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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 雑穀の供給は順調に進んでいるようです。


 一部には、政治的な影響力を警戒して申し出を突っぱねた領地もあったようですが、飢えを前に受け入れを選ぶ地の方が多かったとか。


 それに伴い、他領からの孤児たちが続々と到着しています。


 領地に食料が回ったとしても、孤児たちの元へ届くのはきっと最後でしょう。

 間に合わない子供たちも、大勢いるはずです。


 だから私は、領主の娘の酔狂ということにして、他領の孤児を集めてもらいました。


 せめて子供たちだけでも、直接掬い上げたかったから――。


 私が矢面に立つことに、お父様はあまり良い顔をされませんでした。


 ですが、これが一番波風を立てずに子供たちを救える方法だと思ったのです。

 ですから今回だけは、少しわがままを通させていただきました。


 ただ、どのような名目で集められたのか……

 孤児たちの警戒心が想像以上に強く、こちらを怯えるような目で見る子や射殺すような視線を送ってくる子もいて――

 私は、自分の考えの甘さを痛感しました。


 権力を持つ私がそばにいては、子供たちを余計に怯えさせてしまうでしょう。

 そのため、孤児たちが落ち着くまでは孤児院長やルーカスに任せ、私は距離を置くことになりました。


 ……自分で呼び寄せておきながら、この有様です。

 情けなさに、思わず泣きたくなってしまいました。


 ◇


 side:集められた孤児の一人


 いつものように食い物を探して、妹の待つねぐらへ戻る途中。

 路地の先で、大人たちが孤児を捕まえて回っているのが見えた。


 ――孤児狩りか!?


 見つからないよう隠れなければと身を引いた、その瞬間。


 捕まった奴の中に、妹の姿を見つけた。


 気が付けば足が勝手に前へ出ていて、俺は妹と一緒に捕まっていた。


 集められた俺たちは、清潔な服を着た男たちへ引き渡され、そのまま荷車へ乗せられた。


 食い物を与えられたこと。

 そして森の中へ入ってしまい、妹を連れて逃げ出すのが難しくなったこともあって、俺は、ひとまずおとなしく到着を待つことにした。


 途中で逃げ出したやつもいたが、男たちは特に追いかけようとはしなかった。


 だから俺は、どこかへ着いてからでも逃げ出す機会はあるだろうと思っていたんだ。


 到着したのは、清潔な服を着た奴ばかりがいる場所だった。

 いつも漂っている腐った臭いはなく、代わりに食い物のいい匂いがする。


 大勢の大人の中でも、とびきり綺麗な服を着た、とびきり綺麗な女が、俺たちを呼び寄せたのだという。


 一体、何のために……。


 偉い奴らは、俺たち孤児のことなんて、その辺の虫と同じようにしか思っていない。


 何があっても、妹だけは絶対に守る。

 たとえ俺が殺されることになってもだ。


 そう思って睨みつけていると、女は困ったように眉を下げた。


 その顔に、ほんの少しだけ胸がちくりと痛む。


 ……でも、騙されるわけにはいかない。



 大きな教会みたいな建物へ連れて行かれると、庭の方から子供たちの声が聞こえてきた。


 ここは孤児院らしい。

 俺の領地にあったものとは、ずいぶん違う。


 笑い声まで混じっていることに目を丸くしていると、俺たちも今日からここで暮らすのだと言われ、言葉を失った。


 水浴びをさせられ、清潔な服に着替えさせられると、白い服に眼鏡をかけた、へらへら笑う気弱そうな男がやって来た。


 そいつは俺たちの服をまくり、何かを押し当て、腹を押し、腕を握っては「うーん」と首を傾げている。


 何をしているのかと思っていたら、俺たちの中でも一際小さくて細くて弱そうな奴が、何人かどこかへ連れて行かれた。


 ――ああ、あいつらは不合格だったんだな。

 働けそうにねえもんな。


 一先ず妹と共に残れたことに安堵していると、温かい粥が配られた。

 なんだ? と思って見ていたら食っていいと言われたから、とにかく食った。

 あったかい飯なんて食ったことがなかった。

 胃のあたりが締め付けられて、涙が出そうになったけど、頭を振って耐えた。


 きっと今から酷いことをされるんだ。

 妹を守らないと。


 ――そう思っていたのに、何日経っても何もされない。

 それどころか、毎日三回も飯を食わしてもらえて、庭で遊び、字の読み方を教わる。夜はちゃんとした布団で眠れる。


 ここから出ることだけは禁じられていたけど、不便は感じなかった。


 そうこうしていると、最初にどこかへ連れて行かれた奴らが、一人また一人と戻ってきた。


 聞けば"病院"ってとこで薬を貰ってたらしい。

 思えば顔色も良くなったし、体つきもしっかりしている。


 不合格だったわけじゃなかったんだ。



 腹一杯食える日々にも、少しずつ慣れてきた頃。

 あのときの綺麗な女が、また孤児院へやって来た。


 ――いよいよ始まるのか。


 そう思った。


 ……でも、この場所で毎日、人間らしい暮らしをさせてもらった。

 妹も、見違えるほど元気になった。


 だから俺は、どんなことをされても耐えようと思った。


 ただ一つ。

 ――妹だけは、ここに残してやってほしい。


 それだけは何としても頼まなければ。

 そう思いながら女の話を聞いた俺は、耳を疑った。


「皆さん、こんにちは。

 私はローラと言います。

 ここでの生活には慣れましたか?」


 綺麗な服を着た女は、俺たちの前でそっと膝を折った。


「私は皆さんに、元気になってほしくて、この領へ来てもらいました。

 たくさん食べて、たくさん遊んで、たくさん学んで――笑って過ごしてほしいのです」


 何を言ってるんだ、こいつ。


 俺たちは顔を見合わせた。


「そして、いつか“なりたい自分”を見つけたら、ぜひ教えてください」


 女はそれだけ言うと、小さく笑って帰って行った。


 ……意味がわからなかった。


 けれど。


 あの言葉だけは、なぜかずっと頭から離れなかった。


 “なりたい自分”なんて、実の親にさえ必要とされなかった、俺みたいな奴が持っていいのか。



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