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私の住むカーハインド領は、この国、ケルファ王国の辺境にある領地です。
四方を山と森と海に囲まれた、良く言えば自然の要塞、悪く言えば陸の孤島と呼べるような場所にあります。
そのため山の幸や海の幸は豊富ですが、残念ながらこの国の主食である麦の生育にはあまり向かない土地が多く、大半を他領からの輸入に頼っていました。
山や森を踏破して運ばれてくる麦はもちろん割高で、他領に生命線を握られていることと併せ危機感のある状況でした。
そこで私はまず、まだ領地にない様々な作物の知識をお父様に伝え探し出してもらい、育て方や調理の仕方を領民に伝えて回りました。
これにより領内で麦以外にもとうもろこしや蕎麦、大麦、米など、主食となり得る食物が作られるようになり、麦の需要を大きく減らすことに成功しました。
また場所に合った作物は、作業にかかる手間を減らし収穫量を増やします。
この事実は領民に大きな衝撃を与え、おかげで二の足を踏んでいた者も、新しい取り組みに積極的に参加してくれるようになりました。
そしてこの改革にはもう一つ大切な狙いがありました。
それは飢饉への備えです。
残念ながらこの国で飢饉はまだ珍しいことではなく、ひとたび天候不順や病気が発生すると、国全体で食料が不足します。
しかし、色々な作物を育てていれば備蓄を増やすことが出来ます。もしものときでも、収穫の全滅は避けられるでしょう。
嬉しい誤算としては、育てる作物が違うことで地域ごとの特色が生まれ、その土地土地で名物となるものが生まれたことです。
これにより村や街単位でしか交流のなかった人々が、地域の枠組みを超えて交流を始め、領内の活性化に繋がりました。
穀物の生産が落ち着いてきたので、今は果樹や野菜などの新しい品種を育て、新たな"領地の名物"を生み出しているところです。
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農業と共に私が改革を急いだのが船です。
この国の船は木で作った船に帆が一つだけといったシンプルな作りのもので、当然耐朽性にも操作性にも問題を抱えていました。
そしてそんな船でも漁師たちは生活の糧を得るべく、果敢に海に出て行くものですから、まさに漁師は命懸け。
荒くれ者も多く、領内の治安が安定しない原因の一つでもありました。
もちろん、そんな危険で荒くれ者に囲まれた船に乗りたがる商人もいません。
ですから、せっかく領地に海があるのに海を交易路の一つとして使うこともできていませんでした。
漁師の命を守るためにも交易の選択肢を増やすためにも、船の改革は急務。
とはいえ日々の生活の為に海に出る漁師を、港に留め置いて何日もかけて船を作り直すなど、漁師の理解が得られるはずもありません。
いくら安全を説いたところで、「飢えて死ぬぐらいなら船と共に沈む」と、改革に反対される方もいらっしゃいました。
そこでとりあえず外板を重ね合わせることで堅牢さを増し、帆の張り方を工夫することで操作性を高める応急処置を行いました。
するとたったこれだけのことで、漁師たちが肌で感じるほど沈む船が減り、釣果が上がりました。
そもそも漁師たちの根底にあったのは、"小娘に船のことなどわかるはずがない"という不信感でした。
当時の私は八歳。当然の感情ですね。
しかし初めに良い変化をもたらしたことで、漁師たちからの信頼を得られ、以降は積極的に協力をしてくれるようになったのです。
また船大工たちも戻る船が増えたことに喜び、「新しい知識や技術で漁師たちを守るんだ」と奮起してくれました。
そのおかげで、今では長期間の航海に耐え得る船を作り上げるほどの腕前になったのです。
現在は船大工たちが新しい船を作り、漁師たちが新しい船の操舵を学び、少しずつ距離を伸ばしながら、新たな交易路を次々と開拓しています。
この他国との貿易が今のカーハインド領の収益の多くを占めており、独立国家を目指す上での生命線とも言えるでしょう。




