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王都に残った情報局の者から、先ほど行われた院政会議の報告が通信機で届きました。
レーザー盗聴器で会議の内容を一から十まで聞いていたようで、かなり詳細な内容を伝えてくれました。
それにしても宰相がまだ私たちを諦めていなかったとは……。
あそこまでコケにしておいて、よくもまあそんな考えができるものです。地方を見くびり過ぎでしょう。いえ、王都の権威を過信しているのでしょうか。
ただ周りの理解は得られなかったようですね。
さらに政敵からの攻撃で、騎士団の指揮権まで奪われたとか。
これで少しは大人しくなるでしょう。
マリウス王子の婚約の件は面倒なことになっているようですが、王子の気持ちなどこちらには関係のないこと。
ただ闇ギルドの件は、動向を注視する必要があります。
恐怖に駆られてこちらに攻撃を仕掛けようとする者や、こちらの戦力を当てにして他国を侵略しようとする者を出さない為にも、関与を匂わせても確証は与えないように気を付けなければなりません。
もうしばらくは、領内でも爆薬の使用は最低限に留め、領民の目にも付かないように気を配らなければなりませんね。
そろそろトンネルの掘削などのインフラ整備にも利用したかったのですが、残念ながらお預けです。
一先ず箝口令を敷いた騎士団の、訓練のみでの使用に留めましょう。
爆薬のことはさておき、収穫した果物でお酒の仕込みを始めなければ。こちらは続々と収穫物が届いていますから、あまり時間をかけてはいられませんからね。
ルーカスをはじめ農務局の者を呼んで作り方を説明しながら、一気に仕込んでしまいましょう。
アルフお兄様にお願いしている時間加速装置は、まだ完成しないでしょう。ですが、果実酒なら熟成期間が短いため、装置がなくとも作れます。
それに、ブランデーも仕込みだけ先に済ませておけば、装置完成後すぐに熟成へ回せますから。
それから蒸留酒増産のために新たな蒸留所を作る場所を決めて――これは土木局長のマルクお兄様に相談ですね。
そうそう、お酒を入れる瓶にもこだわりたいですね!
今までは木の小樽での販売でしたが、これから作る熟成酒は高級ラインとして販売予定ですから、硝子のお洒落な瓶に入れましょう。
品質保持にもなりますし、ガラス製品の良い宣伝にもなります。
その分製造機コストや輸送コストは上がりますが、領内で採れた果実や穀物で作る以上、どう頑張っても製造数は頭打ちになります。
例え他国から原材料を輸入したとしても、製造できる人手が限られている以上は同じこと。
後々のことを考えると付加価値をつけ、て一本あたりの単価を上げる方が良いでしょう。
忙しくなってきましたが、こんな忙しさなら大歓迎です。
◇
今日は先日、お酒作りの際に一緒に作ったドライフルーツができたので、家族や領主邸の皆、研究所におすそ分けに来ました。
本当は領内の皆に配りたいのですが、さすがにそこまでの数はありませんからね。
一先ず果樹園の皆にだけでも人をやって、持って行ってもらいましょう。
「執務の間につまめるし手も汚れなくていいね」
「いいなこれ、騎士団の携帯食にできねえ?」
「研究してると甘いものが欲しくなるから、日持ちもしそうだし常に置いといてほしいな」
三人のお兄様方の評判も上々ですね。
カーハインド領は独立の為、自給自足を目指していますが、実は砂糖の生産量はそこまで多くありません。
甜菜の作付けは成功していますし温室ではサトウキビも育てていますが、領内全てをカバーできる程ではなく、砂糖は輸入に頼っているのが現状です。
これは我が領が海に面していることから塩の生産が容易で、塩の輸出を行い砂糖を輸入することで、貿易上の釣り合いを取っているからです。
その為どうしても安価な塩に比べて砂糖の価格は高くなりがちで、残念ながら甘味を日常的に口に出来る者はまだ多くありません。
ですから領内でできた果物でドライフルーツを作り安価で売ることで、領民が気軽に甘味を口に出来る機会を増やしたかったのです。
それにドライフルーツならば季節を問わず販売できますから、冬に不足しがちな栄養素を補えるのではとも考えました。
領内での販売はもちろんですが、マルクお兄様がおっしゃったように、騎士団の携帯食にも良いかもしれませんね。
果樹園の皆が諦めなかったからこそ、果実酒やドライフルーツなど新しい商品ができました。
努力した者が正しく報われる領地にしていく為にも、大々的に褒美を与える機会を設けたいですね。




