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気になっていた時間加速装置を使った実験の経過報告が届きました。
そもそも時間加速装置はお酒の熟成に使うための物だったので、大樽にサイズが合わせてあり、さらに装置の周囲には温度や湿度を一定にする環境維持装置や空気循環装置などを連結させて使っていました。
これは時間加速装置の中を常にお酒の熟成に最適な環境に維持し続けるためです。
ですが魔石や月光草にはどのような環境が必要なのかわかりません。
そこで一先ず使いやすいサイズに小型化した上、最低条件を知るため周辺機器を全て取り払ったシンプルな装置で実験を始めたそうです。
現在カーハインドで充填条件がわかっている魔石は五つ。
・土魔石 地中に埋める
・水魔石 水瓶に入れる
・光魔石 太陽光や月光を当てる
・火魔石 暖炉のそばに置く
・風魔石 高い場所で風にさらす
まず小樽に土を詰めてその中に魔石を埋め込んで装置にかけたところ、およそ一日で土魔石が出来上がりました。実験成功ですね。
しかし次に小樽に水と魔石を入れた物を装置にかけると、水が腐敗して魔石も淀んでしまいました。
そして光魔石は、同じ時間装置にかけても出来不出来の差が激しく、品質が安定しません。
さらに火魔石は装置に火がうつる危険があり実験ができず、風魔石は装置の設置場所が高所でない上、内部に風が吹いていないため条件が揃わず実験できなかったそうです。
今はこれらの実験結果を踏まえ、周辺環境を整えたり代替条件を調べたりしながら実験を続けているとのこと。
――ただ面白いこともわかりました。
実験に成功した土魔石を充填後そのまま装置に入れ続けた結果、魔石の色彩が鮮やかになり、さらに宝石のように透き通ったのです。
現在この国で出回っている魔石の多くは、内包する属性ごとの淡い色を宿した半透明の結晶で、内部にほのかな光が浮かんだものです。
私たちはそれが魔石の正しい姿だと思い、その状態になれば充填が完了したものと考えていました。
しかし今回の実験でできた、宝石のように透き通った色濃い魔石の使用実験をしてみると、徐々に輝きと色彩が薄れ結晶が曇り、いつもの魔石の姿に変化したのです。
――つまり今まで充填が完了したと考えていた魔石は実はまだ充填の途中だったのでは?
そしてきっと自然界で採掘される魔石も、もっと長い期間そのまま置いておけば透き通った魔石になったのでは?
この仮説が正しいとすると、私たちが採掘していたのは新しい魔石ではなく、かつて使い尽くされた魔石が、長い年月を経て再結晶化したものである可能性が出てきます。
魔石は使い切ると光を失った曇天色の鉱石に変化してしまうため、使い道がないと廃棄されていましたが、もしかすると捨てずに保管しておけば元々再利用できたのかもしれませんね。
まあ今まで誰も発見しなかったところを見れば、魔石研究室が見つけてくれた効率的な充填方法がなければ、再充填にはかなり長い年月が必要なのだと思いますが。
ですがこれが事実ならば、今まで長い間使い捨てにされていた魔石が枯渇しなかった理由にも納得がいきます。
次に月光草ですが、月光草は月の光が当たりやすい遮蔽物のない場所に設置された装置を使って、実験が行われました。
一時間おきに装置から取り出し様子を記録したところ、六時間経った物の毒素が完全に消えていることがわかりました。
そして毒素が消えた月光草を更に一時間装置に入れるとしっかり乾燥された状態になり、これなら乾燥の手間も省けると喜んだのも束の間、その後の成分調査で薬効まで消えていることが判明したのです。
これでは意味がありません。
そこで今度は装置を使わず、アンヌ様にお願いをして浄化をかけていただいた月光草を、太陽光が当たらない場所で保管し経過を観察したところ、浄化からおよそ半日が過ぎた頃に急激に乾燥し始め、そこから一時間もしないうちに薬効が抜け出すことが判明しました。
どうやら月光草は、毒素が抜ける→半日太陽光に当たらない→急激に乾燥する→薬効が抜ける、という性質を持つようです。
ですから月光草をポーションに使うのならば、乾燥から一時間以内に何かしらの処置を施す必要があるということですね。
ただアルフお兄様が心配していた、"乾燥後に毒素が戻る"ということがなかったことには安心しました。
月光草は乾燥後、毒素が戻ることよりも、薬効が抜けることに気を違う必要があるということですね。
今は時間加速装置に入れた月光草の様子をもっとこまめにチェックし、取り出すベストタイミングを探している最中だそうです。
時間加速装置は便利ですが時間の進みが早い分、繊細なタイミングを測るのには難しいですからね。




