 支店開設のための挨拶回りで街を歩きながら、俺はつい周囲へ視線を巡らせていた。

 ――もしかしたら、彼女がいるんじゃないかと。


 こんなに人に興味を持ったのは初めてかもしれない。


 革新的な教育に、孤児院へ仕事を与えて自立を支えようとする発想。

 俺よりも若いだろうに、あそこまで動ける者がどれほどいるだろうか。


 それにあの真っ直ぐな菫色の瞳が忘れられない。


 さすがに会えないか、と苦笑いを浮かべながら店へ戻った俺は、店内にいた人物を見て思わず足を止めた。


 ――ローラだ。


 今日も簡素な服を身に纏い、宝飾品だって最低限。

 それでも、いや――だからこそだろうか。

 彼女は不思議と人の目を惹きつける。


 彼女との軽口の応酬が楽しくて、つい調子に乗ってしまった。

 ますます怪しい男を見るような目を向けられたが、そんな反応さえ新鮮で心地いい。


 ――だめだな。


 怪しまれているはずなのに、嫌われていないと思ってしまう辺り、相当浮かれている。


 本当に嫌われているなら、きっと目も合わせないだろう。

 ――なんて都合のいい解釈か?


 会うたびに、もっと彼女を知りたくなる。


 だが俺は、この地の視察に来たのだ。

 領地の実情を、自分の目で見なければならない。


 ……けれど、彼女を知ることは、この領地を知ることにも繋がるんじゃないか?


 実際、この地の民は誰も彼も彼女の話ばかりしていた。

 孤児院、酒、新しい教育、街の変化――どこへ行っても、彼女の名が出る。


 ならば彼女を知ることは、カーハインドを知ることと同じはずだ。


 ――決して、私情ではない。


 ◇


 あの日以来、領内でレオン様を見掛けることが増えました。


 どうやら"市場調査"だと名目をつけて、領地を視察して回っているようです。


 そうなると、領民にお披露目済みの魔道具や、カーハインドの技術をふんだんに使った学校など、どうしても目に入るものが出てしまいます。


 レオン様から、魔道具やガラス窓を帝国の本店で取り扱いたいという要望が出るのも、自然なことでしょう。


 我が領は独立のため、他国とのつながりや交易の拡大が必須です。

 領内での発明品も、領民に広く公開しているものは、交易品としての取り扱いも始めようと、先日の領内会議で決まったところでした。


 ここで帝国でも大手のマケイド商会との販路を広げられるならば、悪い話ではありません。



 ――レオン様から、学校の見学をしたいとの申し出が届いたのは、その数日後のことでした。


 実は昨日、オリビア様から、

「学校の前で、やたらと見目の良い怪しい男に声を掛けられ、根掘り葉掘り質問された」

 と報告を受けていたので、もしかしてとは思っていましたが。


「公開区画の見学申請、ですか……」


 ガラス窓や魔道具だけなら、商人として関心を示すのも理解できます。

 ですが、教育制度にまで踏み込んでくるとなると話は別です。


 しかも、わざわざ学校周辺で生徒へ話を聞いて回っていたとなれば、なおさらでしょう。


 ……やはり、ただの商人だとは思えません。


 以前ハイリお兄様とも話しましたが、帝国側の監督役、あるいは視察役として送り込まれている可能性は十分あります。


「お断りいたしますか?」


 アンヌ様の遣いとして報告に来た教育局の者が、静かに問い掛けてきます。


 私は視線を落としたまま、しばし考え込みました。


 学校は、カーハインドでも特に力を入れている事業の一つです。

 読み書きや計算だけでなく、領地運営に必要な知識や技術まで教えていますから、当然ながら秘匿したい部分もあります。


 ですが――。


「……公開している範囲のみでしたら、問題ありません」


 それに。


「完全に閉ざせば、かえって警戒されるでしょう」


「では許可を?」


「ええ。ただし案内は私が行きます」


 報告に来た者の眉がぴくりと動きます。


「姫様自ら?」


「相手は、あの怪しい見習いさん……いえ、今は支店長さんですからね」


 にこりと笑って返せば、何とも言えない顔をされました。


「こちらも、直接お話を伺っておきたいのです」


 ……だって仕方がありません。


 彼は知識も視点も鋭すぎますし、こちらの技術への興味も強い。

 一体どこまで把握しているのか、正直読めないのです。


 ならば、こちらも直接探るしかないでしょう。



 そうして迎えた見学当日。


 学校の前へ到着した私は、すでに待っていた人物を見て小さく目を瞬かせました。


「……本当にいらっしゃったのですね」


「? 申請したのは俺ですが」


 当然のように返され、思わずじっとその顔を見つめてしまいます。


 ……いえ、申請した以上来るのでしょう。

 ですがまさか、時間前から待っているほど熱心だとは驚きました。


「まさか姫様自ら案内してくださるとは思いませんでした」


 そう言って柔らかく笑うレオン様に、なぜか少しだけ調子を狂わされるのでした。



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