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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 孤児院の庭で子供たちと商売遊びをしていると、眉を下げた院長がやって来ました。


「姫様、ハイド商会とお取引のある帝国の商会の方が、ご挨拶をしたいと……」


 帝国の商会?


 そういえば、熟成酒を受け取りに来訪されているのでしたね。


 ハイリお兄様が、「帝国の皇帝は動きが早い」と感心していらっしゃいました。


「孤児院に、何か御用があったのですか?」


「それが、領内へ還元したいと寄付をお持ちくださって」


 まあ! なんてできた方でしょう。


 さすがは大国でも上位の商会。心遣いが違いますね。


 これはぜひ、お礼をお伝えしなければ。


「ご挨拶をお受けします。少し身なりを整えたら、応接室へ伺いますね」



 孤児院用の簡素なワンピースから着替え、軽く髪を整える。


 とはいえ、相手は商会の方ですし、あまり気負わせてもいけませんよね。


 そんなことを考えながら応接室へ足を踏み入れると、そこにはやり手の商人らしい貫禄を漂わせた男性と、えらく顔の整った黒髪の青年が立っていました。


(ハイリお兄様に負けないくらい知的な美形ですね)


 思わず感心する。


 ですが、その視線には妙な鋭さがありました。


 笑みを浮かべているのに、目だけは笑っていない。


 ……商人というより、獲物を観察する猛獣のようです。


 ◇


 side:レオン


「姫様をお連れしました」


 扉が開き、俺は思わず息を呑んだ。


 ――簡素ながらも仕立ての良いワンピースを纏った少女は、遠目で見るより遥かに美しかった。


 陽光を溶かしたような淡い金髪。角度によっては、そこへ桜色が薄く差して見える。


 そして澄んだ菫色の瞳。

 何より、人を警戒させぬ柔らかな微笑み。


 これが、あの孤児たちへ商売を教えていた娘だというのか。


「カーハインド領主カロルドの娘、ローラ=カーハインドと申します。

 孤児院へ寄付を頂いたそうで……ありがとう存じます」


 品のある落ち着いた声に洗練された所作。

 ――思わず見惚れそうになり、慌てて意識を引き戻した。



 お茶が用意され、和やかに場が進む。


「あら、その瓶は……」


「先ほど院長殿からいただきました。

 何やら大変希少なお酒だそうで……」


 マケイド殿の側に置かれている瓶を見て、カーハインド嬢が声を上げた。


「ええ、数が少なくて交易には出せないのですけれど……そうだわ、あれがあったかしら」


 何やら後ろの侍女にことづけると、侍女は部屋を出て行った。


「 そういえば、このお酒は孤児院で作られているとか」


 俺が話を切り出す。


「ええ。お酒は品質管理が難しいものですから、軌道に乗るまでは苦労しましたけれど……今では孤児院の名物なんですよ」


 過去を思い返しているのか、カーハインド嬢はどこか遠くを見るような目をしながら、それでも楽しげに語った。


「……なぜ、孤児院で作ろうと?」


 問いかけると、彼女は少しだけ考えるように目を伏せる。


「……そうですね。もちろん寄付はありがたいものです。ですが、孤児院を施しがなければ立ち行かない場所にはしたくなかったのです」


 彼女は一度言葉を切ると、庭で遊ぶ子供たちへ視線を向けた。


「善意だけでは、子供たちの明日を保証できませんから」


 その横顔は穏やかだったが、声には不思議な強さがあった。


「それに子供たちには、“助けられる側”としてではなく、自分で生きていける力を身につけてほしいのです。

 なにより、自分たちを“誰かの慈悲がなければ生きられない存在”だと思ってほしくなかった」


 そう語るカーハインド嬢の瞳は真剣だった。


 ただの理想論ではない。

 施しに頼ることの危うさを、理解している者の言葉だ。

 そう感じた。


「……随分と現実的なのですね」


 気づけば、そんな言葉が口をついていた。


 すると彼女は少し困ったように笑う。


「綺麗事だけでは、お腹は膨れませんから」


 部屋の空気が少ししんみりしたところで、先ほど席を外していた侍女が、何やら箱を抱えて戻ってきた。


「こちら、お荷物になるかもしれませんが、よろしければ」


 そう言ってカーハインド嬢が差し出したのは、細長い木箱だった。


「開けても?」


「もちろんです」


 穏やかな笑みを向けられ、思わず視線を逸らす。


 箱の中には、先ほど院長から渡された果実酒によく似た瓶が、五本並べられていた。


 どれも先ほどのものより一回り小ぶりで、瓶の中には色とりどりの酒が揺れている。


 蜜柑を思わせる橙色。熟れた果実のような深紅。宝石めいた紫。さらに、蜂蜜を溶かしたような琥珀色に、若葉を思わせる淡い緑。


 まるで硝子瓶へ季節を閉じ込めたようだった。


「……美しいですね」


「ありがとうございます。

 現在我が領内で販売している果実酒の詰め合わせです。

 色々な果実酒を少しずつ楽しめて、目にも楽しいと人気があるんですよ」


 確かに見ているだけでも心が弾む。


「特に女性への贈り物として人気だそうですから、奥方やご家族、大切な方と一緒にお楽しみいただければ嬉しく思います」


 にっこり微笑みながらそう言う彼女の何気ない一言に、なぜか、少しだけ返事が遅れた。



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