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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 side:宰相


 なんとかマリウス王子の始末をつけたあと、日も暮れた中、カーハインドを引き止める為にわざわざ宿に人を遣わせた。

 ところが兄妹揃って、もう宿を引き払ったと言うではないか。


 慌てて領境にも人を向かわせたが、翌朝帰ってきた報告は「既に王都を出ていた」というもの。

 あまりの動きの速さに唖然としたわ。


 それでも諦めきれず、院政家の者にカーハインドを呼び戻すための根回しを始めたが、皆反応が芳しくない。

 それどころか、茶会で失態を演じた私に巻き込まれることを恐れてか、距離を取ろうとする者も少なくなかった。


 ――なんという屈辱。

 それもこれもあの王子が、馬鹿なことをしでかしたせいだ。


 とにかく、今日の定例会議で少しでも失態を挽回して、権威を取り戻さなければ。

 できればカーハインドを呼び戻す道筋もつけたいところだ。


 ◇


 会議に出向くと、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべた男が近づいてきた。


 ちっ、ダグラス家のくたばり損ないか。

 最近は会議に顔を出すこともなく、全て息子に任せておったくせに。私を嘲笑うためにわざわざ出てきたのか。


「ご無沙汰しております、閣下。ご機嫌うるわしゅう。

 何やらご苦労されたようですね」


 憂いのある表情をしつつも、目の笑いが隠せていない。

 まぁ、隠す気もないのだろうが。


「ご無沙汰しております、ダグラス卿。

 いえいえ、苦労など……

 それよりいつもは顔を出さない卿が、いかがな理由でこちらへ? 遂に優秀なご子息に当主の座をお譲りになる決断でもなされ、最後の挨拶ですかな?」


 此奴が当主の座に執着しておるのは有名だ。それについて突っ込まれることを嫌っておるのもな。


 予想通り奴の額に青筋が浮く。

 政もできぬくせにいつまでも立場にしがみついている俗物が。こちらの失態を聞いて喜々としてやってきたのだろうが、お前に馬鹿にされる謂れは無いわ。


「……いえいえ、今日は閣下のご機嫌伺いに来たまで。


 何やら恐ろしい脅威を王都に招き入れたと聞きますゆえ、気落ちしてらっしゃるのではないかと心配しましてな」


 ――脅威?

 なんのことだ?


「まぁそれについては今から始まる会議の場でご説明いただけるのでしょうけれど。

 閣下の答弁に期待しておりますよ」


 言うだけ言って、奴はほくそ笑みながら踵を返し、自席に戻って行った。



「――それでは定刻になりましたので会議を始めます。

 本日はマリウス王子の婚約、及び王都に入り込む脅威について、皆様にご意見をお伺いしたいと思います」


 進行役が会議の開催を宣言した。

 それにしてもまた"脅威"だと? 何かあったのか。

 ここ最近は王子の件で走り回っていたゆえ、王都の動向から目を離していたからな……。

 情報もないまま会議に挑むことになるとは、何たる不覚。


「まずマリウス王子の婚約の件につきましては、サーストン卿から書簡を預かっておりますので、代読いたします」


 サーストンめ、針の筵になるのを恐れて欠席しおったな。

 「喪に服す」と執務から離れておきながら、愛人を連れ込んでおったことが露見したからな。


「マリウス王子のお相手として名前が挙がっているオリビアですが、当家の平民使用人の子供であり、サーストン姓を名乗る資格を持ちません。

 また当該使用人は既に解雇しており、当家とは一切関わりがないことをここに記します」


 ざわっ――

 書状の内容に場が騒めいた。


「ならあの娘はただの平民ということに……」

「サーストン卿は庶子であることも認めぬのか」

「既に切り捨てておるとは……」


 皆がひそひそと耳打ちを始めた。


 サーストンのあまりの対応に眉を顰める者も多いが、私にとっては朗報。

 王家に平民が入ることはできぬ。王子の説得には骨を折るだろうが、これでカーハインドを呼び戻す理由ができた。


「皆様ご静粛に。

 平民を王子の婚約者にすることは出来ません。よって、カーハインドを呼び戻します。

 よろしいですな?」


 私がそう声を上げると、周囲の者から冷ややかな視線が浴びせられた。

 ――なんだ? なぜそんな目をする?


「……宰相閣下は闇ギルドの件をご存知ないのですかな?」


 一人の者が困惑したように問いかけてきた。


「闇ギルド? 壊滅したという報告なら受けておりますが」


「ではそれに、カーハインドが絡んでいるのではないかと言う話は?」


「聞いております。

 しかし彼等は三十に満たない数で往訪しております。ゆえに、杞憂でしょう」


 なんだそんなくだらない心配をしておったのか。

 こちらは王都入りから監視しておったのだから間違いない。


「杞憂でなければ如何するつもりですかな?」


 またダグラスか。どうしても私に当て擦りたいようだな。


「っしかし――」


「お二人ともお待ち下さい。それは本日の議題の一つですので、こちらからまず仔細をご報告いたします」


 私が口を開こうとすると進行役に止められた。


「先日ある若者が、カーハインド家次男の情婦の誘拐を企て、実行に移しました。

 企みは成功したかと思われましたが、なぜかその日の夜会に情婦が現れ、さらに同日深夜、闇ギルドが何者かの襲撃を受け壊滅しました」


 知っておる。確かに最初に聞いた時は私もカーハインドの報復かと思ったが、落ち着いて考えればあの人数ではあり得ぬのだ。


「生き残りと目撃者の情報によると、襲撃者は非常に腕が立ち、さらに見たこともない武器を使用していたとのこと。

 なんでも襲撃者が何かを投げつけると、雷のような轟音が鳴り響き、次の瞬間その場が瓦礫の山に変わったとか」


 瓦礫の山になったとの報告は聞いたが、その原因には調べが及んでいなかった。

 だが雷を発生させる武器? 生唾物だな。


「件の闇ギルドは王都最大手。それを壊滅に追い込む程の脅威が王都に入り込んだのは、確実と思われます」


「新手が入り込んだのはわかるが、それをカーハインドと結びつけるのは安易ではないかね?」


 たまたま時期が重なっただけで大袈裟な。どうせ闇ギルド同士の抗争であろう。


「確かにカーハインドと結びつく証拠はありませんが、時期から考えて全く無関係と考えるのも如何なものかと」


「そうですぞ。カーハインドの次男は散々面目を傷付けられ、二度と王都に関わらぬと宣言までして帰郷したのです。

 それを無理に呼び戻せば怒りを買うのは明白」


「件の事件にカーハインドの関わりがないと証明されるまでは、下手に手を出さぬ方が良いのでは?」


 次々と反対意見が飛びだす。いらぬ心配をして弱腰な奴ばかりだ。


「そもそも今回の件がカーハインドの仕業だとしたら、閣下が王都に脅威を招き入れたのと同義では?

 どう責任を取られるおつもりですかな?」


 ここぞとばかりにダグラスも口を挟みよる。しかも真偽の定かでないことを、さも私の責任のように言いおって。


「閣下がお持ちの騎士団の指揮権。あれは返上なされるべきでは?

 脅威を招き入れた者が指揮を取るのも、可笑しな話ですからなあ」


 ――なっ! 此奴、私から特権を奪うのが目的か!

 しかも賛同者が多い。根回ししておったな!


 うぐぅ……。



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