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とにかく、土魔石だけでも短時間で作れるようになったのは朗報です。
土魔石はインフラ整備や建築に欠かせない資材ですからね。
しかも品質まで向上したとなれば、これまで出力不足で実現できなかった魔道具も製作可能になるかもしれません。
カーハインド領は海が近いこともあり河川の氾濫や水害が起きやすい地です。
――そもそも商人であった初代様がこの地を与えられたのも、王都から遠いうえ災害が多く、発展が見込めない捨て地だったからだと言われています。
魔道具が発明される以前は、インフラ整備も人海戦術に頼るしかありませんでした。
そのため、堤防を築いたり遊水地を整備したりしながら地道に水害対策を進めていたのですが、今後土魔石が潤沢に使えるのならば、もっと大掛かりな整備ができるかもしれません。
ーー
「――河床掘削機?」
「はい、作れますか?」
「待ってください。それがなにかもわかりません。言うだけで舌を噛みそうです」
今私は、新しい魔道具を作ってもらうために、魔道具研究室にて室長のリサさんとお会いしています。
河床掘削機は川底に溜まった土砂を取り除き、水が溢れにくくするための物ですが、確かに言いにくいし覚えにくいですね。
「そうですね……川堀り機、いえ"川さらい機"と言いましょうか。
川に溜まった泥を掘り起こし、大雨でも水が溢れにくくするための魔道具です」
今までは雨が少なく水深の浅い時期に、領民の皆が総出で泥の掻き出しをしてくれていましたが、とても大変な作業ですし、危険もありましたからね。
「へぇ、そんな魔道具があれば船の座礁も減りますね」
「その通りです。水害防止に加えて、夏場でも十分な水深を維持できれば、水運の安定にも繋がります。
今までは魔石の出力不足で実用化が難しかったのですが――」
「あ! 魔石研究所が新しい魔石を見つけたんですよね」
新しい魔石というか、正確には魔石の充填率を高めたことで出力や持続力が伸びたのですが、まあ細かいことはいいですか。
「でもそれなら川をもっと真っ直ぐにする魔道具も作った方がいいのでは? そのほうが船も進みやすいでしょう?」
「いずれそのような魔道具も欲しいのですが、川の流れというのは複雑で……変えると方々に影響を与えますからね」
確かに、船の運航だけを考えるのであれば、川を直線化した方が都合は良いでしょう。
しかし、下流域の洪水対策や生態系への影響など、様々な事情を考慮する必要があります。
「ほへぇ〜色々と考えることがあるんですねえ」
リサさんは大きな眼鏡を持ち上げながらコクコク頷いています。
「まあ作ってみます!
早速、魔石研究室に土魔石もらいに行かなきゃ――」
「――ちょっと待ってください! それともう一つ」
おさげをパタパタさせながら駆け出していこうとするリサさんを慌てて引き止めます。リサさんは優秀な研究者ですが、まだ若いからか慌てん坊なところがあるんですよね……。
「これから領民に順次魔道具を開放して行きます。
まずは農作業に使えるクワや鋤から。最初期に作った、単純にパワーが上がるタイプのあれです」
「あぁあれですか。もっと自動化したものもありますけど?」
「あまり急激に変化させると戸惑う人も多いでしょうから。"少し生活が楽になったな"という程度から始めたいのですよ」
「まあ急に"今日から畑は耕さなくていいよ"なんて言われても困りますもんね」
「ただまとまった数が必要になりますから――」
「うげぇ〜! そっか、そうですよね。
畑を自動で耕す魔道具より、簡易魔道具作成機を作らないと魔道具研究所が死んじゃう!!」
リサさんは大慌てで駆けて行きました……。魔石研究室にでも行ったのでしょうかね。
さあ私は領民への魔道具の周知方法や、普及させたあとの使用済み魔石の回収方法についても考えなければ。
領外への持ち出しに関してや、交易品にするか否かも迷うところですね。
皆に相談してみましょう。




